剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第4章 貴方へ愛の言葉を

牢獄内の囚人

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囚人部屋の鉄の戸に、番号が振られている。

001から200まで。

全室に囚人がいるわけじゃない。

001に囚人はいるけど、002から008までは囚人はいない。



以前はいたのかも知れないけど。



001の囚人は、盗賊団ガリンシャ…?とかに所属していたとか。



訊いた事がないな。




夜になると、誰かと話している様に思えていたが、それは自作自演だという事がわかった。



自分で声色を変えて、一人二役を演じている。



リョウバとアタフ、人格が入れ替わり、互いをそう呼んでいたか。



リョウバは、口が固く、怒りやすい男。



アタフは、陽気で、軽快な口調で、語り始める。





ウイプル南、険しい山岳地帯を抜けた、カーディア帝国の話をしていた。






内乱があったのか?







長年、帝国主義を貫いてきた大国も、ここ近年は、その力を大きく緩めている。






兵の数で言えば、ウイプルどころか、アスデン王国、コーリオ王国を足しても、及ばないだろう。





これと言って、名の知れた部隊がいるわけでもないけど。





カーディアが、尖った岩山の険しい山岳地帯を越えても、このウイプルに用はないだろう。






この男の言う、ウイプルの内乱は、いつの話を言っているんだろうか。





かなり前のものなのかも知れない。







まぁ、どうでもいいか。





アタフは、ガリンシャの呪われた財宝を、シェガラが持ち去ってくれて助かったと言っていた。





滅びの使者を呼んでしまうから、と。






滅びの使者か。







何の事かはわからないけど、この限られた小部屋の中で、彼は暇潰しにはなっているのだろう。



人格が一転し、リョウバは、アタフを叱っていた。



他の者に訊かれたら大変だと。







そこまで重要な話には思えなかったけどな。







そう言えば。








数日前の夜更け、あの生きているのかどうかもわからない得体の知れない者が消えた場所、その周辺の囚人部屋を覗いてみた。



050から053、067から070辺りの部屋だろう。



050には、窃盗をし続けた貴族階級の初老の男、051と052は空き部屋、053は貴族階級で常に瞑想している罪名不明の中年男。



067は教会にて惨殺を犯した司祭、068、069は不在。

070は、僕らが連れてきた、バルケーが収容されている。



僕はバルケーに、数日前に、夜更けに何か不審な者が部屋の前の通路を通らなかったかを訊いてみた。



食べ物が欲しいと要求し、食べ物をやらないと、口を開かないつもりらしい。






僕がその話を持ち出した時に、バルケーの目に少し恐怖が浮かんでいた。







何かに気づいているな。








明日、パンとスープを運んでやる時に、また訊いてみる事にしよう。





ジスマリア14日
     カインハッタ牢獄内にて

_____________
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