剣士アスカ・グリーンディの日記

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第2章 竜の血を持つ者

灯らない街(for three days)

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ブルーシーズは、少し冷ややかな表情をしていた。

僕が、ウイプルに戻ろうとしている事を見透かしていたんだ。

帰りたいのなら、帰ればいい、と。

そう言って、僕に食事を置いて、立ち去ろうとした。

ただ一度、ウイプルの状況を見たいんだ、と言ったが。

好きにすればいい、と。

ブルーシーズ、君は。

育った場所が、ウイプル王国じゃないからって。

その言い方は、気に入らない。



亜土歌あどかの29日
             岩山の部屋にて
___________________

ブルーシーズは、岩山の外で吠え、僕を呼んだ。白銅はくどう色の翼竜、白灰千王竜ホローエヴァルドドラゴンに戻っていた。

その眼光は、幾千の戦いを繰り広げてきた様な輝きを放つ。

思わず、固唾を飲んだ。

僕は、ブルーシーズが背中に乗れと促してきたので、それに従い、乗った。

彼の恩を、仇で返している様な気がして、とても悪い事をしてるかの様。

でも、僕は自分の心に従う様にして、彼と共に、ウイプルに向かったんだ。

優雅に飛行するブルーシーズ、ウイプルまでは一瞬の様にも感じた。

日が大きく傾き、赤く染まっている。

ウイプル王都の近郊の草原に僕を降ろすと、ブルーシーズは、何も言わず、飛び去っていった。

ありがとう、ブルーシーズ。

君への恩は、必ず返そう。



亜土歌の30日
           ウイプル王都近郊のウルーハ草原にて
___________________

日が沈み、辺りが静まり返る。

夜空に浮かんだ、月と。

そして、たくさんの星。

いつもは、王都から溢れる光、

でも、何処にも見当たらない。

まるで、墓場みたいに。

暗くて、死んでいるかの様に、

感じた。

王都の外壁の一部が破壊され、そこに番兵の1人でも立たせてはいない。

懐かしい、街並み。

そのはずなのに。

僕の知っている街じゃ、

ないみたいだ。

傷を負う建物が多くて、見ていられない。

この街が戦場となっただろう痕跡が、至る所にあった。

聖バハールの再度の侵攻が、あったのだろうか。

みんなは、ダルレアス自治領に避難して、まだ戻っていないんだろう、と。

思ったけど、ここから見える自治領にも、明かりは灯ってはいない。

その場に行ってみないと、わからないから、と。

そうだよ、と。

思ったけど。



でも、

もういい。



もう、絶望は、うんざりだ。

絶望か。

僕は、ウイプルを、まだ味方として見ているんだ。



当たり前だ。



僕の、育った場所。



ウイプル。



いつかの1日
           僕の部屋にて
___________________
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