剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

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第4章 貴方へ愛の言葉を

思い出の庭園

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リガードの騎士よ。





鉄の戸にある小さな格子窓からそう言い、僕を呼び止めようとする。





同じ騎士なのだから、僕らは同志だとでも、言うつもりか。





ヘイル・サイン騎士隊に属していた、



ベリオストロフ・グリーンディ。





僕と話をしたがってはいても、僕にとって、貴方は。








死人も同じ。






いつかの、貴方に会いたいと思う気持ちは、僕の心の片隅にある、気の迷いから生まれたもの。









そうさ。












今はもう、そんな気持ちなど、何処にもない。












何だ?










囚人である貴方に、そう素っ気なく答えても、問題はない。








他の看守も、同じ様な口調だ。







彼に、ディエルフェアの庭園は知っているかと訊かれた。







何代か前のウイプル国王が、気に入った建築家に設計させた庭園。自分の家から近い場所にあり、幼い頃、お母様とも何度か行って、色とりどりの花を眺めた。








お母様がいなくなってからは、一度も足を踏み入れた事はない。










知っている、と答えた。



素っ気ない言い方は、変えるつもりはかったけど。










今も、綺麗な花を咲かせているのか、そんな事を僕に訊いてきた。










それを知って、何になる?










もう二度と、その庭園に行く事はないだろう。










貴方も、








僕も。









でも、ほんの少しの優しさを、見せるべきだ、と。










お母様が愛した、貴方へ。










ほんの少しの、優しさを。









向ける必要がある。










今も、綺麗な花が咲いている。









きっと、貴方が見た頃と、同じ庭園が、今も。









そう、伝えた。










僕の言葉を訊いて、何か思いを巡らせている様な目を、天井に向けていた。










僕がその時に感じたものが正しいのなら、次に彼が口にしそうな言葉が、予想できた。








その言葉が届く前に、僕は歩き始めた。









まるで、逃げ出す様だった。












後に続くだろう彼の言葉を、訊くのが、









恐かった。












お母様と過ごした、思い出の場所なんだろう。








お母様がその庭園で、思い出に目を向けるのと同じ様な目を、たくさんの花に向ける事があったのを、覚えている。








お母様と、貴方との、思い出。











どの様な幸せな日々を送っていたのか、僕が訊く必要もない。







でも。













二人だけの思い出を、どうか大切に。










ジスマリアの11日
     カインハッタ牢獄にて
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