剣士アスカ・グリーンディの日記

sayure

文字の大きさ
上 下
26 / 113
第2章 竜の血を持つ者

ブルーシーズの計画(for three days)

しおりを挟む
このサンクトペーテルグの海沿いに色々な物を扱った市場がある。

旅人も剣を持つ。外来の者も、剣の持ち込みを許されているのだ。

街の番人は、街中を歩けばよく見かける。だから、治安に対しては軽薄という訳ではないだろうけど。

市場に、ドメイル教の経典が売られていた。

こういう邪教の経典は、他の宗教の内容をなぞり、超常的存在より示される人道の在り方を書かれている様に見せるが、その中に、強欲にまみれた道義に反する文言を加え、洗脳し、意のままに操るのだ。

僕は、この経典を売る商人に、ドメイル教とは?と訊いてみたが。

彼は、新世界への祈り、と答えた。

新世界への、

祈りか。

絶望への、呪いじゃないのか。 

僕は、銀貨3枚ほど掌に乗せ、その経典を買おうとしたが。

商人の目つきが変わり、何処の出身かと訊かれた。

この通貨は、ウイプル王国含むその周辺国7ヵ国の共通通貨だ。

こいつは、ただの商人ではないな。

けれど、期待した反応なのかも知れない。

僕の服装は、身を明かす様な鎧ではなく、白い絹の衣服をまとっているから、僕が何処の国の者か分からないだろう。

この者が、邪教徒で、戦いにも出る様な者ならば、知らしめてやらなければならない。

お前達の、思い通りには、行かない事を。

でも、



この街は、ブルーシーズが安息の地として、お母様から受けたもの。



無駄な争いは、彼の居場所を奪う事になる。



僕は、



この珍しい銀貨と、交換しないか、と。



そう言った。



価値はないよ、と言われてしまった。



そうか。



お前達の信仰する、ドメイル教より、価値のないものなど、存在しないと、思っていたよ。



いつかの13日
           サンクトペーテルグの家にて
___________________

ブルーシーズは、地下の大空洞を通り、邪教国本山の聖オルディール王国の隣国、デンパルネード王国まで辿り着き、ダマズル司教殺害という目標を持っていた。

この前に、訊いた者の名前ではなかった。

北の大陸スキューエルハにあるウルヘイド王国ヴィルアズ王の殺害は、最優先ではなさそうだ。

世のためか。

竜族のためか。

君の事だ、私利私欲のためとは、思えない。

君は、優しい。

でも、揺るがない意思があるのなら、それに従おう。

僕に、新たな道があるのなら、それを選ぶのも、悪くはないだろう。



この街で、暦を確認した。

今月は、ニハトというらしい。



ニハトの17日
           サンクトペーテルグの家にて
___________________

地下の大空洞は、このサンクトペーテルグの街を東へ出て、アルガント峡谷の滝下から入るらしい。

彼は、竜に戻り、僕はそれに乗る。

デンパルネード王国へ抜けると、ブルーシーズは再び人へと姿を変え、アパ街へ向かう。

馬を調達し、デンパルネード王国首都ガランダゥへ向かい、ドメイル教の集会へ参加し、そこでダマズル司教を殺害する。

ここに至るまで、邪教徒に恨みを持つ者達の協力があるという。

ドメイル教に一矢報いる事ができるのなら、僕にとっても、悪くはない。



ニハトの18日
           サンクトペーテルグの家にて
___________________

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

処理中です...