剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第4章 貴方へ愛の言葉を

虚言

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昼に窓の外に見えた海賊船は、このカインハッタ牢獄から5隻。



ベリオストロフ・グリーンディが囚人部屋から消えた時、私は外を確認しなかった。



巨大な木造の物体が軋む音。




恐らく、海賊船はいたんだ。











その海賊船は、









カインハッタ牢獄の囚人を迎えに来ている。











僕に戦いを挑んだ大柄の戦士の姿が、囚人部屋から消えた。









その海賊船に、彼は乗ったのだろうか。









ベリオストロフ・グリーンディは、また同じ囚人部屋に戻っている。






看守は、ベリオストロフ・グリーンディが物音を不必要に立て続けたため、別室の懲罰部屋に入れた様だと言っていたな。









看守長が、懲罰部屋に連れ出した、と。











ベリオストロフ・グリーンディに、懲罰部屋に入れられた様だな、と言ったら。








大した事はない、もう慣れた、と。









何故、物音を立てたりしたんだ、と言ったら、それは生きている証だ、それを阻害するのであれば、抵抗はするものだ、と言った。








僕の耳は、普通の人間の耳より、聴覚が研ぎ澄まされている。










同じ階層での物音なら、なおさらの事。










貴方が、看守の耳に届く様な音を繰り返し行った、その事実はない。











嘘を言っている。













今日、看守長ゲーベルドンの姿は見えない。











いなくても、いいさ。











この前の事だ。












海辺で食料になりそうな海藻など、取っていたわけでもないだろう。











船にでも乗って、波しぶきでも浴び続けたのか。








海水でも浴びたかの様な、臭いだった。










彼はもう間もなく、正体がわかる。











海賊船の一隻の動きに違和感がある。何か、ごまかしながら、この海域に留まろうとしている様な動きだ。













得体の知れない者が現れた時の夜更けに、この島に近づいていた海賊船だ。あの日、月明かりで船体の中央にある帆柱ほばしらの天辺、何かで損傷したのだろう、鉄で修繕をした跡がある箇所に気づいて。それが目印として、僕は覚えている。











その海賊船に乗り込んだのだろうか。










人身売買。










ベリオストロフ・グリーンディの目は、何かの強い意志が働いている。








ただの金儲けのためだけに動く様な男じゃない。









目的は何だ?









率直に訊いても、








答える様な男じゃない。



















囚人部屋001にいる二重人格者。









今日は、陽気な顔をしていたんだ。









口の軽い、アタフだ。









いなくなった囚人は、何処へ連れて行かれたんだ、教えてくれ、と。










言ってみたんだ。










陽気なアタフは、口を開いて、しゃべり出した。










僕は、愕然としたんだ。










アタフの話す言葉は、全く訊いた事もない言葉。









いや、言葉にすら、なっていないに違いない。









誰かが、アタフに何かを施した。









口を開いても、相手にその意味が伝わらない様に。









額に、血で何かを描いて、手で消した様な跡がある。









僕は、魔法などは、全くと言っていいほど、知識がないけど。











その様なものが実在して、それを使って僕をごまかそうとするのなら、止めておいた方がいい。











僕は、追求する。









そして、真実を知る事になる。









その時に、貴方達は、どういう行動に出るか、わかっているんだ。








僕の目をごまかそうとする事は、処刑台に一歩ずつ近づいている事と同じ。








貴方達が、僕の口を塞ごうとした時、









僕は躊躇う事なく、剣を抜いて、











斬るだろう。









ジスマリアの23日
     カインハッタ牢獄内にて
___________


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