上 下
34 / 139

闘技大会:悠一郎

しおりを挟む
僕は闘技場の舞台に立っている。
対戦相手は短剣を装備した魔法使いのような身なりをした男。
準々決勝まで上がってきているし、相当な実力者なのだろう。
考えられることは魔法の展開速度が桁違いか、魔力が桁違いか。
短剣が何か特別な能力を持っているのか、短剣主体の戦闘なのか。
はたまた短剣は見せかけで、超接近戦闘に持っていけば拳闘士に化けるのか。
あるいはその全てか。
まぁ、何が来ても関係ない。無傷の完勝を目指して頑張っちゃおうかな。
対戦始めの合図が鳴る。
直後、炎の竜巻が吹き荒れた。
炎だけかと思いきや、風の刃も混じっている。
その巨大な魔法は殲滅魔法レベル。
きっとこれで苦もなく勝ってきたんだろう。
でも僕には通用しないから覚悟してね?
僕も魔法を生み出す。
生み出すのは光の嵐。
炎の竜巻を軽く凌駕する光の嵐は闘技場の床を削り、しかし、闘技場に張ってある観客席と舞台の間の障壁は破壊しない。
自分の最大の魔法を破られたのか、男は呆然としている。
それは致命の隙。
短剣を創り出し、斬りかかる。
その短剣はギリギリ反応を示した男の短剣とぶつかり、甲高い音を響かせる。
男の周囲に幾つも火球が浮かび、全てが僕に殺到する。
その全てを魔力攻撃で相殺し、一瞬の距離を詰めようとして
「ッ!」
全力で障壁を展開した。
障壁に光系魔法最上級の極光が叩きつけられる。
絶大な威力と滅びの光に障壁が端から削り取られていく。
その度に修復仕直し、擦りすらしないように注意する。
極光…見た目はレーザーだが、効果はレーザーのそれよりも強大だ。
触れたものを尽く滅ぼし、塵に還す能力を持つ。
だが、強力故に膨大な魔力が必要でしかも制御が容易ではなく暴発してしまうことが多々ある。
それをほぼノータイムで発動…なかなかやるじゃないか。
でも、もう魔力はないでしょ。
ここからは刀神の面目躍如だ。
右手に刀を作り出す。
地面を踏み割りながら残像を引き連れて移動する。
大上段から刀を振り下ろす。
が、それは短剣で受け止められてしまう。
それどころか短剣から衝撃波が発生し、強制的に距離を取らされてしまう。
やっぱりなんかあるな。
まぁ、衝撃変換でもあるんなら当てなければいい。
足元に滑り込み、膝を蹴りつける。
両手で地面を叩き割って下から顎を蹴り上げる。
顎を跳ね上げられた男は綺麗に後方四回転し地面にドシャリと落ちる。
その首に剣を突きつけ、チェックメイト。
試合終了だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あれ?なんでこうなった?

志位斗 茂家波
ファンタジー
 ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。  …‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!! そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。 ‥‥‥あれ?なんでこうなった?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る

恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。 父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。 5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。 基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...