44 / 69
1章 第2部 街へと二人目
35.5話後編 2週間後③(アイリス視点・エリザベス視点)
しおりを挟む
『この度は私の考えと決意を述べるために筆を取った次第です。
陛下や王族の方々のやり方には以前から疑問を抱いておりました。しかし、ストレンス殿が何も言わずに居られるのに、私共が何か言うのは違うと思い、私を含め常識のある上位騎士達は何も言いませんでした。
そんな中でのアイリス王女殿下の婚約破棄、更にはストレンス殿を魔の森に転移させるという暴挙。もう私達は陛下や王家の方々のやり方にはついて行けないと確信しました。
私が最後まで残っていたのは国の為でしたが、その国さえもストレンス殿を批判しました。そんな現状見た私や他の上位騎士達は諦めました。何を諦めたとは言いません。何を諦めたかはそれぞれ違いますから私が語れることでもありません。
しかし、私はこれ以上陛下や王家の方々の命令に従っても、私が目指してきた正義を貫き、悪を砕く、砕けずとも決して悪には屈しない騎士にはなれないと判断しました。
よって誠に勝手ながら、騎士を辞めさせていただきます。陛下は否と仰られましたが、私はストレンス殿の元へと向かい、ストレンス殿に同行出来たら良いと考えています。
それと最後の忠誠の証として、忠告を申し上げます。早急に他国にストレンス殿に起こった全ての事を公表するべきだと進言します。理由は、これまで騎士を辞め城を出ていった騎士達は誰かに聞かれれば、ストレンス殿に起こったことの全てをお話するからです。
元アステート王国近衛騎士騎士団所属エリーシア』
「こ、これは?お父様やお母様のやり方について行けない?」
私が手紙を見終わって困惑すると、エリザベスは私を憐れみの籠もっている目で見ながら言った。
「お父様やお母様、お兄様達は随分とストレンスに頼っていたのですよ。しかも、意識してかは知りませんが、毎回断れないような頼み方をしていましたよ。最近では側近の方達も眉を顰めるほどに頼み事が多くなってきていましたからね。もしかしたら、今回の件で下手をすれば王家が終わるかもしれませんね」
「そ、そんな。わ、私、何も知らなくて」
「えぇ、お姉様は何も知らなかった。何も知らずに、いえ何も知ろうとせずにストレンスに負担を強いて、ストレンスを追放したのですよ、自分勝手に」
「わ、私、どうすれば」
「知りませんよ。例え子供でも自分が取った責任は取る。それが民の血税で生活している貴族、更には王家の義務ですよ。
それとこれも知らないと思うので言っておきます。ストレンスはブラーディト家の正統後継者の勉強をしながら、貴方が思い付きでいつ魔術の修練をしても良いように、お姉様を常に『鷹の目』と『マジックアイ』の合成魔法を使って何時もお姉様を見て居ました。
さらにその見ている都合上、お姉様が危険に合わないように護衛役も兼任されていましたよ。護衛は流石にストレンスだけではありませんでしたが、魔物の討伐や勉強で忙しく寝る暇も無い時も欠かしませんでした。思い当たる節はあるのではないですか?」
そう言ってからエリザベスは部屋を出ていきました。
それを私は呆然と見送りながら、今までの事を思い返していました。
確かに私の婚約者だった頃は私が危ない目に遭うとすぐに手紙で安否を聞いてくるか、直接会って私の無事を確認してきました。
ですが、それがあまりにも早いので、まるで襲われるのが分かっていたかの様に思えて、怖かったです。
しかし、私の婚約者は曲がりなりにも公爵家の子供であり、しかも魔法使いです。
そんな子供をいくら婚約者とはいえ主でもない人間の護衛に付けるなんて、普通はありません。
ですがもし、もしも本当に私の護衛をしていたとしたら、わ、私はなんてことをー
◇エリザベス第二王女視点
「はぁ~、やっと気が付きましたか。愚鈍なお姉様ですね。もしも私がストレンスの婚約者だったならば、あんな苦労はさせなかったのに、」
私がそう言って爪を噛むと、私の側近の一人が私に言った。
「おい、口調が戻ってるぞ。イメージが崩れるから敬語を基本で行くんだろ?バレるぞ」
「うるさいですよ。そもそも私以外の王家の人間が平凡なのがいけないんですよ。平凡になるくらいならば、無能の方が排除がしやすいのですがね」
「家族を排除とか言っていいのか?」
「いいんですよ。私の家族は傭兵団の人達だけですから。それよりもストレンスの居場所はわかりましたか?」
私がそう聞くと、側近と私の使い魔達は首を横に振りました。
それを見てから、側近と使い魔達全員に退出するように伝え、私は私の部屋で一人になりました。
「もっと早く、せめて婚約破棄騒動の前に私の記憶が戻ったならば、ストレンスと再会出来たのに」
私はそう言いながら苦虫を口に入れたような顔をしました。
※1章第2部END&1章END
陛下や王族の方々のやり方には以前から疑問を抱いておりました。しかし、ストレンス殿が何も言わずに居られるのに、私共が何か言うのは違うと思い、私を含め常識のある上位騎士達は何も言いませんでした。
そんな中でのアイリス王女殿下の婚約破棄、更にはストレンス殿を魔の森に転移させるという暴挙。もう私達は陛下や王家の方々のやり方にはついて行けないと確信しました。
