剣士アスカ・グリーンディの日記

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第3章 竜の涙

守護獣(for three days)

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僕を助けようとしてくれた。



ウイプルの、リガード竜騎士団の騎士と国王兵達。



古のバライン文字が刻まれた剣で、僕を斬りつけ、その血を剣が吸い、腐神皇アーデの復活に捧げるのだろう。



僕の周り80体程度が群がり、襲いかかる骸兵に、表情などなかった。



だから、手加減は無用なんだ。



僕は、力を溜め、一撃一撃の重い斬撃を繰り返し、それを受けた骨だけの骸兵は、骨を散らし、バラバラになっていく。



僕のその一撃一撃の間、僕の隙は大きくなり、奴らの斬撃もかわしきれなかった。

それでも、何とか直撃を避け、致命傷はもらいはしない。



そして、僕の治癒力は、人を超越している。



ただ、大きな体格のゴブリンの一撃は、受けたらまずいのは、わかっていた。



僕は、骸兵の絡みつく骨に邪魔をされて、奴の一撃を何度か食らってしまった。



目の前の骸兵の白い骨が、僕の血で赤く染まる。



まだ、僕は、死ねないんだ、と。



僕は、こうやって、人から嫌われていくんだ。



僕の中の竜の血が覚醒して、感覚が獣に近くなる。

ゴブリン達を相手に、ウイプル兵のみんなが戦慄を覚える様な戦い方をしてしまった。



ゴブリンの内臓は飛び散り、腕や頭が転がる。



こういう戦い方をしているから、僕の事、いつまでもそう呼ぶんだろう。



ドラゴンバスターと。



________

ウイプル兵の1人につき応急処置をしてもらい、日が昇ったら、僕はヘンターの岩場先の岩山へ向かおうとした。

この岩場から消えた黒装束の男も、あの岩山にいるかも知れない。

リガード竜騎士団の騎士ソフヴェスに止められたけど、やり遂げなければならない。

僕の治癒能力で、比較的深い傷口以外は、もうほとんど塞がっているんだ。

国王兵は、30数人が生き残っている。



僕が敵の標的になっているのなら、この人数でもやれるのか。

いや、岩山の中に敵の住処があれば、その数にもよるだろう。

でも、

まずは僕が1人で行く方がいいだろう、と。



岩山で異変を感じたなら、全滅するよりはいいと思って、僕を気にせず、ウイプルへ帰っていいと、言った。



その場合のこの作戦の指揮権は、ソフヴェスに摂ってもらう。



ソフヴェスは、僕の腕を引っ張り、一度帰ろうと言った。

ヘンターの岩場に出没したゴブリンの掃討作戦、その役割は果たした、と。

あの岩山には、古のバライン文字の入った剣が落ちていた。何かあると思うけど。

ソフヴェスは、僕に優しい顔を見せて、僕の背中をさすっていた。



ソフヴェス。



僕の心が、傷ついていると、感じていたのか、気遣いの言葉を言われた。



そうか。



聖バハール王国との戦いの中、混乱したウイプル兵達に、僕が貴覇竜を殺したからこんな目に遭うのだと、僕が背後から斬られた事があった。



その戦場で僕から比較的近い位置にいたソフヴェスは、異変に気づき、声を上げて、騎士長アーマンを呼んでくれたんだ。



彼は、教えてくれた。



そして、大丈夫だよ、と。



アスカを、裏切ったりはしないよ、と。



ヘンターの岩場で、残虐な戦い方を見せた後に言われたからか、心が揺らいだ。



今回の件、一度国王に報告しておくべきか。ここは一度、冷静になろう、と。



ソフヴェスの提案に従った。



ペテロの29日
             ヘールベータ地区の家にて
________

ヘンターの岩場には、コーリオ王国に滞在している奇術師が、骸兵の発生を防ぐ事ができるかも知れないという話だ。

遠くの国から来た奇術師。

何をやる気だ。

それで事が収まるのなら、今回の件で命を落としたウイプルの兵は、無駄死と言われる。

慰め程度の処置をするだけだろう。





ダルレアス自治領の威厳山いげんざんから侵攻してきたゴブリン大部隊を寄越した国がわかった。

ジーダペンス王国。

そんなに前の話じゃないけど、確かにその国がウイプルを狙っているという話は出ていた。

北東の方角にある国だけど、ここから相当の距離がある。

邪教国ではないはず。

もしかしたら、遥か遠い空に浮かぶ巨大な影、最近は近づいてきてるとは感じていたけど。

ジーダペンス王国の守護獣か。



ペテロの30日
             ヘールベータ地区の家にて
________
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