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人魔大戦:その後
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魔神が去った。
残っていた魔物も消えた。
それで、終わりだった。
なんともあっけない終わり方だ。
魔物たちの損害は魔王と、多少の魔物。
僕たちは戦士団ほぼ全員を失っていた。
魔神が目を向けた直後。
僕達をして膝が笑うほどの殺気。
戦士団はショックで心臓を止めてしまうものが続出した。
僕達は彼らを丁寧に荼毘に返し、地に埋めた。
更に、最後。
魔神の言葉に従うように体が動かなくなった。
あれは、何だろうか。
僕の知らない魔法か。
いや、知らないわけがない。
使ったことのない魔法だ。
大方、闇魔法あたりだろう。
だが、本当にそうだろうか。
闇魔法は、それだけ実力差がなければレジストできる。
全く体の自由が利かなくなるほどなら、一・五倍、いや、二倍は想像したほうが良いな。
それだけ実力差がある相手なら、勝ちは絶望的だ。
…やりたくないが、これしかない。
魔物の肉を食べる強化方法。
体には激痛が走るし、吐き気もする。
世界は回るし、ステータスは上がってもやりたくない。
でも、しょうがない。
ストックしてある魔物の肉を取り出す。
何種類かを、一気に口に含む。
瞬間、今までとは比べ物にならないレベルの激痛が走った。
拷問にでも掛けられているかのような痛み。
四肢の端から斬り刻まれるような激烈な痛み。
マグマにでも浸っているかのような熱さが体を蹂躙し、同時に絶対零度の中にでもいるような寒さに襲われる。
体が内部から作り変えられるような音がする。
直接脳内に響くように心臓が鳴り、息が荒くなる。
いつもなら数分で治る痛みは尚激しく、身体を内側から叩く。
いつの間にかカンストまであと一歩のところまで来ていた回復魔法を掛け続ける。
それでも気持ちましになったくらいだ。
声すらも出ないほどの苦痛が続く。
数十分程、床に落ちて転がりまわっていただろうか。
いつしか痛みはなくなった。
スキルも相当数獲得した。
ステータスはだいぶ伸びたし、ある程度は実力の差も縮まっただろう。
それで、勝てるのか。
魔神の殺気を思い出す。
目を向けられただけで動けなくなりそうなほどの、激烈な殺気。
本気であの殺気を向けられて、耐えられるのか。
耐えられたとして、そんな状態で戦闘できるのか。
できるわけがない。
なら、どうするか。
磨き上げるしかないだろう。
魔神は一週間後、今回以上の魔物の軍勢を引き連れてやってくると言った。
まだ、間に合う。
いや、間に合わせなきゃならない。
多くの人が死ぬくらいなら、自分の身体を削ってでも。
魂ごと、消滅したって構わない。
僕は、守らなきゃいけないんだ。
そのぐらい、出来て当然だ。
出来なきゃ、ダメだろう。
早希の手を掴んで、外に出る。
「えっ、ユウ…?」
「早希、もう、時間がない。少し、無茶をする。僕の自己満足のためで、早希が付き合う必要はない。それでも、付き合ってくれるなら、来て欲しい。僕は、君がいないとダメだ。」
「っ…その言い方はずるい…」
そう言って、早希は少しむくれたように僕を見てからはにかんだように笑った。
「私も、ユウと一緒が良い。」
こうして、僕と早希の、世界をかけた一週間が始まった。
残っていた魔物も消えた。
それで、終わりだった。
なんともあっけない終わり方だ。
魔物たちの損害は魔王と、多少の魔物。
僕たちは戦士団ほぼ全員を失っていた。
魔神が目を向けた直後。
僕達をして膝が笑うほどの殺気。
戦士団はショックで心臓を止めてしまうものが続出した。
僕達は彼らを丁寧に荼毘に返し、地に埋めた。
更に、最後。
魔神の言葉に従うように体が動かなくなった。
あれは、何だろうか。
僕の知らない魔法か。
いや、知らないわけがない。
使ったことのない魔法だ。
大方、闇魔法あたりだろう。
だが、本当にそうだろうか。
闇魔法は、それだけ実力差がなければレジストできる。
全く体の自由が利かなくなるほどなら、一・五倍、いや、二倍は想像したほうが良いな。
それだけ実力差がある相手なら、勝ちは絶望的だ。
…やりたくないが、これしかない。
魔物の肉を食べる強化方法。
体には激痛が走るし、吐き気もする。
世界は回るし、ステータスは上がってもやりたくない。
でも、しょうがない。
ストックしてある魔物の肉を取り出す。
何種類かを、一気に口に含む。
瞬間、今までとは比べ物にならないレベルの激痛が走った。
拷問にでも掛けられているかのような痛み。
四肢の端から斬り刻まれるような激烈な痛み。
マグマにでも浸っているかのような熱さが体を蹂躙し、同時に絶対零度の中にでもいるような寒さに襲われる。
体が内部から作り変えられるような音がする。
直接脳内に響くように心臓が鳴り、息が荒くなる。
いつもなら数分で治る痛みは尚激しく、身体を内側から叩く。
いつの間にかカンストまであと一歩のところまで来ていた回復魔法を掛け続ける。
それでも気持ちましになったくらいだ。
声すらも出ないほどの苦痛が続く。
数十分程、床に落ちて転がりまわっていただろうか。
いつしか痛みはなくなった。
スキルも相当数獲得した。
ステータスはだいぶ伸びたし、ある程度は実力の差も縮まっただろう。
それで、勝てるのか。
魔神の殺気を思い出す。
目を向けられただけで動けなくなりそうなほどの、激烈な殺気。
本気であの殺気を向けられて、耐えられるのか。
耐えられたとして、そんな状態で戦闘できるのか。
できるわけがない。
なら、どうするか。
磨き上げるしかないだろう。
魔神は一週間後、今回以上の魔物の軍勢を引き連れてやってくると言った。
まだ、間に合う。
いや、間に合わせなきゃならない。
多くの人が死ぬくらいなら、自分の身体を削ってでも。
魂ごと、消滅したって構わない。
僕は、守らなきゃいけないんだ。
そのぐらい、出来て当然だ。
出来なきゃ、ダメだろう。
早希の手を掴んで、外に出る。
「えっ、ユウ…?」
「早希、もう、時間がない。少し、無茶をする。僕の自己満足のためで、早希が付き合う必要はない。それでも、付き合ってくれるなら、来て欲しい。僕は、君がいないとダメだ。」
「っ…その言い方はずるい…」
そう言って、早希は少しむくれたように僕を見てからはにかんだように笑った。
「私も、ユウと一緒が良い。」
こうして、僕と早希の、世界をかけた一週間が始まった。
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