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第4章 貴方へ愛の言葉を
手記の中で
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夜更け、鉄の戸が開く音に気づいたんだ。
囚人部屋のある方向から。
僕は剣を取り、自分の部屋の戸の鍵をゆっくりと開け、足音を抑えながら、その音のする方へ急いだ。
海風が窓から舞い込む音で、多少の物音はかき消される。
でも、僕の耳はごまかされない。
看守は椅子に腰かけ、昼間と違い、見回る時間帯は大幅に減る。
ウイプルのカザンデリックにある時計塔の時の鐘が、時を知らせ、その鐘の音を受けた他の街の時計塔が、それに呼応する様に鳴らし始めるけど。
夜中の第3刻が鳴らされる前後に、カインハッタ牢獄の看守は見回り始める。
囚人にも、看守の動きがわかりやすいだろう。
しかし。
他の囚人部屋の者達は、自身以外の囚人部屋の戸が夜更けに開く音に気づかないのか。
どの囚人部屋からも、声はしない。
これが日常に行われている事だからか?
囚人部屋の戸が開かれた、そこから人の足音が響く。
1人。
そう思ったけど、すぐに1人じゃない事に気がついた。
もう1人、いる。
看守が囚人部屋の鍵を開け、看守と囚人部屋の中にいた囚人が、2人で歩く音、だろうか。
足音を抑えて歩いている様だ。僕の耳は、ごまかせないはしない。
鍵を開けた囚人部屋の戸は、閉めていない様だ。連続して音を立て、周囲に気づかれるのを嫌ったのか。
何処へ向かう?
他の看守も、信用はできない。
僕1人で、不審な動きをする2人の足音の方へ向かった。
2人の足音は、途中から、急ぎ足にていく。
小柄な者と、大柄な者の足音。
足音を抑えていても、2人の足音の大きさに差がある。
螺旋階段を降りてはいない。このカインハッタ牢獄の内と外を繋ぐ経路を辿っていない。
それは、僕が他の経路を知らないだけか、それとも牢獄内の別の場所を目指している?
早く追いつけ、と。
足音を抑えながら、その2人の元へ向ったんだ。
それでも。
間に合わなかった。
鉄の戸を開け、閉める音。
2人とも、何処かの部屋へ入った。
そして、内側から鍵を閉める音がした。
もう1人は看守じゃないのなら、囚人だ。囚人が囚人部屋の鍵を持ってはならない。それは、このカインハッタ牢獄の破滅を意味する。
このカインハッタ牢獄の終わりだ。
牢獄内の通路は一本道じゃない、幾つか交差して、道が分かれている。足音の方向はわかっても、どの部屋に入ったのかまではわからない。
おおよその音がした方向の囚人部屋を格子状の小さな窓から覗いたけど、2人の姿は見えなかった。
僕はこの日、夜中に2人が、1つの囚人部屋から、別の部屋に入ったその場所を特定する事ができなかった。
ただ、最初に囚人部屋から出た時、その部屋の鍵を閉めてはいない。鉄の戸を閉め切る音もしてはいなかった。
僕は、せめて囚人部屋を出たその場所をと、囚人部屋の戸の違和感を確かめるために通路を歩いていったんだ。
ほら、鉄の戸が戸枠とわずかにずれている。
僕は、部屋番号を見て、思わず目を閉じた。
大人しくしてはくれないんだな。
何をしたいんだ、と。
僕は、鍵の開いている囚人部屋に入った。
その時、壁に文字が書かれている事に気づいたんだ。何か鋭利なナイフが何かで引っ掻いて文字を書いている。
足枷をした状態で、食事の時にナイフの使用を許されている者達もいる。それ自体は、不思議な事じゃない。
この文字は、何処かで見た事があるけど、恐らく古代文字、普通に生活していて書けるものじゃない。僕は、幼い頃にお母様から貰っていた本の中で、目にした事がある。
囚人部屋は、質素だけど、壁に寄せた木造の机と椅子がある。銀の皿が何枚か重ねてあって、その下に手記があった。
草木がどうとか、空がどうとか、あまり重要ではない事が書かれていた。
短い文章だけど。
お母様の事も書かれていた。
滅びの兆しを示す赤子とは、僕の事だろうか。
ベリオストロフ・グリーディ。
この壁に文字を書いたのは、貴方じゃない。手記と壁の筆跡が違い過ぎる。
しかし、この手記の中で、明らかな事が1つ。
かつてウイプルの騎士だったと言っていたけど。
ヘイル・サイン騎士隊は、活動内容を変え、今も動いている。
そして、信じられない事だけど。
このカインハッタ牢獄内に囚人としている貴方が。
その活動の中心にいる。
ジスマリアの21日
カインハッタ牢獄内にて
___________
囚人部屋のある方向から。
僕は剣を取り、自分の部屋の戸の鍵をゆっくりと開け、足音を抑えながら、その音のする方へ急いだ。
海風が窓から舞い込む音で、多少の物音はかき消される。
でも、僕の耳はごまかされない。
看守は椅子に腰かけ、昼間と違い、見回る時間帯は大幅に減る。
ウイプルのカザンデリックにある時計塔の時の鐘が、時を知らせ、その鐘の音を受けた他の街の時計塔が、それに呼応する様に鳴らし始めるけど。
夜中の第3刻が鳴らされる前後に、カインハッタ牢獄の看守は見回り始める。
囚人にも、看守の動きがわかりやすいだろう。
しかし。
他の囚人部屋の者達は、自身以外の囚人部屋の戸が夜更けに開く音に気づかないのか。
どの囚人部屋からも、声はしない。
これが日常に行われている事だからか?
