剣士アスカ・グリーンディの日記

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第3章 竜の涙

ザシンとマイクリーハの決断

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僕は今、ジュシテナという丘にある簡易的な小屋にいる。



元ダルレアス自治領の、クフト城よりも奥の方にあるシーリンクという街の外れだ。



もう、ダルレアス自治領は存在しない。



紫雷刀身竜ゲボルトベルザスドラゴンは死に、ザシンは威厳山に隠居を決めた。



もう少しこの場で心身を癒し、僕はまた戻らなければならないけど。



その前に、僕の心を整理するために、またこの日記を書き始める。



















あのディオガルーダの戦いの後、僕はツォルバ騎士団の騎士に治療場所に連れられ、治療を受けた。



その時は、ザシンが雲隠れをしていて、不信感が少しあったんだけど、その理由が後でわかったんだ。





僕は治療の後、制止を振り切り、ベルベッタの敵を討ちに王都の砦門さいもんを開けさせようとした時、砦の見張り台から姿を現した者は。





やっぱり、僕を警戒していた。




そう思った。





邪教国に睨まれているウイプル、コーリオ、アスデン、この3国が連携を強めるためには、同盟を強固にしないといけないから。







だから、ウイプルの民の死傷を不問にした。そして、ベルベッタの死も。







僕の動きを監視して、不穏な動きを見せた時は、立ち塞がると、思っていた。




 




貴方との戦いは、避けたかったんだ。












リガード竜騎士団騎士長、アーマン。








すでに剣を抜いていた。







それでも。










僕は、引かない。







決して。









貴方が相手でも。









僕の傷はその時、もちろん癒えているはずもなく、老練な剣術を持つアーマンは、僕の戦い方を見て知っているはず。







敵となれば、かなりの強敵だった。











もちろん、敵として見る事はあり得ないと思っていた。











アーマンは剣の切っ先を僕に向け、お前の向かう行き先を聞いておこうと言ってきたんだ。







僕は、正直に答えたよ。








アスデン王国のマージラスの砦にいるダラメイズの元へ向かうと。








僕の家族の敵討ちだと。





_________

リガード竜騎士団騎士長アーマンは、眉間にしわを寄せ、眼光鋭く、僕をじっと見つめていた。



僕に、覚悟があるのか、と問われた。





僕は、頷いた。









ベルベッタの死を許しはしない。









僕が生きている限り、アスデン王国のマージラス砦のダラメイズは必ず討つ、と。








これを果たさなければ、僕がウイプルを本気で守っていこうなどとは思えなかった。






ディオガルーダの思いも、受け止めていこうと、決めたんだ。







死んだ様に生きて、ウイプルを守りきる事など出来はしない。





そんなに、物事は甘くないんだって、ディオガルーダは戦いの中で教えてくれた。








僕を止めるには、僕を殺すしかないんだ。








でも、アーマンは目を逸らし、何処かへ手で合図を送って、剣を鞘に納めた。







そして、王都の砦門が開かれた。










その中から出てきた者達は。










準備は良いかな、アスカ・グリーンディと。










ダルレアス自治領のザシンとツォルバ騎士団騎士長ウガニエムと、ツォルバ騎士団の騎士達30名ほど。







その鎧の形は、ツォルバ騎士団が身につけていた鎧じゃない。








ウイプル王国、リガード竜騎士団の騎士の鎧だった。








ダルレアス自治領をウイプル本国に再統一する話に難を示していたザシン。








ザシンが姿を見せなかった理由を、ここで知る事になったんだ。








ザシンは、難を示していたウイプル再統一を一転、受け入れる代わりに、自分の提案を飲む様にと、国王マイクリーハと交渉していた。








同盟の交流会開催期間中、ウイプルの民を安易に死傷し、不問にされていたアスデン王国上級兵ダラメイズの身柄引き渡し要求をアスデン王国国王に行い、ダラメイズをウイプル王国による裁きにかける事、






それが通らない場合、同盟の一部規約を破棄、アスデン王国マージラス砦を陥落させるため、ウイプル王国軍を進軍させる事。









少しばかり帝国主義の考えを持つ国王マイクリーハに、ダルレアス自治領の民を心配していたんでしょう?





老いた紫雷刀身竜ゲボルトベルザスドラゴンの身が心配だったんでしょう?






だから、ダルレアス自治領のウイプル本国への再統一をなるべく遅らせようとしていたんでしょう?









無理な要求だった。









でも、国王マイクリーハの念願のダルレアス自治領のウイプル本国再統一、そして僕がウイプル上級兵のリガード竜騎士団遊撃隊長で、その僕の家族が殺されているという話が、事を動かしていた。








アスデン王国国王は、ダラメイズの身柄引き渡しを拒否。








その姿勢を嫌い、ウイプル国王マイクリーハは、アスデン王国マージラス砦陥落を決断した。







ウイプル王国が大規模の軍を動かすと、アスデン王国と全面戦争にもなり得るため、国王は一部の部隊のみ出兵を許可した。







感謝しても、仕切れない。







みんな、ありがとう。









ダルレアス自治領のみんな。










僕が、この先、ウイプルを必ず守るから。





_________

アスデン王国が兵をマージラス砦に寄せていなければ、駐屯兵は100と訊いていた。





数で言えば、負けているけど、戦力で言えば、こちらに分がある。






元ツォルバ騎士団の騎士は、リガード竜騎士団の騎士と同等の実力を持つ精鋭部隊。





でも、僕はマージラス砦の陥落を目標としていなかった。






あくまでも、ベルベッタを殺したダラメイズのみ。









ただ、いつまでもダラメイズを匿って、彼が姿を現さないのであれば、そのまま陥落させるしかなくなる。








僕は、誰にでも慈悲深い神父でもない。










戦に身を置く、剣士だ。









早朝にアスデン王国マージラス砦に到達し、戦に突入する。












アスデン王国マージラス砦守備隊長ダラメイズ。













ベルベッタに私欲のため近寄り、死に至らしめたその罪、身を以て知れ。



_________
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