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2章 第1部 到着と初依頼

37話 攻撃力の試験

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俺が冒険者になるための最低限の攻撃力の話をしたら、門兵は頷いた。

「あぁ、その通りだ。流石に自己申告だけじゃ駄目だから、ここで実演して貰うが構わないか?」

ここで門兵が聞いてきた「構わないか」とは他の冒険者達に手の内を見せてもいいかと言うことだ。
手の内を見せたくない場合は他の場所でも出来る。

「もちろんだ」

俺がそう言うと、列に並んでいた冒険者達から口笛が吹いたり、やじが飛んできた。
ただ、からかうような物では無く、新しい冒険者の実力を見ようという感じの温かいやじや口笛だった。

そして、そんなやじや口笛が飛んできている内に俺達の前に『硬化』という魔術師が付与された鎧が運ばれてきた。
冒険者の最低限の攻撃力を測るのは、今目の前にある鎧に最低限、一撃で傷を入れなくてはいけない。

そんなチャレンジの1番手はエリーシアだ。
エリーシアは自前の剣を構えて、剣に魔術に見せかけた魔法を使った。
そう魔法を、だ。

「『我が魔力を糧とし、我が意に答え、我が剣に風の刃を纒わせ、敵を打倒せよ『付与術・風の刃』!!」

エリーシアが発動させた『付与術・風の刃』は武器に風の刃を纏わせその刃を一度だけ飛ばす、または纏わせたままで斬りつける魔術師であり魔法で、付与術ではない『風の刃』よりも消費魔力が多少だが少ない。

因みにエリーシアが何故魔法を使えるのかは謎だ。
何故ならば俺がエリーシアに『命血』を使用して気がついたら使えたのだから。
しかもエリーシアは魔法使いになっただけでなく、魔力量も3倍くらいになったので、魔法使いとしては多少魔力が少ないが、そこは騎士時代の経験でなんとかなるだろう。

『命血』の効果対象者になると魔法使いになるのかも知れないが、アイミナは元々が魔法使いなのでまだ判断出来ない。
今後『命血』を発動させる時が有ったら、それも確認できたらと思う。

少し話が逸れてしまったがエリーシアは『付与術・風の刃』を今回は風の刃を飛ばして使用した。
エリーシアが飛ばしたので風の刃は鎧をいとも簡単に真っ二つにした。

その光景に周りの冒険者は「おぉ~!!」と声を漏らす。
なにせ単独級の硬さの鎧を斬れるならば単独級は簡単に倒せる証であり、それだけで冒険者ランクはEランクに匹敵するのだから。
因みにランクは全ての協会でFからSまであり、冒険者協会ではFランクが一パーティで単独級を相手取れるというもので、Eランクは一人で単独級を倒せるレベルだ。

次にチャレンジするのはアイミナだ。
門兵は先程エリーシアが真っ二つにした鎧を片付けつつ、新しい鎧をを準備した。

因みにチャレンジに使っている鎧はこの街にいる鍛冶師の弟子と魔術師見習いが作った物を使っているらしく、鎧を作る為の鉱石は軽すぎて武器や防具には出来ないが、鍛えて『硬化』を掛ければ、魔物の単独級くらいの硬さは出せる特殊な鉱石なのだとか。
その為にこの鉱石は弟子を鍛えるのに良い鉱石であり、魔術師見習いが魔術を使うための研ぎ澄ますために作り、更にそれを冒険者協会が弟子と見習いの作品ならば安いということで安値で買い取る事で、上手いこと回っているのらしい。

少し話が逸れたがアイミナはまだ魔術の詠唱をする時に怪しい時があるので、そのまま鎧を殴りつけた。
すると鎧は胸の部分が凹んで、この鎧が生物ならば死に至らしめる事も出来る程には凹んだだろう。

アイミナの様な見た目は華奢な女の子が鎧を素手で凹ませた事にどよめきが起こったが、アイミナは本当に素で殴ったわけではない。

実はアイミナは『身体強化』と『魔力隠蔽』という2つの魔法を同時にしようしたのだ。
なのでアイミナは余裕で鎧を凹ませたのだが、個人的にはアイミナなら魔法なんか使わなくても素で凹ませれるんじゃないかと思う。

多少凹んでしまったが、そのままの鎧で今度は俺がチャレンジする番になった。

「『我が魔力を糧とし、我が意に答え、水の刃で切断せよ『水の刃』」

多少短いがきちんと詠唱した俺の魔術(魔法)は鎧をエリーシアの時と同じ様に真っ二つにした。
その光景に周りの冒険者と兵士達は「今回の3人は優秀だな。まるで、あのハーレム坊主達みたいだな」と話し合っていた。
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