私が最後まで残っていたのは国の為でしたが、その国さえもストレンス殿を批判しました。そんな現状見た私や他の上位騎士達は諦めました。何を諦めたとは言いません。何を諦めたかはそれぞれ違いますから私が語れることでもありません。
しかし、私はこれ以上陛下や王家の方々の命令に従っても、私が目指してきた正義を貫き、悪を砕く、砕けずとも決して悪には屈しない騎士にはなれないと判断しました。
よって誠に勝手ながら、騎士を辞めさせていただきます。陛下は否と仰られましたが、私はストレンス殿の元へと向かい、ストレンス殿に同行出来たら良いと考えています。
それと最後の忠誠の証として、忠告を申し上げます。早急に他国にストレンス殿に起こった全ての事を公表するべきだと進言します。理由は、これまで騎士を辞め城を出ていった騎士達は誰かに聞かれれば、ストレンス殿に起こったことの全てをお話するからです。
元アステート王国近衛騎士騎士団所属エリーシア』
「こ、これは?お父様やお母様のやり方について行けない?」
私が手紙を見終わって困惑すると、エリザベスは私を憐れみの籠もっている目で見ながら言った。
「お父様やお母様、お兄様達は随分とストレンスに頼っていたのですよ。しかも、意識してかは知りませんが、毎回断れないような頼み方をしていましたよ。最近では側近の方達も眉を顰めるほどに頼み事が多くなってきていましたからね。もしかしたら、今回の件で下手をすれば王家が終わるかもしれませんね」
「そ、そんな。わ、私、何も知らなくて」
「えぇ、お姉様は何も知らなかった。何も知らずに、いえ何も知ろうとせずにストレンスに負担を強いて、ストレンスを追放したのですよ、自分勝手に」
「わ、私、どうすれば」
「知りませんよ。例え子供でも自分が取った責任は取る。それが民の血税で生活している貴族、更には王家の義務ですよ。
それとこれも知らないと思うので言っておきます。ストレンスはブラーディト家の正統後継者の勉強をしながら、貴方が思い付きでいつ魔術の修練をしても良いように、お姉様を常に『鷹の目』と『マジックアイ』の合成魔法を使って何時もお姉様を見て居ました。
さらにその見ている都合上、お姉様が危険に合わないように護衛役も兼任されていましたよ。護衛は流石にストレンスだけではありませんでしたが、魔物の討伐や勉強で忙しく寝る暇も無い時も欠かしませんでした。思い当たる節はあるのではないですか?」
そう言ってからエリザベスは部屋を出ていきました。
それを私は呆然と見送りながら、今までの事を思い返していました。
確かに私の婚約者だった頃は私が危ない目に遭うとすぐに手紙で安否を聞いてくるか、直接会って私の無事を確認してきました。
ですが、それがあまりにも早いので、まるで襲われるのが分かっていたかの様に思えて、怖かったです。
しかし、私の婚約者は曲がりなりにも公爵家の子供であり、しかも魔法使いです。
そんな子供をいくら婚約者とはいえ主でもない人間の護衛に付けるなんて、普通はありません。
ですがもし、もしも本当に私の護衛をしていたとしたら、わ、私はなんてことをー
◇エリザベス第二王女視点
「はぁ~、やっと気が付きましたか。愚鈍なお姉様ですね。もしも私がストレンスの婚約者だったならば、あんな苦労はさせなかったのに、」
私がそう言って爪を噛むと、私の側近の一人が私に言った。
「おい、口調が戻ってるぞ。イメージが崩れるから敬語を基本で行くんだろ?バレるぞ」
「うるさいですよ。そもそも私以外の王家の人間が平凡なのがいけないんですよ。平凡になるくらいならば、無能の方が排除がしやすいのですがね」
「家族を排除とか言っていいのか?」
「いいんですよ。私の家族は傭兵団の人達だけですから。それよりもストレンスの居場所はわかりましたか?」
私がそう聞くと、側近と私の使い魔達は首を横に振りました。
それを見てから、側近と使い魔達全員に退出するように伝え、私は私の部屋で一人になりました。
「もっと早く、せめて婚約破棄騒動の前に私の記憶が戻ったならば、ストレンスと再会出来たのに」
私はそう言いながら苦虫を口に入れたような顔をしました。
※1章第2部END&1章END
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
伝説の騎士は伝説になってるけど、まだ現役です。
もちだもちこ
ファンタジー
森野えんり(36)は、会社帰りに買った本を公園で読んでいた。家に帰ろうとしたら意識を失い、気がつくと森の中?もしかして異世界?まさか…私の読んでた本の世界???
チートな四十路騎士と、三十(六)路女の不思議な旅…になる予定。
R15は保険です。
誰得かといえば自分得なので、好き勝手やってます。
妄想暴走しないよう頑張ります。
※自小説の「森の薬師様と私」「転生して勇者の補佐をしろと言われました」のキャラが出てきますが、読まなくても大丈夫です。
小説家になろうにも同じ内容で投稿しています。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる