9 / 13
第2話 5※
しおりを挟む
杉本が拓海の蕾に男根の先を押し当てる。蜜を絡めとるように数度擦り付けてから、ゆっくりと杉本は拓海のナカに入ってきた。
「挿れるね」
「んっ……あぁ……!」
「……うっ」
アルファである拓海の身体は本来、雄の象徴を受け入れるようにはできていない。しかし、殊の外あっさりと質量感のあるソレを受け入れてしまった。
灼けるように熱い肉棒でずんっと腹の最奥を突かれると、内臓が経験したことのない鈍痛に襲われる。覆い被さる杉本の瞳はまるで獲物を捉えた獣のように荒々しく、拓海は思わず身震いした。この行為に拓海が想像していた甘い雰囲気など一切なかった。
「お、くっ……いきな、り……」
丁寧な前戯がまるで幻想だったのかと錯覚する。性急な挿入に対して抗議の言葉を口にすると杉本は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「悪いけど、余裕ない……ごめん……」
そういうと杉本は容赦なく腰を打ち付け始める。
「いッ……つ……」
腹の中を掻き回される痛みに耐えきれず身を捩って上に這いあがろうとすると、すぐに引き戻され腕の中に閉じ込められた。
「逃げないで……」
縋るように杉本は拓海を抱きしめていた腕に力が入る。退路をたたれてしまった今、痛みに耐えるしかない。しかし、人間の順応性とはすごいものでその痛みは次第に快感へと変化していった。
トントンと奥を突かれる度に漏れていた呻き声は、次第に高く甘い嬌声へと変わる。
「ん……あぁッ……」
「くッ……」
一度目の射精を終えた杉本は、硬さを保ったままの男根をゆっくり引き抜いた。それと同時に彼が放った夥しい量の精液がぐぷりと後孔から溢れる。しかし、そんなことはお構いなしに拓海の身体をいとも簡単にひっくり返した杉本は、再び拓海のナカへ押し入ってきた。
「ま、って……」
拓海の言葉は杉本には届いていないようだった。ハッ、ハッと浅い呼吸音が鼓膜を揺する。処女である目の前のオメガを手酷く抱いてはならないと、僅かに残っていた理性は完全に消え果てたようだ。
オメガの発情期のフェロモンは、アルファの性欲を刺激する。『運命の番』のフェロモンとなればなおさらのことだ。どんなに意志の強いアルファでも抗うことなど出来ず、たちまち虜にしてしまう極上の媚薬だ。今の杉本がラットを引き起こしているのは火を見るより明らかであった。
通常、ラットを引き起こしたアルファは、強いアルファ用の抑制剤を投与するか、熱を発散し切ることで理性を取り戻すことができる。しかし、現状、アルファ用の抑制剤を杉本に投与することは不可能だ。拓海はひたすら彼から与えられるとめどない快感に耐えるしか選択肢は残っていなかった。
無防備に曝け出された頸に、杉本の熱い吐息と柔らかな唇が這う。
「ふ、あっ……んっ」
――支配される。
その感覚は、これまでは比べものにならない快感となって拓海を襲った。思わず逃げ腰になり身を捩るが、杉本はそれを許してくれなかった。
同じくアルファであると言うのに、拓海はすっぽりと杉本の腕の中に閉じ込められてしまった。触れ合った場所は灼けるように熱く、溶かされてしまうのではないかとすら錯覚する。
「俺の……俺の、運命……」
「い、っ……ぅんっ」
杉本がうわ言のように呟いたその瞬間。項に激痛が走り、叫びそうになるのをどうにか耐えた。鋭い犬歯に食い破られた皮膚から、粘度の高い液体が首筋を伝ってきた。シーツに咲いた小さな赤い花が目の端に映り拓海は、ソレが唾液の混じった血液であること理解する。
――頸を噛まれた……?
