剣士アスカ・グリーンディの日記

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第3章 竜の涙

シュペリの花

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紫雷刀身竜ゲボルトベルザスドラゴンは、永遠の眠りについた、そうザシンから伝えられた。



特別、その死因を語る事もなかったけど。



老衰なのかと思った。




初代ウイプル国王が、天の空で待っている。



いつかの戦いをやろう、と。







竜の国、ウイプル。



この国に、もう、竜はいない。



竜がウイプルの空を舞う、当たり前の光景が、今はまるで夢の様に。



昔ほど、他国はウイプルを脅威とは見ないのかも知れない。



だけど、ウイプルは死んではいない。



これから。



ウイプルは生まれ変わる。






そうならなければ、






きっと、







ウイプルに明日はない。


















僕はマージラス砦で、ベルベッタの敵討ち、ダラメイズと一騎打ちとなった。

砦の矢狭間やはざま、その他から僕を狙う矢を警戒しながら、僕はダラメイズとの距離を縮めていったんだ。



マージラス砦の、大勢のいるアスデン王国兵の耳に入る様に言われた言葉、恥をかいたと認識できたのに、その行為自体を恥とは思ってはいないのだろう。



ダラメイズ。



彼の守りたいもの、それは何か。



アスデン王国の民。



それとも、自分の身。







違う。








僕との一騎討ちは、危険が高い事は知っているはず。







保身としてくだらない策を練ってきたとしても、その身が一番じゃないだろう。






ダラメイズの守りたいもの。







それは、自分の心に咲かせた虚栄心。








誰からも愛される男だと、言いたいのか?










その愛を自分に捧げない女は、代わりに命を差し出せと?











だから。









お前は、ベルベッタの命を奪った。










だから。













今度は僕が、ダラメイズ自身の命を差し出せと。







言っているんだ。














僕とダラメイズとの距離が30フィートを切った時、砦の矢狭間から矢が放たれた。



昇り始めた日の光が目に入り、矢の軌道の判断が難しく、







それでも僕は、鞘から竜剣を抜き、その矢を弾き飛ばした。









ダラメイズはその機会を逃さず、一気に駆け寄り、僕の首元への刺突を狙ってきた。







この時に、僕の体は予想以上に傷が深いと思ったんだ。










体が思った方向とは違う方向へ流れた。











ダラメイズの剣の切っ先は、僕の首をかすめて。








次の瞬間、僕の体は再び言う事を聞く様になり、態勢の整わないダラメイズの鎧の胸部と腹部の板金の隙間を狙ったんだ。








ダラメイズの体に竜剣ジオグリシェルの切っ先が突き刺さり、そのまま体を貫いた。









下から上に貫いた刺突は、心臓を捉え、お前は助からない。










お前は幸せだ。












敵と向かい合って、戦って死ねた。










ダラメイズは膝をつき、血を吐いて前のめりに倒れ、







もがき苦しみ、









動きが鈍くなり、











そのまま死んでいった。










僕は、胸元に入れていた物を取り出して、ほんの一瞬だけど、ベルベッタと共に過ごした日々を思い出していた。







人は言葉で真実を隠すけど、ベルベッタ、お前は言葉が喋れないから、感情で話をしたね。








僕に、怒ったり、悲しんだり、



そして、笑ったり、楽しんだり、



優しくしたりして。



言葉より、お前という竜がよくわかったよ。









最高の親友だ。









ベルベッタ。








今まで、ありがとう。










ベルベッタ。










これからも、僕の心にお前は存在し続けるんだ。









お前が安心して、また住みたくなる様な国に、









していくから。








ベルベッタ。









もう安心して。











しばらく、僕の心の中で、おやすみ。











僕の手の中にある、白い花びらのシュペリの花。









僕は、それをダラメイズの死体の上に投げた。








お前が殺した、







ベルベッタからの、贈り物だよ、と。






___________
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