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第3章 竜の涙
ウイプルの林檎(for three days)
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マッドク王国へ調査隊を出していたはずだけど、まだ戻らない。
そのマッドク、セケメント地域返還を要求してから、音沙汰がないな。
今、マッドク王国の国内はどうなっているのか。
もしかして、人の住む様な場所ではなくなっているのかも知れない。
邪教国のオルフブ王国軍にいたゴブリンや骸兵の部隊。
邪教国の聖バハール王国に支配されているのなら、同じ様にゴブリン等がいてもおかしくはないはずだ。
奴らの巣食う国など、もはや国ではなく、巣穴とでも言うべきだろうか。
セケメント地域は、今のところ、異変は感じられない。
ただ、そこに住むウイプル人は、かつてのウイプル王国としての心の奥底に眠る誇りを、呼び覚ましてくれるだろうか。
今の彼らは、どっちつかずの傍観者達。
そう思えてならない。
ペテロの4日
ヘールベータ地区の家にて
__________
再びお母様の書室に入り、目にしたいくつかの書物を開いてみた。
多くの国について記されている物、竜族について記されている物。錬金術について記された、少し変わった物もあった。
僕やお母様の竜族については、書かれていない。
机上にあった書物については、肝心なページが破り取られていて、よくわからなかった。
お母様が、わざとそうしたのだろうか。
そこを知られたくはなかったという事か。
いや、何か違うな。
僕が知りたいと願うなら、お母様は教えてくれていたに違いない。
でも、
お母様がこのウイプルに来る事になったきっかけが記されている。
“傷の癒えないこの体を、再び奮い立たせた、暴徒の獣群。
金呼鈴福竜シーラスに致命を負わせた事は、許し難い。
私の命が尽きるとしても、それを懸け、禁断の獄炎を使う事とした。
そしてそれを用いて、暴徒を仕留める事に成功した。
シーラス、私を許して欲しい。
私がもう少し早くこの地に辿り着いたなら、貴女を死なせはしなかった。
せめて、貴女が願うこの地に、悠久の平和へと紡がれる様な形を残す事にします…”
ベルベッタの親か?
このシーラスという竜は。
暴徒の獣群とは、何を指すのだろうか。
このウイプルに辿り着く前に、お母様に傷を負わせた奴とは、誰なんだ。
今とは、状況が色々と違うから、詳しくはわからないけど。
また、この書室で僕が知らない事を知っていこうと思う。
ペテロの5日
ヘールベータ地区の家にて
___________
ウイプルの他国交流の場として解放された中で、エスタイラス市場が賑わっていると聞いた。
元々、行商人を受け入れてくれる場所でもあるから、珍しい物も見つかる。
ウイプル以外から来る食べ物が手に入るのは、ここだろう。
僕は、あまり立ち寄る事はないけど、何故だか気が向いて、久し振りにそこに行ってみた。
アスデン、コーリオ王国ら他国の兵が思った以上に目についた。聞いた話通りか。目立つ存在に、緑色の髪の兵や、赤茶色の髪の女がいた。
どうやって、その色が生えたんだ。
染めているのか?
目を引いた2人の内、赤茶色の女が、僕の方へ近寄って来て、林檎を手渡してきた。
この林檎はね、酸っぱいんだよ。
赤い割にはね。
彼女も他の国から来たんだろう。
行商人の家族か。
まさか、アスデン王国やコーリオ王国の兵ではないだろうから。
目を細めて嬉しそうにその林檎を食べていたな。
だから、僕も釣られて食べてみたんだけど。
ほら。
酸っぱい。
ペテロの6日
ヘールベータ地区の家にて
___________
そのマッドク、セケメント地域返還を要求してから、音沙汰がないな。
今、マッドク王国の国内はどうなっているのか。
もしかして、人の住む様な場所ではなくなっているのかも知れない。
邪教国のオルフブ王国軍にいたゴブリンや骸兵の部隊。
邪教国の聖バハール王国に支配されているのなら、同じ様にゴブリン等がいてもおかしくはないはずだ。
奴らの巣食う国など、もはや国ではなく、巣穴とでも言うべきだろうか。
セケメント地域は、今のところ、異変は感じられない。
ただ、そこに住むウイプル人は、かつてのウイプル王国としての心の奥底に眠る誇りを、呼び覚ましてくれるだろうか。
今の彼らは、どっちつかずの傍観者達。
そう思えてならない。
ペテロの4日
ヘールベータ地区の家にて
__________
再びお母様の書室に入り、目にしたいくつかの書物を開いてみた。
多くの国について記されている物、竜族について記されている物。錬金術について記された、少し変わった物もあった。
僕やお母様の竜族については、書かれていない。
机上にあった書物については、肝心なページが破り取られていて、よくわからなかった。
お母様が、わざとそうしたのだろうか。
そこを知られたくはなかったという事か。
いや、何か違うな。
僕が知りたいと願うなら、お母様は教えてくれていたに違いない。
でも、
お母様がこのウイプルに来る事になったきっかけが記されている。
“傷の癒えないこの体を、再び奮い立たせた、暴徒の獣群。
金呼鈴福竜シーラスに致命を負わせた事は、許し難い。
私の命が尽きるとしても、それを懸け、禁断の獄炎を使う事とした。
そしてそれを用いて、暴徒を仕留める事に成功した。
シーラス、私を許して欲しい。
私がもう少し早くこの地に辿り着いたなら、貴女を死なせはしなかった。
せめて、貴女が願うこの地に、悠久の平和へと紡がれる様な形を残す事にします…”
ベルベッタの親か?
このシーラスという竜は。
暴徒の獣群とは、何を指すのだろうか。
このウイプルに辿り着く前に、お母様に傷を負わせた奴とは、誰なんだ。
今とは、状況が色々と違うから、詳しくはわからないけど。
また、この書室で僕が知らない事を知っていこうと思う。
ペテロの5日
ヘールベータ地区の家にて
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ウイプルの他国交流の場として解放された中で、エスタイラス市場が賑わっていると聞いた。
元々、行商人を受け入れてくれる場所でもあるから、珍しい物も見つかる。
ウイプル以外から来る食べ物が手に入るのは、ここだろう。
僕は、あまり立ち寄る事はないけど、何故だか気が向いて、久し振りにそこに行ってみた。
アスデン、コーリオ王国ら他国の兵が思った以上に目についた。聞いた話通りか。目立つ存在に、緑色の髪の兵や、赤茶色の髪の女がいた。
どうやって、その色が生えたんだ。
染めているのか?
目を引いた2人の内、赤茶色の女が、僕の方へ近寄って来て、林檎を手渡してきた。
この林檎はね、酸っぱいんだよ。
赤い割にはね。
彼女も他の国から来たんだろう。
行商人の家族か。
まさか、アスデン王国やコーリオ王国の兵ではないだろうから。
目を細めて嬉しそうにその林檎を食べていたな。
だから、僕も釣られて食べてみたんだけど。
ほら。
酸っぱい。
ペテロの6日
ヘールベータ地区の家にて
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