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2章 第1部 到着と初依頼

53話 逃した馬鹿は?

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『アサシンモンキー』は拘束はしたが、ここから接敵して捕まっている馬鹿にも戦闘を見られるので、下手に魔法を使えない。

そんな事を意識しながら致命傷ではなかった『暴れ猿』を斬り付けて倒した。
その行動で俺の位置がバレて比較的無事だった2匹が襲ってきたが、それを1匹は剣で倒し、もう1匹は足で地面に縫い付けてから剣で頭と胴体をお別れさせた。

「よし、残りは死にかけと、『アサシンモンキー』だけー」

俺がそう言った瞬間、ブチブチという音が聞こえてきた。
その音が『樹縛』だと理解出来た俺は、すぐに詠唱を開始した。

「『我が魔力を糧とし、我が意に答え、我が敵を水の刃で打倒せよ!!『水の刃』!!」

俺は詠唱が終了したと同時に『水の刃』を魔法で作り、発射した。

「ウッ、キャー!!」 

俺が発射した『水の刃』を『アサシンモンキー』はピンポイントで『水の刃』の平らな側面を凄い勢いで殴りつけた。
それによって『水の刃』は消えたが、もとから『水の刃』で倒せると思っていなかったので、『アサシンモンキー』に接近していた。

それを察知した『アサシンモンキー』は『水の刃』を殴りつけた大勢のままで叫んだ。

「ウキャーー!!」

その叫び声と同時に俺と『アサシンモンキー』の間に土の壁が出来た。
俺は全力で『アサシンモンキー』との距離を詰めていたのもあって、その土の壁に激突した。

「んぶっ!?」

かなり派手にぶつかったので、鼻から血が出てきた。
そのために反射的に俺が花を抑えた所で、『アサシンモンキー』が土の壁を上から超えて襲ってきた。

それに気が付いた俺は咄嗟に後ろに飛んだ。
俺が一瞬前までいた場所は『アサシンモンキー』に殴られて大きな凹みが出来た。

その凹みは人が一人埋まるくらいの深さだったので、一瞬だけ「『アサシンモンキー』の『身体強化』はこんなに強いのか」と考えたが、それはすぐに否定出来た。
何故なら俺がそれを考えた一瞬の隙に、俺は地面から生えた土で出来ている手に拘束されたからだ。

そして、拘束された事によってあの穴は『アサシンモンキー』が魔法で作ったものだと理解出来た。
更には眼の前の『アサシンモンキー』が少なくとも魔法の2つ同時発動が可能だという事も理解せざる終えなかった。

魔物の級はどれだけの人間を集めれば、その魔物を倒すことができるかという大まかな物だが、これは決してその魔物自体の強さとイコールではない。

この『アサシンモンキー』だって通常ならば障害物がない状態で、更には接敵距離が100m以内ならお互いが連携を取れる6人の魔術師がいれば倒せる。
しかし、これが自然の中での戦闘となると都市の人数と同じと思えるほどの人数が居ないければ倒せないから、都市級の魔物と呼ばれる。

そして、それ程の人数が居なければどうしようもないのだから、下手に人間と接触しても大体が瞬殺されて終わりで、苦戦というものをしない。
しかし、極稀に人間に苦戦したり、倒させる寸前で逃げおおせる魔物が居る。
その魔物達はおおよそ2種類に別けられ、そのまま知恵を付けるだけの魔物と知恵と同時魔法発動技術を身に付ける魔物に分類される。

前者の場合はかなり厄介だがそれほど問題はないが、後者はただでさえ魔物の級が魔物が魔法を1つしか使ってこない前提なのを考えれば、本当にヤバい。
そのために一度追い詰めた魔物は決して逃がしてはならず、例え酷い被害が出ても倒すことが推奨という形の命令が出されている。
少し話が逸れたが、何を言いたいかと言うとー

「どこの馬鹿だ!!都市級の魔物を追い詰めてから、逃したのは!!」

俺は戦闘中であり、一秒も時間を無駄にできない中でも、そう叫ばずには居られなかった。
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