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迷宮潜り込み生活:二日目-希少種との遭遇

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閉じた瞼の隙間から覗いた朝の光に意識が夢の世界から引き上げられる。
「あ…あぁ…」
と、欠伸をしながら腕を上げたところで優里と美奈代の姿が無いことに気づいた。
きっと先に起きているんだろう。
四つん這いになりながらテントを出て、もう誰もいないので倉庫にしまった。
案の定、優里も美奈代もいて、早希も居た。
「おはよう。」
「あぁ、悠一郎。おはよう。」
「ん…ユウ。おはよう。」
「お、悠一郎。おはよう。」
「もう朝ご飯は食べた?」
「いや、今から準備だよ。」
それはちょうど良かった。
「じゃあ、僕もご一緒させてもらおうか。」
「わかった。じゃあ材料取ってきて貰おうか。」
「あ、材料は無いんだね。」
「まぁ、ね。えー、材料はグリーンベア一頭とルコラの実を一つ、それとそこの川で釣れる樹海イワシを三十匹ぐらい。」
「おぉう…かなりハードじゃない?樹海イワシ三十匹は特に。」
「まぁまぁ、頑張って。宗谷も後で向かわせるよ。」
「わかった。行ってくるよ。」
姿を掻き消しながら移動する。
グリーンベアはその名の通り緑の熊だ。
3階層に生息している。
途中でルコラの実を見つけたからもぎ取っていく。
ルコラの実は酒の元になる実で、このままで食べると一発で昏睡に陥るような物だ。
なんでこんな物がいるかというと、グリーンベアの肉と一緒に煮込むためだ。
グリーンベアの肉は硬い。
そこで、ルコラの実を使って煮込むとその硬さを解消できる。
酒を使うことで硬さを無くし、ある程度の下味もつけられる。
ただ、酒と肉の旨みある程度はスープの方に流れ出る。
でも、ルコラの実はいささか味が強いのでそうするとスープもちょうど良いぐらいに仕上がる。
で、残りの樹海イワシはなにに使うんだろうか。
魚ベースのスープなんだろうか…
合うかどうかは知らないけど、美奈代と優里のことだ。きっと大丈夫。
早希はわからないけど大丈夫。
多分。
おっと、グリーンベア発見…っと、希少種か…?
希少種っていうのは、なんか知らんけどキラキラ光ってて、通常種より強くて、美味しい。
経験値的にもお肉的にも。
そんなわけで希少種との遭遇は非常に運がいい。
って事でいただきます。
豪脚を使って一時的に脚力を強化。更に魔力循環と魔衝波を乗せて一撃で叩き潰しにいく。
脚が深緑の魔力に染まり、グリーンベアの頭に迫る。
グリーンベアは避けようとしたみたいだけど逃がすわけがない。
側頭部から頭を刈り取って脚の強化を解く。
木に吊るして血抜きをする。
充分にできたところで倉庫にしまい、道を戻っていく。
まだイワシも釣らなきゃいけないんだよね…
あぁ、なにも釣らなくてもいいか。
ここで戻ってきたので上半身の服をパッと脱ぎ、ズボンの裾を捲る。
水は澄んでいて、底が見えるほど。
もちろん魚もいる。
さて、乱獲開始だ。
純粋魔力武器作成で網を作る。
武器じゃないじゃんとか思うかもしれないけどうまく使えばかなり強い。
で、その網にちょっとだけ攻撃力をもたせる。
それで魚を捕っていく。
捕った魚は端から死んでいく。
死んだ魚は倉庫に入れ、三十匹まで捕っていく。
物凄い勢いで魚が捕り終わった。
やっと材料が揃った。
さて、宗谷の分は僕が食べてあげるとしようか。
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