29 / 113
第2章 竜の血を持つ者
ガランダゥにおいて(for three days)
しおりを挟む
まだ夜空に星が浮かんでいる時、僕らは、サンクトペーテルグを離れた。
僕はまだ、鎧を纏ってはいない。
支援者2人が、僕の鎧とこの後着る予定のドメイル教徒の外套を持っている。
しばらく行った礼拝堂にて、用意されていた馬に乗り、荒地を駆けていった。
そして、岩場が多く、視界が悪くなった所で、巨大な獣の骨組みの中を通り、大空洞へと入っていく。
あの大きな獣は、何だ。
竜ではなさそうだった。
ブルーシーズは、すぐ様竜へと変わらず、僕が初めて会った2人を紹介した。
1人は、マーティス王国の元弓兵、
もう1人は、元ドメイル教徒だ。
2人共に、ドメイル教団により家族が犠牲になり、復讐を誓っている。
寝返った者は、信用できるのか、と思ったが。
彼ら2人で、ドメイル教徒を襲撃し、この外套を剥ぎ取っている。
後には引けない、と言った。
信用できるのなら、ドメイル教根絶のために、元ドメイル教徒とは、ありがたい存在だろうか。
もし、裏切られるのなら、その計画を練られているのなら、僕らを待つのは、死だ。
ダマズル司教を討つために、危険を犯したな。
そこまで、する理由は、あるんだろうな。
そして、それを僕に、まだはっきりと言わないでいる。
そうだろう。
ニハトの25日
大空洞の中にて
___________________
白灰千王竜に姿を変え、僕ら3人を乗せる。
大きな大空洞は、竜のままでも、悠々飛行できた。
視界は、暗くあまり良いとは言えないが。
日は上り、そして傾き始めた、その頃、大空洞の向こう側、デンパルネード王国領まで辿り着いた。
再び人に姿を変えたブルーシーズは、僕と共にドメイル教徒の外套を着た。
ブルーシーズの目は、感情を失ってしまったかの様に、冷たい目をしている。
これは、決意の表れだろうか。
僕らは、近くのアパという街へ行き、馬を手配し、そのままそこで宿を取った。
この街には、ドメイル教徒が見える。
ただ、10人にも満たないくらいだ。
石造りの建物が多く、道は非常に狭い。
瞳の色が白い者がいるが、その者はほぼドメイル教徒の外套を纏っている。
何故か、圧力を感じるな。
ニハトの26日
アパ街の宿にて
___________________
日が地平線から顔を覗かせる頃、デンパルネード王国首都ガランダゥへ向かい始めた。
岩山の上にある黒い教会が建っている。
それは、幾つか目に入った。
心の色を、表しでもしたのか。
手入れのされていない渓谷の橋を渡り、山道を越えると、見えてきた。
高い壁が広く並び、そこに矢狭間が無数にある。街自体は外から見えず、大きな岩山の様にも見える。
ここが、デンパルネード王国の首都、ガランダゥだった。
門の入り口で、番兵の荷物チェックが入ったが、元ドメイル教徒が持っていた僕の鎧は、いとも簡単に通過した。
ドメイル教徒は、選民思想だから、ウイプル兵を殺した英雄から、譲り受けたもの、と言えば、どうにかなるものだ、と言った。
神から選ばれし、民という事だろうか。
王都の中は、質素な石造りの建物ばかりで、入り口にドメイル教らしき紋章が彫られている。
街中は、墓場の様に静まり返っている。
他所から来た者が目に入るが、何やら雰囲気が違う。
ドメイル教へ本格的に入信するためにでも来たのだろうか。
宿は、元ドメイル教徒が手配してくれていたらしい。
この後、ブルーシーズから計画の詳細を訊く事になる。
ダマズル司教を討つ事が、ドメイル教の衰退に繋がれば、それは僕にとっても願ってもいない事だ。
聖戦で得た血を以って、砕けた魂を修復して、腐神皇アーデを復活させるという話。
ウイプルをやってくれたな。
今は、故郷とは言えないのかも知れない。
だが、敵は討たせてもらう。
ドメイル教の滅びへの手始めだ。
ニハトの27日
首都ガランダゥの宿にて
___________________
僕はまだ、鎧を纏ってはいない。
支援者2人が、僕の鎧とこの後着る予定のドメイル教徒の外套を持っている。
しばらく行った礼拝堂にて、用意されていた馬に乗り、荒地を駆けていった。
そして、岩場が多く、視界が悪くなった所で、巨大な獣の骨組みの中を通り、大空洞へと入っていく。
あの大きな獣は、何だ。
竜ではなさそうだった。
ブルーシーズは、すぐ様竜へと変わらず、僕が初めて会った2人を紹介した。
1人は、マーティス王国の元弓兵、
もう1人は、元ドメイル教徒だ。
2人共に、ドメイル教団により家族が犠牲になり、復讐を誓っている。
寝返った者は、信用できるのか、と思ったが。
彼ら2人で、ドメイル教徒を襲撃し、この外套を剥ぎ取っている。
後には引けない、と言った。
信用できるのなら、ドメイル教根絶のために、元ドメイル教徒とは、ありがたい存在だろうか。
もし、裏切られるのなら、その計画を練られているのなら、僕らを待つのは、死だ。
ダマズル司教を討つために、危険を犯したな。
そこまで、する理由は、あるんだろうな。
そして、それを僕に、まだはっきりと言わないでいる。
そうだろう。
ニハトの25日
大空洞の中にて
___________________
白灰千王竜に姿を変え、僕ら3人を乗せる。
大きな大空洞は、竜のままでも、悠々飛行できた。
視界は、暗くあまり良いとは言えないが。
日は上り、そして傾き始めた、その頃、大空洞の向こう側、デンパルネード王国領まで辿り着いた。
再び人に姿を変えたブルーシーズは、僕と共にドメイル教徒の外套を着た。
ブルーシーズの目は、感情を失ってしまったかの様に、冷たい目をしている。
これは、決意の表れだろうか。
僕らは、近くのアパという街へ行き、馬を手配し、そのままそこで宿を取った。
この街には、ドメイル教徒が見える。
ただ、10人にも満たないくらいだ。
石造りの建物が多く、道は非常に狭い。
瞳の色が白い者がいるが、その者はほぼドメイル教徒の外套を纏っている。
何故か、圧力を感じるな。
ニハトの26日
アパ街の宿にて
___________________
日が地平線から顔を覗かせる頃、デンパルネード王国首都ガランダゥへ向かい始めた。
岩山の上にある黒い教会が建っている。
それは、幾つか目に入った。
心の色を、表しでもしたのか。
手入れのされていない渓谷の橋を渡り、山道を越えると、見えてきた。
高い壁が広く並び、そこに矢狭間が無数にある。街自体は外から見えず、大きな岩山の様にも見える。
ここが、デンパルネード王国の首都、ガランダゥだった。
門の入り口で、番兵の荷物チェックが入ったが、元ドメイル教徒が持っていた僕の鎧は、いとも簡単に通過した。
ドメイル教徒は、選民思想だから、ウイプル兵を殺した英雄から、譲り受けたもの、と言えば、どうにかなるものだ、と言った。
神から選ばれし、民という事だろうか。
王都の中は、質素な石造りの建物ばかりで、入り口にドメイル教らしき紋章が彫られている。
街中は、墓場の様に静まり返っている。
他所から来た者が目に入るが、何やら雰囲気が違う。
ドメイル教へ本格的に入信するためにでも来たのだろうか。
宿は、元ドメイル教徒が手配してくれていたらしい。
この後、ブルーシーズから計画の詳細を訊く事になる。
ダマズル司教を討つ事が、ドメイル教の衰退に繋がれば、それは僕にとっても願ってもいない事だ。
聖戦で得た血を以って、砕けた魂を修復して、腐神皇アーデを復活させるという話。
ウイプルをやってくれたな。
今は、故郷とは言えないのかも知れない。
だが、敵は討たせてもらう。
ドメイル教の滅びへの手始めだ。
ニハトの27日
首都ガランダゥの宿にて
___________________
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる