剣士アスカ・グリーンディの日記

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第4章 貴方へ愛の言葉を

カインハッタ牢獄に潜む

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囚人部屋の番号70にいるバルケーの姿が見えない。

鉄の戸は施錠されたまま。

囚人部屋の地面、天井、側壁に異常は見られない。看守に尋ねてみると、首を振り、行方がわからないと言った。

行方がわからないのに、その落ち着きようは何だ。



看守の表情を見ても、何かとぼけている様にも見えない。







脱獄をしたのではと、考えていないのか。




看守の誰かが連れ去ったとしたら。





もしそうだとしたら。






バルケーの個室の向かい側には、窃盗の貴族階級の初老がいる。






話しかけても、肩を揺らして笑っているだけ。頭の線が切れているのか。





まだこのカインハッタ牢獄に馴染んでいないバルケーは、こちらの出方によっては、協力的にもなってくれたはず。







牢獄内に現れた、得体の知れない者の正体は何だったんだ。





手がかりを得られたはずだったのに。







バルケーの口を封じた?







考え過ぎ、だろうか。



















今日は、ベリオストロフ・グリーンディに面会者が来ていた。





商人の様な風貌だけど。






妙に低い声で囚人に話しかけている。





風貌と目つきに、違和感があるな。







まるで暗殺者の様な、冷徹で、獣の様に鋭い目だ。



近くに立つ看守は、2人の会話にあまり耳を傾けていない様だけど、それはその様な振りをしているだけか。





ベリオストロフ…この牢獄で何か特権を得ているのか。













ナンバー001の囚人部屋にいる二重人格の男。





今日は終始、人格がリョウバしか現れなかった。





口が固く、怒りやすい。







俺は何もしていない、だから看守らの声に耳を貸す必要もない、そうだろう?と。







あまり興奮させると、鉄の戸を叩こうとする。それはまずい、だから執拗に何かを訊き出そうとはしなかった。





でも、もしかしたら、アタフが人格に表れた時なら、彼は陽気で口が軽いから、この牢獄について、何かを語るかも知れないな。






また様子を窺いに来てみよう。







そう言えば、今日、看守長のゲーベルドンは一度も姿を見せていない。







何処に行ったんだろうか。




ジスマリアの15日
     カインハッタ牢獄にて
___________
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