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第4章 貴方へ愛の言葉を
次の日
しおりを挟むシリル様にキスされている。
婚約者の立場の時でさえ適度な距離、挨拶などでも手の甲へのキスまでで頬へのキスさえなかったのに、今は唇へのキスだ。
思わず身体を仰反らそうとするが、後頭部をがっちり捕まえられていてそれもできない。
息苦しくなって彼の腕を叩く。するとそっとほんの少しだけ離してくれた。
息を吸うため口を開くとすぐ口を塞がれる。そして口の中には熱を持った何かが。
私の口内で暴れているのは彼の舌だ。
どうすれば、と考えていられたのも少しの間だけでだんだん思考が奪われていく。
満足した彼が唇を離したが、まだ私の息は整わない。
「ど…どう、して…」
それだけをやっと口にするが悪びれた感じもなく
「少し行き過ぎかもしれないが婚約者への愛情表現だよ。何もおかしいことはないよ。」
まだ、頭がぼうっとしてて上手く考えられない。婚約者?婚約解消するのに?シリル様はリュエル様と相思相愛のはず。私にキスするなんて何を考えているの?
「シリル様。私は元婚約者です。今は解消へ向けての話し合いの最中ですが……「解消はしない。だから君は今もこれからも俺の婚約者だよ。」
「ですが、シリル様にはリュエル様がいらっしゃるではないですか?」
「リュエル嬢?彼女に恋愛感情はないよ。彼女から聞く隣国の話には関心があるけれど。それだけで婚約者を交代なんてしないよ。」
「仕方ない。ここまでする気はなかったが。」
そう言うと私を抱き上げてスタスタと歩き始める。
ここは私の私室。今は前室にいるがシリル様が向かっているのは奥の寝室だ。
「えっ、や、ちょっ…」
シリル様の腕の中で暴れてみたがびくともしない。扉を開けて私をベッドにそっと下ろし、その上にのしかかってきた。
「シリルさ…」
唇を合わせてまた口内をシリル様の舌が暴れる。
唾液を送り込まれ息が出来なくて飲み込む。飲みきれないものは口の端から溢れている。
シリル様が唇を離し溢れた物を追いかけて首元まで舌を這わす。
すると背中がゾクゾクとする。思わず背を反らせると喉元にきつく吸いつかれる。
「いたっ、やっ、」
いくつも吸いつき、その上をなぞるように舌を這わされて声を抑えることが出来なくなる。シリル様の唇がどんどん下に下がってきた。今日はアザが薄くなったからと詰め襟ではなく少し胸元が開いている服を着ていた。だから開いていた鎖骨から胸元にかけて吸いつき跡を残す。
シリル様は少し顔を離してうっとりと
「綺麗に跡がついた。まるで紅い華が咲き誇っているようだ。」
つけた赤い華を指で一つ一つなぞる。その指使いにまた身体がビクビクと震える。
頭のどこかでこのままではいけないと思っていても、どうすれば良いのかわからない。
そんな時、コンコンとノックの音がしてドアの外から執事が声をかけてきた。
「お嬢様、シリル殿下。旦那様がお帰りになられお呼びです。開けてもよろしいでしょうか?」
「チッ」と舌打ちが聞こえてシリル様が私の上から退いて抱き起こしてくれた。
と、同時にドアが開けられ執事がメイドと入ってきた。
執事は私を見るとメイドに服と髪の乱れを直し、ショールをかけるように指示した。
