剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

文字の大きさ
上 下
1 / 113
第1章 ドラゴンバスター

竜の信仰(for five days)

しおりを挟む
ウイプル王国軍の北の遠征。

帰ってきたよ。

僕はこの遠征で、多くの兵を斬り倒し、そして生き残った。

しかし、この国はまだまだ小さい。

もう少し、領土を広げ、国も民も、もっと豊かにする必要がある。

でも。

それは、どうでもいいか。

15歳になって、戦闘に遅れを取る事も少なくなった。

この日記を書く事も下らないけど、まあいい。

お母様のくれた命だ。

望む様に。


サビィエルの3日
                  サンマータ王城見張り台にて

___________________

国王マイクリーハが、王城の後ろにそびえるザンギント山の洞窟にある竜の祭壇にて、祈りを捧げている。

3年ほど前に、翼竜が死んだ場所だ。

その翼竜の魂がその身に宿り、戦で無敵の力を発揮する様にと訪れるという事だ。

都合の良い捉え方をしている。

ここに連れて来られると、耐え難い苛立ちと吐き気に見舞われる。

だけど、護衛の一人の僕が、この場を離れる事を許してはくれないだろうな。

それに、これは僕にとって、
罰なのだから。


サビィエルの4日
                  竜の祭壇近くの岩場にて

___________________

石造りの家々を抜けると、草原が広がる。

幼馴染のミスルタが、薬草を取りに行きたいという事だったから、一緒に来てはみたけど。

暇だ。

僕は、町の番兵ではないのに。

幼馴染とは、便利なものを見つけたな。

でも、安らぐ時もあるから。

悪くはないのか。

そう。

悪くはないのか。

サビィエルの5日
                  フィルン草原にて

___________________

僕の瞳の色は、緑だ。

皆と違う色と訊くと、何故僕が不機嫌になるのと訊かれるけど、不機嫌になるのが分かっているのなら、訊くなという事だ。

お前は、何故茶色の瞳をしているのか。

ウイプル人だから?

では、違う瞳の色をする者は、ウイプル人じゃないと言いたいのか。

だとしたら、何故僕は、ウイプルの騎士団として戦っている?

ウイプル人ではない、そう言いたいのならば。

それでもいい。

ウイプルなど、滅んでしまえばいい。

滅ぼしてしまおうか。


サビィエルの6日
                  バリエル岩場の家にて

___________________

この大陸には、多様な宗教が栄えているが、ドメイル教を崇拝する国々は、聖戦という名を盾に、無益な戦争を繰り返す。

邪教国さ。

火の粉が降り懸からぬ内に、先手を打つべきだと、国王は思っている様だけど。

この様な小国が、今どうこうできる訳がない。

滅ぼされるだけだ。

この国ウイプルが、信仰しているのは、竜神だ。

明確な名前など、知らないだろう。

竜を信じているのさ。

本当は。

信じていないのさ。

サビィエルの7日
                  バリエル岩場の家にて
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...