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炎と竜の記録
カウントダウン 2
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「門は一つを残して全部固めるぞ!」
そう言ってへカルトは力自慢たちと共に荷車を引いていた。
上に乗っかっているのは石材や木材などの建材。使われていない建物を急ぎ解体して調達した物で、中には金持ちが芸術家に描かせた神話の壁画のようなものも存在したが、今はそれもバラバラになって勇ましく立つ女神だった物の目が物悲しさを訴えかけているように感じた。
しかし、そんな事を今は気にしている場合じゃない。
門の一つの近くまで来れば、そこで慌ただしく石と砂、そして材木により門を塞ぐ作業を守備隊の者たちが忙しく行っている。
「石材の追加持ってたぞ!」
「助かる! それと西の門の方で木材が不足しているらしいから持っていってやってくれ!」
「分かった。直ぐに村長に伝える!」
積み荷を降ろすとへカルトたちは再び走り出す。
既に足はパンパンになっているが弱音を吐いている暇はない。
何しろ今回は逃げることが出来ないのだ。
へカルトはブレイスたちに言われた事を思い出す。
『移動速度はそれほどじゃないが、それでも今の早さなら化物どもは明日の朝に村に到達するだろう。確かに逃げるのも一つの手だ、しかし森が使えない以上は資源の少ない荒野から平原に向かうしかない。問題は向こうが素直に逃がしてくれるのかという事と、ここに来て荒野の方で魔物の数が増えているようだと言う事だ』
『そんな、つい最近俺が行った時にはぜんぜん見かけなかったぞ?!』
『俺も信じたくないが、クリフさんがあの巨大な鳥を使って安全なルートを探した結果、何処も酷い状況だったらしい。異様に気の立った様子で普段は絶対に接触しないような連中が狂ったように殺し合いをしていたそうだ』
『そんな――』
『一応、助けの手紙は冒険者ギルドに向けて小鳥を使い送ってくれているそうだが、救援が来るまではこっちで持ちこたえる他ないんだ』
その話にどれほど絶望しただろう。
だがへカルトは直ぐに考え直した。クリフという魔法使いも、三人の冒険者も、自分だけならば逃げられるはずなのに、この場に残って命がけで戦おうとしているのだ。
だったらこの村の住人である自分が諦めてどうする。
「クソッたれめ!」
へカルトは悪態を付きながら馬車を自らの足で引っ張る。
馬は結局見つからなかった。
でも馬なんか買えなかったころはいつもこうして引っ張って町と村を何日もかけ往復していたのだ。その頃に戻ったと思えば、どうということはない。
幸いにもリオンが直してくれた車輪はまだまだ元気で、地面の凹凸や摩擦を軽減してくれるから他の物に比べて自分の物はずっと動かしやすいのだ。
だからその分、他よりも迅速に物資を運び届ける義務がある。
「ああもう、絶対に生き残ってやるからな! 全員で!!」
決意の炎を目に宿し、馬車馬の如く男は味が動かなくなるまで走り回った。
そう言ってへカルトは力自慢たちと共に荷車を引いていた。
上に乗っかっているのは石材や木材などの建材。使われていない建物を急ぎ解体して調達した物で、中には金持ちが芸術家に描かせた神話の壁画のようなものも存在したが、今はそれもバラバラになって勇ましく立つ女神だった物の目が物悲しさを訴えかけているように感じた。
しかし、そんな事を今は気にしている場合じゃない。
門の一つの近くまで来れば、そこで慌ただしく石と砂、そして材木により門を塞ぐ作業を守備隊の者たちが忙しく行っている。
「石材の追加持ってたぞ!」
「助かる! それと西の門の方で木材が不足しているらしいから持っていってやってくれ!」
「分かった。直ぐに村長に伝える!」
積み荷を降ろすとへカルトたちは再び走り出す。
既に足はパンパンになっているが弱音を吐いている暇はない。
何しろ今回は逃げることが出来ないのだ。
へカルトはブレイスたちに言われた事を思い出す。
『移動速度はそれほどじゃないが、それでも今の早さなら化物どもは明日の朝に村に到達するだろう。確かに逃げるのも一つの手だ、しかし森が使えない以上は資源の少ない荒野から平原に向かうしかない。問題は向こうが素直に逃がしてくれるのかという事と、ここに来て荒野の方で魔物の数が増えているようだと言う事だ』
『そんな、つい最近俺が行った時にはぜんぜん見かけなかったぞ?!』
『俺も信じたくないが、クリフさんがあの巨大な鳥を使って安全なルートを探した結果、何処も酷い状況だったらしい。異様に気の立った様子で普段は絶対に接触しないような連中が狂ったように殺し合いをしていたそうだ』
『そんな――』
『一応、助けの手紙は冒険者ギルドに向けて小鳥を使い送ってくれているそうだが、救援が来るまではこっちで持ちこたえる他ないんだ』
その話にどれほど絶望しただろう。
だがへカルトは直ぐに考え直した。クリフという魔法使いも、三人の冒険者も、自分だけならば逃げられるはずなのに、この場に残って命がけで戦おうとしているのだ。
だったらこの村の住人である自分が諦めてどうする。
「クソッたれめ!」
へカルトは悪態を付きながら馬車を自らの足で引っ張る。
馬は結局見つからなかった。
でも馬なんか買えなかったころはいつもこうして引っ張って町と村を何日もかけ往復していたのだ。その頃に戻ったと思えば、どうということはない。
幸いにもリオンが直してくれた車輪はまだまだ元気で、地面の凹凸や摩擦を軽減してくれるから他の物に比べて自分の物はずっと動かしやすいのだ。
だからその分、他よりも迅速に物資を運び届ける義務がある。
「ああもう、絶対に生き残ってやるからな! 全員で!!」
決意の炎を目に宿し、馬車馬の如く男は味が動かなくなるまで走り回った。
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