「シリル殿下。旦那様がお待ちです。ご一緒に来ていただけますか?」
疑問形なのに何故か有無を言わせない物言いだ。シリル様も何も言わず執事について部屋を出る。
父の執務室ではグレイテス伯爵とシリルが向かい合ってソファーに座っていた。
男性使用人に抱き抱えられてオリビアが部屋に入るとシリルが立ち上がりオリビアを使用人から奪うように抱き抱えると座っていたソファーにおろし、すぐ横に自分も腰掛けた。
目の前から伯爵のため息が聞こえた。
「シリル殿下。今貴方と娘の婚約は解消へ向けての話し合いの最中です。それなのに急な訪問、侍女を部屋の外に出して部屋に2人で籠るなど、一体どういうおつもりか説明お願いできますか?」
「オリビアとの婚約解消はしない。今回の件は全て私が悪かった。それで今日は彼女に謝罪しに来訪した。
侍女を追い出したのは王族たる者がみだりに頭を下げるものではないと言われているので、見られないように出て行ってもらっただけだ。他に意図はない。部屋に2人きりなのも婚約者なんだから問題はないだろう?」
シリルはしきりにオリビアを婚約者として扱い、婚約解消はしないと断言している。
グレイテス伯爵は困り顔で
「婚約解消で話を進めております。なのでお戯れはお止めください。」
シリルはニヤリと笑い、横に座らせたオリビアのショールを抜き取った。
すると先程付けられた赤い華が散らばった胸元が晒された。
「オリビアとは仲直りをしている途中だったのだよ。無粋にも止められてしまったがね。私はオリビアを離す気はないよ。それでも婚約解消を強行する気か?」
おたおたと慌てるオリビアを嬉しげに目を細めて見ながら伯爵に言い切った。
グレイテス伯爵は諦めきった表情で
「わかりました。婚約解消は引き下げましょう。
ですが、婚姻まで手を出すのは控えていただきますよ。」
シリルは嬉しそうに微笑むと
「仕方ない。今後は婚約者としての軽い愛情表現に留め、後は結婚後の楽しみにしておこうか。婚約者が愛らしすぎて早く結婚してしまわないといつ限界が訪れるかわからないけどね。」
そしてオリビアの耳元で、「これからもよろしく。婚約者殿。」と囁くとチュッと頬へキスをした。
真っ赤になるオリビアを蕩けるような目で見ながら抱きしめる。
わたしは悪役ではなくまだシリル様の婚約者でいても良いらしい。
婚約者の立場の時でさえ適度な距離、挨拶などでも手の甲へのキスまでで頬へのキスさえなかったのに、今は唇へのキスだ。
思わず身体を仰反らそうとするが、後頭部をがっちり捕まえられていてそれもできない。
息苦しくなって彼の腕を叩く。するとそっとほんの少しだけ離してくれた。
息を吸うため口を開くとすぐ口を塞がれる。そして口の中には熱を持った何かが。
私の口内で暴れているのは彼の舌だ。
どうすれば、と考えていられたのも少しの間だけでだんだん思考が奪われていく。
満足した彼が唇を離したが、まだ私の息は整わない。
「ど…どう、して…」
それだけをやっと口にするが悪びれた感じもなく
「少し行き過ぎかもしれないが婚約者への愛情表現だよ。何もおかしいことはないよ。」
まだ、頭がぼうっとしてて上手く考えられない。婚約者?婚約解消するのに?シリル様はリュエル様と相思相愛のはず。私にキスするなんて何を考えているの?
「シリル様。私は元婚約者です。今は解消へ向けての話し合いの最中ですが……「解消はしない。だから君は今もこれからも俺の婚約者だよ。」
「ですが、シリル様にはリュエル様がいらっしゃるではないですか?」
「リュエル嬢?彼女に恋愛感情はないよ。彼女から聞く隣国の話には関心があるけれど。それだけで婚約者を交代なんてしないよ。」
「仕方ない。ここまでする気はなかったが。」
そう言うと私を抱き上げてスタスタと歩き始める。
ここは私の私室。今は前室にいるがシリル様が向かっているのは奥の寝室だ。
「えっ、や、ちょっ…」
シリル様の腕の中で暴れてみたがびくともしない。扉を開けて私をベッドにそっと下ろし、その上にのしかかってきた。
「シリルさ…」
唇を合わせてまた口内をシリル様の舌が暴れる。
唾液を送り込まれ息が出来なくて飲み込む。飲みきれないものは口の端から溢れている。
シリル様が唇を離し溢れた物を追いかけて首元まで舌を這わす。
すると背中がゾクゾクとする。思わず背を反らせると喉元にきつく吸いつかれる。
「いたっ、やっ、」
いくつも吸いつき、その上をなぞるように舌を這わされて声を抑えることが出来なくなる。シリル様の唇がどんどん下に下がってきた。今日はアザが薄くなったからと詰め襟ではなく少し胸元が開いている服を着ていた。だから開いていた鎖骨から胸元にかけて吸いつき跡を残す。
シリル様は少し顔を離してうっとりと
「綺麗に跡がついた。まるで紅い華が咲き誇っているようだ。」
つけた赤い華を指で一つ一つなぞる。その指使いにまた身体がビクビクと震える。
頭のどこかでこのままではいけないと思っていても、どうすれば良いのかわからない。
そんな時、コンコンとノックの音がしてドアの外から執事が声をかけてきた。
「お嬢様、シリル殿下。旦那様がお帰りになられお呼びです。開けてもよろしいでしょうか?」
「チッ」と舌打ちが聞こえてシリル様が私の上から退いて抱き起こしてくれた。
と、同時にドアが開けられ執事がメイドと入ってきた。
執事は私を見るとメイドに服と髪の乱れを直し、ショールをかけるように指示した。
「シリル殿下。旦那様がお待ちです。ご一緒に来ていただけますか?」
疑問形なのに何故か有無を言わせない物言いだ。シリル様も何も言わず執事について部屋を出る。
父の執務室ではグレイテス伯爵とシリルが向かい合ってソファーに座っていた。
男性使用人に抱き抱えられてオリビアが部屋に入るとシリルが立ち上がりオリビアを使用人から奪うように抱き抱えると座っていたソファーにおろし、すぐ横に自分も腰掛けた。
目の前から伯爵のため息が聞こえた。
「シリル殿下。今貴方と娘の婚約は解消へ向けての話し合いの最中です。それなのに急な訪問、侍女を部屋の外に出して部屋に2人で籠るなど、一体どういうおつもりか説明お願いできますか?」
「オリビアとの婚約解消はしない。今回の件は全て私が悪かった。それで今日は彼女に謝罪しに来訪した。
侍女を追い出したのは王族たる者がみだりに頭を下げるものではないと言われているので、見られないように出て行ってもらっただけだ。他に意図はない。部屋に2人きりなのも婚約者なんだから問題はないだろう?」
シリルはしきりにオリビアを婚約者として扱い、婚約解消はしないと断言している。
グレイテス伯爵は困り顔で
「婚約解消で話を進めております。なのでお戯れはお止めください。」
シリルはニヤリと笑い、横に座らせたオリビアのショールを抜き取った。
すると先程付けられた赤い華が散らばった胸元が晒された。
「オリビアとは仲直りをしている途中だったのだよ。無粋にも止められてしまったがね。私はオリビアを離す気はないよ。それでも婚約解消を強行する気か?」
おたおたと慌てるオリビアを嬉しげに目を細めて見ながら伯爵に言い切った。
グレイテス伯爵は諦めきった表情で
「わかりました。婚約解消は引き下げましょう。
ですが、婚姻まで手を出すのは控えていただきますよ。」
シリルは嬉しそうに微笑むと
「仕方ない。今後は婚約者としての軽い愛情表現に留め、後は結婚後の楽しみにしておこうか。婚約者が愛らしすぎて早く結婚してしまわないといつ限界が訪れるかわからないけどね。」
そしてオリビアの耳元で、「これからもよろしく。婚約者殿。」と囁くとチュッと頬へキスをした。
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わたしは悪役ではなくまだシリル様の婚約者でいても良いらしい。
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