痛みを知覚すると、拓海の身体は高揚感に震えた。それはアルファであるはずの拓海が本来味わうはずのない感覚だった。しかし、ほとんど理性を飛ばしかけていた拓海はその違和感にすら気が付かなかった。
「誰にも奪わせない……」
杉本が暗示をかけるように拓海の耳元で低く囁いた。それと同時に彼から濃いフェロモンが放出され、呼吸をする度に拓海の肺が満たされる。拓海は僅かに残った理性を手放すまいと必死に耐える。蕩け切った脳味噌で不用意な発言をするまいと、唇を強く噛み締めた。
「そんなに強く噛んだら、傷ついてしまう。力を抜いて……」
しかし、拓海の無駄な抵抗はすぐに杉本にバレてしまった。唇をゆっくりと撫でながら甘い声で囁かれる。
「んんっ……」
「ほら、いい子。愛しい俺の番……君の声を聞かせてくれるかい……」
必死の抵抗でイヤイヤと首を横に振ると、杉本の行動はエスカレートする。耳の淵に唇の這わせながら、聞き分けの悪い子供に諭すような口調。拓海の意思に反して強張った身体は弛緩した。
固く結んでいた唇が僅かに開くと、杉本はすかさず抽挿のスピードを上げる。彼の剛直が最奥とトントンとノックすると拓海の口からは甘い嬌声が溢れた。
「ん、ああっ……ダメ……っ」
「嫌だ……! 拒絶しないでくれッ」
拓海の言葉を拒絶と捉えた杉本は不安を掻き消すように、グズグズに解けた蕾を攻め立てながら、何度も頸を噛む。激しい抽挿で、腹に残っていた精液が拓海の陰嚢の裏を伝ってシーツにパタパタと落ちた。
「ぅん、あ……はや、いぃ……」
「頼む……お願い、だから……」
拓海の背中に杉本が縋る。今の彼にとって拒否の言葉が最大の禁句であることを思い出す。どうにか、安心させようとシーツを握りしめていた手を緩め、頭の後ろに伸ばす。指先が杉本の頬に触れる。
拓海の言葉が拒絶ではないと気づいた杉本は、頸から唇を離した。拓海が振り向くと、視線が絡む。
「俺の番……」
「うん」
拓海が頷くと杉本は嬉しそうに目を細め唇を合わせてきた。熱を帯びた舌が唇を割って入ってきたから、拓海もそれに応えるように舌を絡ませる。
「ん……ふ、ぁ……」
口の端をどちらのとも分からなない唾液が伝っていることなど気に留める暇もない、貪り合うようなキスだった。
拓海の僅かに残っていた意識は完全に溶けて、ベッドの海に沈む。杉本は、再び拓海の頸に牙を突き立てる。今度は、自分のモノであるという証を刻みつけるように念入りな動作だった。
「愛してる……」
意識が途切れる寸前、杉本の放った言葉は拓海の罪悪感を更に大きくした。
「挿れるね」
「んっ……あぁ……!」
「……うっ」
アルファである拓海の身体は本来、雄の象徴を受け入れるようにはできていない。しかし、殊の外あっさりと質量感のあるソレを受け入れてしまった。
灼けるように熱い肉棒でずんっと腹の最奥を突かれると、内臓が経験したことのない鈍痛に襲われる。覆い被さる杉本の瞳はまるで獲物を捉えた獣のように荒々しく、拓海は思わず身震いした。この行為に拓海が想像していた甘い雰囲気など一切なかった。
「お、くっ……いきな、り……」
丁寧な前戯がまるで幻想だったのかと錯覚する。性急な挿入に対して抗議の言葉を口にすると杉本は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「悪いけど、余裕ない……ごめん……」
そういうと杉本は容赦なく腰を打ち付け始める。
「いッ……つ……」
腹の中を掻き回される痛みに耐えきれず身を捩って上に這いあがろうとすると、すぐに引き戻され腕の中に閉じ込められた。
「逃げないで……」
縋るように杉本は拓海を抱きしめていた腕に力が入る。退路をたたれてしまった今、痛みに耐えるしかない。しかし、人間の順応性とはすごいものでその痛みは次第に快感へと変化していった。
トントンと奥を突かれる度に漏れていた呻き声は、次第に高く甘い嬌声へと変わる。
「ん……あぁッ……」
「くッ……」
一度目の射精を終えた杉本は、硬さを保ったままの男根をゆっくり引き抜いた。それと同時に彼が放った夥しい量の精液がぐぷりと後孔から溢れる。しかし、そんなことはお構いなしに拓海の身体をいとも簡単にひっくり返した杉本は、再び拓海のナカへ押し入ってきた。
「ま、って……」
拓海の言葉は杉本には届いていないようだった。ハッ、ハッと浅い呼吸音が鼓膜を揺する。処女である目の前のオメガを手酷く抱いてはならないと、僅かに残っていた理性は完全に消え果てたようだ。
オメガの発情期のフェロモンは、アルファの性欲を刺激する。『運命の番』のフェロモンとなればなおさらのことだ。どんなに意志の強いアルファでも抗うことなど出来ず、たちまち虜にしてしまう極上の媚薬だ。今の杉本がラットを引き起こしているのは火を見るより明らかであった。
通常、ラットを引き起こしたアルファは、強いアルファ用の抑制剤を投与するか、熱を発散し切ることで理性を取り戻すことができる。しかし、現状、アルファ用の抑制剤を杉本に投与することは不可能だ。拓海はひたすら彼から与えられるとめどない快感に耐えるしか選択肢は残っていなかった。
無防備に曝け出された頸に、杉本の熱い吐息と柔らかな唇が這う。
「ふ、あっ……んっ」
――支配される。
その感覚は、これまでは比べものにならない快感となって拓海を襲った。思わず逃げ腰になり身を捩るが、杉本はそれを許してくれなかった。
同じくアルファであると言うのに、拓海はすっぽりと杉本の腕の中に閉じ込められてしまった。触れ合った場所は灼けるように熱く、溶かされてしまうのではないかとすら錯覚する。
「俺の……俺の、運命……」
「い、っ……ぅんっ」
杉本がうわ言のように呟いたその瞬間。項に激痛が走り、叫びそうになるのをどうにか耐えた。鋭い犬歯に食い破られた皮膚から、粘度の高い液体が首筋を伝ってきた。シーツに咲いた小さな赤い花が目の端に映り拓海は、ソレが唾液の混じった血液であること理解する。
――頸を噛まれた……?
痛みを知覚すると、拓海の身体は高揚感に震えた。それはアルファであるはずの拓海が本来味わうはずのない感覚だった。しかし、ほとんど理性を飛ばしかけていた拓海はその違和感にすら気が付かなかった。
「誰にも奪わせない……」
杉本が暗示をかけるように拓海の耳元で低く囁いた。それと同時に彼から濃いフェロモンが放出され、呼吸をする度に拓海の肺が満たされる。拓海は僅かに残った理性を手放すまいと必死に耐える。蕩け切った脳味噌で不用意な発言をするまいと、唇を強く噛み締めた。
「そんなに強く噛んだら、傷ついてしまう。力を抜いて……」
しかし、拓海の無駄な抵抗はすぐに杉本にバレてしまった。唇をゆっくりと撫でながら甘い声で囁かれる。
「んんっ……」
「ほら、いい子。愛しい俺の番……君の声を聞かせてくれるかい……」
必死の抵抗でイヤイヤと首を横に振ると、杉本の行動はエスカレートする。耳の淵に唇の這わせながら、聞き分けの悪い子供に諭すような口調。拓海の意思に反して強張った身体は弛緩した。
固く結んでいた唇が僅かに開くと、杉本はすかさず抽挿のスピードを上げる。彼の剛直が最奥とトントンとノックすると拓海の口からは甘い嬌声が溢れた。
「ん、ああっ……ダメ……っ」
「嫌だ……! 拒絶しないでくれッ」
拓海の言葉を拒絶と捉えた杉本は不安を掻き消すように、グズグズに解けた蕾を攻め立てながら、何度も頸を噛む。激しい抽挿で、腹に残っていた精液が拓海の陰嚢の裏を伝ってシーツにパタパタと落ちた。
「ぅん、あ……はや、いぃ……」
「頼む……お願い、だから……」
拓海の背中に杉本が縋る。今の彼にとって拒否の言葉が最大の禁句であることを思い出す。どうにか、安心させようとシーツを握りしめていた手を緩め、頭の後ろに伸ばす。指先が杉本の頬に触れる。
拓海の言葉が拒絶ではないと気づいた杉本は、頸から唇を離した。拓海が振り向くと、視線が絡む。
「俺の番……」
「うん」
拓海が頷くと杉本は嬉しそうに目を細め唇を合わせてきた。熱を帯びた舌が唇を割って入ってきたから、拓海もそれに応えるように舌を絡ませる。
「ん……ふ、ぁ……」
口の端をどちらのとも分からなない唾液が伝っていることなど気に留める暇もない、貪り合うようなキスだった。
拓海の僅かに残っていた意識は完全に溶けて、ベッドの海に沈む。杉本は、再び拓海の頸に牙を突き立てる。今度は、自分のモノであるという証を刻みつけるように念入りな動作だった。
「愛してる……」
意識が途切れる寸前、杉本の放った言葉は拓海の罪悪感を更に大きくした。
10
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
運命はいつもその手の中に
みこと
BL
子どもの頃運命だと思っていたオメガと離れ離れになったアルファの亮平。周りのアルファやオメガを見るうちに運命なんて迷信だと思うようになる。自分の前から居なくなったオメガを恨みながら過ごしてきたが、数年後にそのオメガと再会する。
本当に運命はあるのだろうか?あるならばそれを手に入れるには…。
オメガバースものです。オメガバースの説明はありません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
白兪
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる