上 下
54 / 69
2章 第1部 到着と初依頼

45話 色を冠する魔物

しおりを挟む
諸刃の剣の様な種類の依頼の形で受けてでも、緊急依頼系のものは受けておかないと街の外から街ごと吹き飛ばす威力の魔法を放たれでもしたら、一環の終わりだからな。

そんな訳で俺が無介入依頼で受けると言うと、ミーディアさんは少し悩んでから頷いた。

「分かりました。お願いします。ですが、先に冒険者協会の協会長と情報の統合をさせてください」

「分かりました。それならエリーとアイミナには魔物の討伐準備に取り掛かってー」

「その必要はないよ」

ミーディアさんと冒険者協会の協会長との情報統合をして、待っている時間で色々と準備を整える様に指示を出そうとした所で、カウンターの奥から静止の声が聞こえてきた。

その声の後に一人の女性がカウンターの奥から出てきた。
その女性の見た目は30代から40代くらいに見えたが、何処か滲み出る威厳というかのがあった。
しかもその女性が顔を見せると冒険者協会に居た全員が驚いたのだから、かなり地位についている人物なのだろう。

その女性は俺達の新人冒険者受付をした受付嬢を睨みつけながら言った。

「領主が頭を下げて娘を協会で働かせてくれと言ったから、受付嬢にしたのに不正を働くとはね」

「な!?ふ、不正!?いっ、一体何のことですか!!」

「彼らのランクの事さ。彼らは全員が門での攻撃力試験を突破している。流石に攻撃力が強ければ一概に強いとは言えないが、門の攻撃力試験を超えたものは上位の冒険者との戦闘試験をしたあとでFランクかEランクを決めるのが規則だ。

その規則を破り、Gランクにしただけでなく、無理矢理に他のパーティーに入れようなんて不正としか言えないだろう」

「ぐっ、そ、それは」

「言い訳はいらないよ。それに冒険者協会の質も随分と落ちたもんだね。私が現役の時は自分の目で見たものでしか判断しないものだったが、受付嬢1人に言われただけで判断する、冒険者と職員馬鹿共がこれ程いるとはね」

奥から出てきた女性がそう言うと、俺達の周りに居た冒険者や遠巻きに冷たい目で見ていた冒険者と職員が気まずそうに目を反らした。
その女性はそれを確認すると、俺達に向かって頭を下げた。

「この冒険者協会の協会長として謝罪するよ。馬鹿共が失礼をしたね。あんた達のGランク認定は取り消したあとで、一旦Fランクに据え置きし、緊急指名依頼を終えたあとにEランクにするから、今はこれで許して欲しい」

そう言ってFランクの冒険者証を3人分渡してきた。
名前の部分にも俺達の名前が入っているので、恐らく新人冒険者受付で受付をしている間に前もって作っていたのだろう。
ということは、

「俺達は貴方の言う馬鹿共を釣り出すために利用された訳ですか」

「気づいたかい。その件は私の独断だったが、最近はここの冒険者協会の評判が良くなくてね。調べている内に、あんた達の新人冒険者受付をした受付嬢と他の協会の顔役と言える受付の人間が色々としていてね。

それとなく注意しても治らないから、そろそろ致命的なのを現行犯で捕まえてやろうかと思った矢先にあんた達が来たのさ。

それで?商人協会の副協会長様が、一体どんな緊急指名依頼を?」

「はい。実はウモーレと他の多数の都市を繋ぐ道の一つに『緑』を冠する『アサシンモンキー』が発生しました。その事実確認と出来れば討伐を依頼したいのです」

「「「な!?」」」

ミーディアさんの依頼内容を聞いた瞬間、俺とエリーシアと冒険者協会の協会長は声を上げた。
まず、『緑』とは基本的な魔物には使われないが、人間の魔法使いと同じ様に得意な魔法を見つけてしまった魔物の事を言う。

魔物が使ってくる魔法は基本的に魔物が生きている中で自然と使える様になった物だけと言われているが、『緑』や例を上げると『赤』、『青』などと色を冠している(人間が勝手に冠しているだけだが)魔物はその限りではない。
色を冠している魔物は自身の得意な魔法を見つけ、通常の都市級の魔物までは使えない大規模な都市を一撃で吹き飛ばせる魔法を使うことが可能なのだ。
しかも、自身の得意な魔法を見つけたためか戦闘力が上昇するために、色を冠している魔物に対しては1つ級が上がる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...