68 / 113
第3章 竜の涙
書室の疑問(for two days)
しおりを挟む
ディオガルーダは、ゴブリン大部隊の侵攻を受けた時、
ダルレアス自治領を守っていた訳じゃなかった。
紫雷刀身竜を守ろうとしていただけ。
だから、ダルレアス自治領やウイプル自体は、どうなろうと、大して気にしてはいなかっただろう。
ただ、ディオガルーダがゴブリン大部隊を寄越した敵国のジーダペンス王国の兵だったとは、思わなかった。
欺かれた、そう思った。
でも、このディオガルーダは、ジーダペンス王国の正式な兵ではないという事も、明かしたんだ。
ジーダペンス王国からディオガルーダの国へ依頼がきて、それを受けた。傭兵の様な立場。
ディオガルーダはゴブリン大部隊のダルレアス自治領襲撃の計画は訊いていなかったため、予想外だったと言った。
でも、ジーダペンス王国側に立つつもりなら、このウイプルに住む者達を相手にディオガルーダは、剣を抜くつもりなのか?
見極めが難しかった。
このウイプルに、ジーダペンスから放たれたオーバーシルゾが3匹向かっている。
ウイプルは試される。
このオーバーシルゾを倒せなければ、ウイプルの民の大半が死ぬ事になるのだと、ディオガルーダは言った。
我が王は、人の弱さに気づこうとしている。
そして砂一粒の思いやる心を完全に消し去ろうとしている今、
あらゆる手段を用いても必ず、この大陸、そして世界への支配を進めるだろう、と。
人間の弱さ?
思いやる心を消し去る?
君の国の事は、まだわからないけど。
ディオガルーダ。
僕が、オーバーシルゾにやられると思っているのか。
ベルベッタとラリュナピュートのいたこのウイプルを、
やらせはしない。
守ったとしても、金呼鈴福竜のベルベッタはもう戻っては来ないけど。
オーバーシルゾは、僕が命に換えても殺すから。
その後は、ウイプルを。
ウイプルの民みんなで、この国を救うんだ。
できるだろう?
勇敢な、ウイプルの民なんだから。
シュリエルの14日
竜の祭壇にて
________
ディオガルーダは、ジーダペンスを利用しようとしている。
そして、この僕までもか。
オーバーシルゾの情報は、ウイプルでも掴んでいる。
まるで、オーバーシルゾを倒して欲しい様だ。
オーバーシルゾを倒せば、どう都合がいい?
僕に、ジーダペンスの兵だと明かして、そして僕をどう利用するつもりだ。
正直、誰も信用できないな。
僕は、お母様の託したこのウイプルを、リガード竜騎士団の一員として、守る事が、今、そしてこれからも、やるべき事だと。
わかっているよ。
そんな事、わかっているんだよ。
でも、僕は僕自身を説得しきれないでいる。
僕は、駄目な男だ。
どうして。
僕を救ってくれたベルベッタを、僕は救えなかった。
どうして、ベルベッタが姿を変えて僕の側にいた時に、気づかなかった?
もっと側にいてやれば、良かった。
ブルーシーズも、
ベルベッタも、
僕を救ってくれた竜達は、死んでしまった。
そして、僕はまた竜を?
真意のわからないディオガルーダとの戦いも、避けられない様な、気がした。
ディオガルーダの、ダルレアス自治領での戦いで、雷刀身竜を通じて流れてきた僕への感情が、わからないままだ。
何故、僕に悲しみの感情を持った?
ディオガルーダの目は、竜の目を感じさせる。伝わる感覚も、同じ竜だと感させる。
彼の口からは、まだその事を訊いてはいないけど。
僕も、奴に伝えてはいないから、それは同じか。
ディオガルーダか彼の竜族に関する事、お母様の書室の書物の中に、何か手がかりはないのか。
しかし、書物は、意図的に破られてなくなっていたものもある。
まさか。
お前か。
ディオガルーダ、
お前の仕業なのか?
シュリエルの15日
竜の祭壇にて
________
ダルレアス自治領を守っていた訳じゃなかった。
紫雷刀身竜を守ろうとしていただけ。
だから、ダルレアス自治領やウイプル自体は、どうなろうと、大して気にしてはいなかっただろう。
ただ、ディオガルーダがゴブリン大部隊を寄越した敵国のジーダペンス王国の兵だったとは、思わなかった。
欺かれた、そう思った。
でも、このディオガルーダは、ジーダペンス王国の正式な兵ではないという事も、明かしたんだ。
ジーダペンス王国からディオガルーダの国へ依頼がきて、それを受けた。傭兵の様な立場。
ディオガルーダはゴブリン大部隊のダルレアス自治領襲撃の計画は訊いていなかったため、予想外だったと言った。
でも、ジーダペンス王国側に立つつもりなら、このウイプルに住む者達を相手にディオガルーダは、剣を抜くつもりなのか?
見極めが難しかった。
このウイプルに、ジーダペンスから放たれたオーバーシルゾが3匹向かっている。
ウイプルは試される。
このオーバーシルゾを倒せなければ、ウイプルの民の大半が死ぬ事になるのだと、ディオガルーダは言った。
我が王は、人の弱さに気づこうとしている。
そして砂一粒の思いやる心を完全に消し去ろうとしている今、
あらゆる手段を用いても必ず、この大陸、そして世界への支配を進めるだろう、と。
人間の弱さ?
思いやる心を消し去る?
君の国の事は、まだわからないけど。
ディオガルーダ。
僕が、オーバーシルゾにやられると思っているのか。
ベルベッタとラリュナピュートのいたこのウイプルを、
やらせはしない。
守ったとしても、金呼鈴福竜のベルベッタはもう戻っては来ないけど。
オーバーシルゾは、僕が命に換えても殺すから。
その後は、ウイプルを。
ウイプルの民みんなで、この国を救うんだ。
できるだろう?
勇敢な、ウイプルの民なんだから。
シュリエルの14日
竜の祭壇にて
________
ディオガルーダは、ジーダペンスを利用しようとしている。
そして、この僕までもか。
オーバーシルゾの情報は、ウイプルでも掴んでいる。
まるで、オーバーシルゾを倒して欲しい様だ。
オーバーシルゾを倒せば、どう都合がいい?
僕に、ジーダペンスの兵だと明かして、そして僕をどう利用するつもりだ。
正直、誰も信用できないな。
僕は、お母様の託したこのウイプルを、リガード竜騎士団の一員として、守る事が、今、そしてこれからも、やるべき事だと。
わかっているよ。
そんな事、わかっているんだよ。
でも、僕は僕自身を説得しきれないでいる。
僕は、駄目な男だ。
どうして。
僕を救ってくれたベルベッタを、僕は救えなかった。
どうして、ベルベッタが姿を変えて僕の側にいた時に、気づかなかった?
もっと側にいてやれば、良かった。
ブルーシーズも、
ベルベッタも、
僕を救ってくれた竜達は、死んでしまった。
そして、僕はまた竜を?
真意のわからないディオガルーダとの戦いも、避けられない様な、気がした。
ディオガルーダの、ダルレアス自治領での戦いで、雷刀身竜を通じて流れてきた僕への感情が、わからないままだ。
何故、僕に悲しみの感情を持った?
ディオガルーダの目は、竜の目を感じさせる。伝わる感覚も、同じ竜だと感させる。
彼の口からは、まだその事を訊いてはいないけど。
僕も、奴に伝えてはいないから、それは同じか。
ディオガルーダか彼の竜族に関する事、お母様の書室の書物の中に、何か手がかりはないのか。
しかし、書物は、意図的に破られてなくなっていたものもある。
まさか。
お前か。
ディオガルーダ、
お前の仕業なのか?
シュリエルの15日
竜の祭壇にて
________
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
もふもふの王国
佐乃透子(不定期更新中)
ファンタジー
ほのぼの子育てファンタジーを目指しています。
OLな水無月が、接待飲み会の後、出会ったもふもふ。
このもふもふは……
子供達の会話は読みやすさ重視で、漢字変換しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる