剣士アスカ・グリーンディの日記

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第2章 竜の血を持つ者

ガランダゥにおいて(for three days)

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まだ夜空に星が浮かんでいる時、僕らは、サンクトペーテルグを離れた。

僕はまだ、鎧を纏ってはいない。

支援者2人が、僕の鎧とこの後着る予定のドメイル教徒の外套を持っている。

しばらく行った礼拝堂にて、用意されていた馬に乗り、荒地を駆けていった。

そして、岩場が多く、視界が悪くなった所で、巨大な獣の骨組みの中を通り、大空洞へと入っていく。

あの大きな獣は、何だ。

竜ではなさそうだった。

ブルーシーズは、すぐ様竜へと変わらず、僕が初めて会った2人を紹介した。

1人は、マーティス王国の元弓兵、

もう1人は、元ドメイル教徒だ。

2人共に、ドメイル教団により家族が犠牲になり、復讐を誓っている。

寝返った者は、信用できるのか、と思ったが。

彼ら2人で、ドメイル教徒を襲撃し、この外套を剥ぎ取っている。

後には引けない、と言った。

信用できるのなら、ドメイル教根絶のために、元ドメイル教徒とは、ありがたい存在だろうか。

もし、裏切られるのなら、その計画を練られているのなら、僕らを待つのは、死だ。

ダマズル司教を討つために、危険を犯したな。

そこまで、する理由は、あるんだろうな。

そして、それを僕に、まだはっきりと言わないでいる。

そうだろう。



ニハトの25日
           大空洞の中にて
___________________

白灰千王竜ホローエヴァルドドラゴンに姿を変え、僕ら3人を乗せる。

大きな大空洞は、竜のままでも、悠々飛行できた。

視界は、暗くあまり良いとは言えないが。

日は上り、そして傾き始めた、その頃、大空洞の向こう側、デンパルネード王国領まで辿り着いた。

再び人に姿を変えたブルーシーズは、僕と共にドメイル教徒の外套を着た。

ブルーシーズの目は、感情を失ってしまったかの様に、冷たい目をしている。

これは、決意の表れだろうか。



僕らは、近くのアパという街へ行き、馬を手配し、そのままそこで宿を取った。

この街には、ドメイル教徒が見える。

ただ、10人にも満たないくらいだ。

石造りの建物が多く、道は非常に狭い。

瞳の色が白い者がいるが、その者はほぼドメイル教徒の外套を纏っている。

何故か、圧力を感じるな。



ニハトの26日
           アパ街の宿にて
___________________

日が地平線から顔を覗かせる頃、デンパルネード王国首都ガランダゥへ向かい始めた。

岩山の上にある黒い教会が建っている。

それは、幾つか目に入った。

心の色を、表しでもしたのか。



手入れのされていない渓谷の橋を渡り、山道を越えると、見えてきた。

高い壁が広く並び、そこに矢狭間が無数にある。街自体は外から見えず、大きな岩山の様にも見える。


ここが、デンパルネード王国の首都、ガランダゥだった。



門の入り口で、番兵の荷物チェックが入ったが、元ドメイル教徒が持っていた僕の鎧は、いとも簡単に通過した。

ドメイル教徒は、選民思想だから、ウイプル兵を殺した英雄から、譲り受けたもの、と言えば、どうにかなるものだ、と言った。

神から選ばれし、民という事だろうか。

王都の中は、質素な石造りの建物ばかりで、入り口にドメイル教らしき紋章が彫られている。

街中は、墓場の様に静まり返っている。

他所から来た者が目に入るが、何やら雰囲気が違う。

ドメイル教へ本格的に入信するためにでも来たのだろうか。

宿は、元ドメイル教徒が手配してくれていたらしい。

この後、ブルーシーズから計画の詳細を訊く事になる。

ダマズル司教を討つ事が、ドメイル教の衰退に繋がれば、それは僕にとっても願ってもいない事だ。

聖戦で得た血を以って、砕けた魂を修復して、腐神皇アーデを復活させるという話。

ウイプルをやってくれたな。

今は、故郷とは言えないのかも知れない。

だが、敵は討たせてもらう。

ドメイル教の滅びへの手始めだ。



ニハトの27日
           首都ガランダゥの宿にて
___________________
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