81 / 113
第4章 貴方へ愛の言葉を
あと少し(for three days)
しおりを挟む
港町テディーザから檻車を乗せた船を出し、川を西へ下る。
中立国パークドイルの港町ゲヤローフに入るまでの間、囚人のバルケーは歌を歌っていた。
護衛兵の注意も訊かず、歌い続けた。
聞き慣れない歌だ。
ウイプルのものではないだろう。
アルタイ岩頭院かセケメント地域のものだろうか。
その歌は、バルケー自身を、慰めようとも、勇気づけようとも、している気がした。
カインハッタ監獄の中では、その様な勝手は許されないはずだ。
その歌にどんな思いがあるのかは、興味がないけど。
いいさ。
船の中、大した人数も乗せてはいない。
今のうちなら。
思いを乗せたその歌を。
気が済むまで、歌えばいいさ。
ジスマリアの1日
船の一室にて
________
ゲヤローフの船着き場で僕らを見るパークドイルの民の目つきが印象的だった。
檻車の中にいるバルケーよりも、僕らに対して批判的な目を向けていたな。
僕らが向かう先も、わかっているのだろう。
これから向かうカインハッタ監獄は、そういう者達もいるという事だろうか。
無実の囚人。
このバルケーは、国王の暗殺を企てたのだから、無実で済ますという事にはならない。
この理由を、他国の民に報告する必要もない。
バルケーも、すでに覚悟を決めているだろう。
ジスマリアの2日
舟の一室にて
________
西へ川を下っていた僕らの船は、広大な海に抜けた。
目についた遠くの孤島、高い崖の上に聳える建物をしばらく見つめていた。
巨大な黒い要塞の様な建物がただ一つ。
カインハッタ監獄。
思った以上に、とてつもなく大きい。
一体何人の囚人が収容されているのか。
暴動など、起きてはいないだろうか。
あんな所に行くなんて、初めてだ。
しばらくあそこの牢獄に身を置く事になるけど。
与えられた監獄での役割をこなしながら、囚人と話でもしてみるか。
普段耳にしない事を、訊かせてくれるかも知れない。
ジスマリア3日
船の一室にて
________
中立国パークドイルの港町ゲヤローフに入るまでの間、囚人のバルケーは歌を歌っていた。
護衛兵の注意も訊かず、歌い続けた。
聞き慣れない歌だ。
ウイプルのものではないだろう。
アルタイ岩頭院かセケメント地域のものだろうか。
その歌は、バルケー自身を、慰めようとも、勇気づけようとも、している気がした。
カインハッタ監獄の中では、その様な勝手は許されないはずだ。
その歌にどんな思いがあるのかは、興味がないけど。
いいさ。
船の中、大した人数も乗せてはいない。
今のうちなら。
思いを乗せたその歌を。
気が済むまで、歌えばいいさ。
ジスマリアの1日
船の一室にて
________
ゲヤローフの船着き場で僕らを見るパークドイルの民の目つきが印象的だった。
檻車の中にいるバルケーよりも、僕らに対して批判的な目を向けていたな。
僕らが向かう先も、わかっているのだろう。
これから向かうカインハッタ監獄は、そういう者達もいるという事だろうか。
無実の囚人。
このバルケーは、国王の暗殺を企てたのだから、無実で済ますという事にはならない。
この理由を、他国の民に報告する必要もない。
バルケーも、すでに覚悟を決めているだろう。
ジスマリアの2日
舟の一室にて
________
西へ川を下っていた僕らの船は、広大な海に抜けた。
目についた遠くの孤島、高い崖の上に聳える建物をしばらく見つめていた。
巨大な黒い要塞の様な建物がただ一つ。
カインハッタ監獄。
思った以上に、とてつもなく大きい。
一体何人の囚人が収容されているのか。
暴動など、起きてはいないだろうか。
あんな所に行くなんて、初めてだ。
しばらくあそこの牢獄に身を置く事になるけど。
与えられた監獄での役割をこなしながら、囚人と話でもしてみるか。
普段耳にしない事を、訊かせてくれるかも知れない。
ジスマリア3日
船の一室にて
________
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる