剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

文字の大きさ
上 下
97 / 113
第4章 貴方へ愛の言葉を

僕と腐神皇アーデ

しおりを挟む
ベリオストロフ・グリーンディの囚人部屋の壁に描かれた文字。







物の形を表した象形文字が使われている。









僕の記憶が確かなら、あれは何処かの島で使われていたはずだ。








日常では使われず、何か特殊な使い方をしていた気がする。








ベリオストロフ・グリーンディの手記に、ヘイル・サイン騎士隊の活動を示す隠語がある。




彼の元に訪ねてきた者達に、何か指示をしていたのだろうか。




手記の中の言葉は、明らかにベリオストロフ・グリーンディが主導で物事を動かしている様に感じるんだ。






予言、破滅、抑止。








手記の中で、僕が目を引いた文があった。







滅びを示す赤子の誕生、《滅び》を絶てずとも、残された1つの希望、神より選ばれし赤子の示す救世主の聖矢を、滅びを示す赤子に放て、と。








神より選ばれし赤子の示す。










その言葉を見て、いい印象がなかった。











ブルーシーズが復讐に燃え、僕さえ、駒として動かそうとしていた時。









ドメイル教信仰国デンパルネードの司教ダマズルが死に、デンパルネードから脱出した時、僕は道もわからず進み続け、僕は険しい山岳地帯を背にした白い教会に辿り着いた。










その教会の中に入ると、1人のバドァという聖職者がいて。











そのバドァから話を訊いた。













神より選ばれし赤子。













その神より選ばれし赤子が指差したのは。











光の救世主。











その名は。













アーデ。














あの腐神皇アーデだ。














ドメイル教徒どもが、聖戦という名の殺戮を行う目的でもある、腐神皇アーデの復活。















滅びを示す赤子は、誰の事だ。












それがもし、













僕の事なら。













神より選ばれし赤子が救世主を選択したのは、10年前と言っていた。








僕が死ななかったから、次は、あの邪神アーデが僕を?













でも、僕は、そこまで圧倒的な存在じゃない。












あの教会にいたバドァは、神より選ばれし赤子が光の救世主アーデを選択したという、その証拠が、教会の向こう側にあると。





とても険しい山岳地帯の中に、あるんだ。






ドメイル教よりも前の教えでは、アーデは、光の救世主だと言っていたけど。













僕が再び、邪教国デンパルネード領に入り、あの白い教会、そしてその向こう側の山岳地帯に入る事は、現実的じゃない。












ドメイル教国本山の聖オルディール王国と隣り合わせでもあるデンパルネードに単独で入る理由に、国王を納得させるだけのものがない。










ブルーシーズと共にいた僕じゃないんだ。












確証もないのに。













できない、か。












だからといって、ウイプル王国軍が入っていくのは、もっと現実的じゃない。











同盟国だけではなく、邪教国以外の国という国全てが旗を上げ、邪教国を一斉攻撃をするくらいの準備が整っていなければ、軍を動かしてあの場所まで辿り着けはしない。







邪教国本山の聖オルディール王国が動いてしまえば、それがウイプルではなくても、例えば、南にいる大国のカーディア帝国でさえ、滅びてしまうだろう。








僕が自在に竜となる事ができれば、ドメイル教の秘密とも言える険しい山岳地帯に、姿を気にせず、うまく入り込む事もできるかも知れないけど。















また、人間に戻れるだろうか。








ジスマリアの22日
     カインハッタ牢獄内にて
___________



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...