103 / 113
第4章 貴方へ愛の言葉を
貴方の見る未来
しおりを挟む
その事に触れられず、気にする素振りさえ、許されない事なんだと思って過ごしていた。
別に、父親がいなくても、何不自由なく育てられた。
お母様には、感謝している。
街中で歩く父親と子供を、冷めた目で見ていた。
血は繋がってはいても、お腹を痛めて産んだ子じゃないんだ、子供など、自分が愛した女が産み落とした、厄介な贈り物としか思っていないんだろうと。
そう、思おうとしていた時もあった。
でも、そうじゃない、何か理由があって、家を離れたのかも知れない。そして今も、お母様を、僕を、まだ愛おしく思って、必死に帰る日を探っているのではないかと、そう希望を持った時も、
あったんだ。
でも、お母様は、いつまでも、ベリオストロフの話をしようともしない。記憶から、跡形もなく消そうとしている、そう努力しているのかと、感じる時もあった。だから、家を出た理由に、希望など何もないんだと、無意識に気づいた。
父親が幼い頃の僕を殺そうとして、収監されたと訊いたのは、そんなに前の話じゃない。今は、昔ほども、期待などしてはいない。
いなくても、何も困る事はなかった。
心の奥底にある欠けた場所には、今の僕が持つ答えをはめていこう。
その場所に、エデシトルの花を思い描く。
死の花。
そう、僕の父親は、遠くの昔に死んだ。
それでいい。
微かな思い出と共に、逝けばいい。
目の前にいるゲーベルドンとの戦いを長引かせてはならない。
僕は、力任せに、足を上げ、力があまり入らない分、自分の体の重さと重力を利用して、狙いが定まらないままだったけど、ゲーベルドンの足を狙ったつもりで、前の方へ足を振り落とした。
外せば、より不利な状況に陥っただろうか。
だけど。
手応えは、あった。
ゲーベルドンの左膝の骨を砕いた。
ゲーベルドンは苦痛に声を上げ、左膝を抑えながら、倒れ込み、床で激痛に顔を歪ませて、悶えていた。
ゲーベルドンは、なぜ、ゴルイルの魔女を拷問して、殺した?
個人的な怨み?
誰かからの依頼か?
ゲーベルドンが床で悶えている時に、心臓部に紫色に輝く光を感じたんだ。
明らかに、体内の胸の中から、光を放っていると、感じた。
これが、ベリオストロフ・グリーンディの手記にあった、破滅の宝石なのだろうか。
ヘイル・サイン騎士隊は、各所に散らばるこの宝石を探している。
隠語が多くて、意味がわからないけど、その破滅の宝石が、何かの手がかりとなり、元凶に辿り着くと思っている様だ。
腐神皇アーデさえも、眼中にはない様な。
別に、父親がいなくても、何不自由なく育てられた。
お母様には、感謝している。
街中で歩く父親と子供を、冷めた目で見ていた。
血は繋がってはいても、お腹を痛めて産んだ子じゃないんだ、子供など、自分が愛した女が産み落とした、厄介な贈り物としか思っていないんだろうと。
そう、思おうとしていた時もあった。
でも、そうじゃない、何か理由があって、家を離れたのかも知れない。そして今も、お母様を、僕を、まだ愛おしく思って、必死に帰る日を探っているのではないかと、そう希望を持った時も、
あったんだ。
でも、お母様は、いつまでも、ベリオストロフの話をしようともしない。記憶から、跡形もなく消そうとしている、そう努力しているのかと、感じる時もあった。だから、家を出た理由に、希望など何もないんだと、無意識に気づいた。
父親が幼い頃の僕を殺そうとして、収監されたと訊いたのは、そんなに前の話じゃない。今は、昔ほども、期待などしてはいない。
いなくても、何も困る事はなかった。
心の奥底にある欠けた場所には、今の僕が持つ答えをはめていこう。
その場所に、エデシトルの花を思い描く。
死の花。
そう、僕の父親は、遠くの昔に死んだ。
それでいい。
微かな思い出と共に、逝けばいい。
目の前にいるゲーベルドンとの戦いを長引かせてはならない。
僕は、力任せに、足を上げ、力があまり入らない分、自分の体の重さと重力を利用して、狙いが定まらないままだったけど、ゲーベルドンの足を狙ったつもりで、前の方へ足を振り落とした。
外せば、より不利な状況に陥っただろうか。
だけど。
手応えは、あった。
ゲーベルドンの左膝の骨を砕いた。
ゲーベルドンは苦痛に声を上げ、左膝を抑えながら、倒れ込み、床で激痛に顔を歪ませて、悶えていた。
ゲーベルドンは、なぜ、ゴルイルの魔女を拷問して、殺した?
個人的な怨み?
誰かからの依頼か?
ゲーベルドンが床で悶えている時に、心臓部に紫色に輝く光を感じたんだ。
明らかに、体内の胸の中から、光を放っていると、感じた。
これが、ベリオストロフ・グリーンディの手記にあった、破滅の宝石なのだろうか。
ヘイル・サイン騎士隊は、各所に散らばるこの宝石を探している。
隠語が多くて、意味がわからないけど、その破滅の宝石が、何かの手がかりとなり、元凶に辿り着くと思っている様だ。
腐神皇アーデさえも、眼中にはない様な。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる