剣士アスカ・グリーンディの日記

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第4章 貴方へ愛の言葉を

海賊船と侵入者

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まだ、夜明けまで時間がある。ただ寝つけなくて、外を眺めようと、カインハッタ牢獄施設内にある看守用個室の格子窓から、外に目を向けたんだ。







そこで見た光景は、僕の微かな眠気も吹き飛ばした。






とても大きな黒い船が、このアメリディロ島に影を落としていた。









月明かり頼りでも、船体が全て黒塗りされているとわかった。要所要所に無骨な造形、海賊船なのは間違いない。





この海賊船は、アメリディロ島沿岸に限りなく近づいていた。





外の見張りは、十分な人数を立たせているはず。





この海賊船に気づかないはずはない。





何処からも、海賊船のアメリディロ島急接近に対しての声は訊こえてはこない。看守達も、外の番兵も、何もまるで日常の出来事の様に。






静かだった。








この島の者達は何かを隠しているのか。







それを率直に看守長ゲーベルドンに訊くべきか、それともしばらく探るべきか。




そう思い悩んでいた時、この牢獄内に何か違和感を感じたんだ。






何かが現れた。








それは、あまり心地良い感覚のものではない。








その何かは、不思議な経路を辿って移動している。その動きは有り得ない。








不思議と、僕にその何かの動きがわかるんだ。












嫌な予感がする。






そう思い、





僕は、部屋隅に立て掛けていた竜剣ジオグリシェルを取り、部屋を出た。







それは、止まる事なく、この牢獄を移動している。






今進んでいる場所は、廊下だろうか、と。





ならば、看守の可能性もある、そう思おうとしても、そうは思えない。






足音がしないんだ。







そして。







壁や鉄格子の戸を何度かすり抜けている。







それは、ただ徘徊してるわけでもなく、何処か目的の場所へ進んでいる。






何かを喋っている?








それとも、これは幾重にも重なる音がそう訊こえさせるのか。






足音を抑えながら、それを感じる元へ急いだ。








僕がいる場所から近い、それの移動する速度はそこまで速くはない。













そして、それの背後を目にした。









すぐに通路を右に曲がっていったため、一瞬だったけど、それの体に揺らめくものは、まるで青い炎の様な。







大きな体格、肩幅を大きく取った様な服装、いや、鎧だったか。







わからない。








それの後を追って、右に曲がったんだ。







しばらく一本道が続く通路、その間に脇道はない。










それの姿はなかった。










壁をすり抜けたのだろうか。













恐らく、違う。










気配もなくなった。

   









消滅でもしたかの様に、完全に消えた。









あれは、何処に向かっていたんだろうか。











しばらく辺りを探し回ったけど、無駄に終わるに違いないと感じてはいた。







あれだけ島の沿岸に寄っていた海賊船の姿も、嘘の様になくなっている。







まるで、夢でも見ているかの様だ。





ジスマリアの12日
     カインハッタ牢獄にて
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