囚人部屋の戸が開かれた、そこから人の足音が響く。
1人。
そう思ったけど、すぐに1人じゃない事に気がついた。
もう1人、いる。
看守が囚人部屋の鍵を開け、看守と囚人部屋の中にいた囚人が、2人で歩く音、だろうか。
足音を抑えて歩いている様だ。僕の耳は、ごまかせないはしない。
鍵を開けた囚人部屋の戸は、閉めていない様だ。連続して音を立て、周囲に気づかれるのを嫌ったのか。
何処へ向かう?
他の看守も、信用はできない。
僕1人で、不審な動きをする2人の足音の方へ向かった。
2人の足音は、途中から、急ぎ足にていく。
小柄な者と、大柄な者の足音。
足音を抑えていても、2人の足音の大きさに差がある。
螺旋階段を降りてはいない。このカインハッタ牢獄の内と外を繋ぐ経路を辿っていない。
それは、僕が他の経路を知らないだけか、それとも牢獄内の別の場所を目指している?
早く追いつけ、と。
足音を抑えながら、その2人の元へ向ったんだ。
それでも。
間に合わなかった。
鉄の戸を開け、閉める音。
2人とも、何処かの部屋へ入った。
そして、内側から鍵を閉める音がした。
もう1人は看守じゃないのなら、囚人だ。囚人が囚人部屋の鍵を持ってはならない。それは、このカインハッタ牢獄の破滅を意味する。
このカインハッタ牢獄の終わりだ。
牢獄内の通路は一本道じゃない、幾つか交差して、道が分かれている。足音の方向はわかっても、どの部屋に入ったのかまではわからない。
おおよその音がした方向の囚人部屋を格子状の小さな窓から覗いたけど、2人の姿は見えなかった。
僕はこの日、夜中に2人が、1つの囚人部屋から、別の部屋に入ったその場所を特定する事ができなかった。
ただ、最初に囚人部屋から出た時、その部屋の鍵を閉めてはいない。鉄の戸を閉め切る音もしてはいなかった。
僕は、せめて囚人部屋を出たその場所をと、囚人部屋の戸の違和感を確かめるために通路を歩いていったんだ。
ほら、鉄の戸が戸枠とわずかにずれている。
僕は、部屋番号を見て、思わず目を閉じた。
大人しくしてはくれないんだな。
何をしたいんだ、と。
僕は、鍵の開いている囚人部屋に入った。
その時、壁に文字が書かれている事に気づいたんだ。何か鋭利なナイフが何かで引っ掻いて文字を書いている。
足枷をした状態で、食事の時にナイフの使用を許されている者達もいる。それ自体は、不思議な事じゃない。
この文字は、何処かで見た事があるけど、恐らく古代文字、普通に生活していて書けるものじゃない。僕は、幼い頃にお母様から貰っていた本の中で、目にした事がある。
囚人部屋は、質素だけど、壁に寄せた木造の机と椅子がある。銀の皿が何枚か重ねてあって、その下に手記があった。
草木がどうとか、空がどうとか、あまり重要ではない事が書かれていた。
短い文章だけど。
お母様の事も書かれていた。
滅びの兆しを示す赤子とは、僕の事だろうか。
ベリオストロフ・グリーディ。
この壁に文字を書いたのは、貴方じゃない。手記と壁の筆跡が違い過ぎる。
しかし、この手記の中で、明らかな事が1つ。
かつてウイプルの騎士だったと言っていたけど。
ヘイル・サイン騎士隊は、活動内容を変え、今も動いている。
そして、信じられない事だけど。
このカインハッタ牢獄内に囚人としている貴方が。
その活動の中心にいる。
ジスマリアの21日
カインハッタ牢獄内にて
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