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1章 第2部 街へと二人目

31話 魔力の濃度

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俺がエリーシアとアイミナを追って結界内に入ると、2人は結界に入った所で足を止めていた。
いや、アイミナは単純に足を止めていただけだが、エリーシアは少し気持ち悪そうにしていた。

それもその筈で、この結界の中は美しく大きな湖があるだけの空間だったが、外とは圧倒的に魔力の濃度が違った。

基本的に人間や魔物が魔力を回復させるのは、自身の中で生成されるのと空気中の魔力を吸収の2種だ。

そして、ここの空気中の魔力の濃度は通常の場所が100%だとすれば、ここは5000%になる。
つまり、普通の空気中の魔力の濃度の50倍となり、いくら人間には空気中の魔力の濃度だけでは有毒にならないとは言え、なんらかの効果は生じる。

例えばー

「ごほっ、ごほっ」

周りの景色を見ていたエリーシアが突然吐血した。
これは魔力の濃度が濃いために起こった物で、大体だが人間は通常生活している場所の5倍までの魔力の濃度ならば、何も影響はない。
しかし、ここは50倍は濃いので、エリーシアに悪影響が出たのだろう。

「エリーシア!?『防へー」

「穿て」

俺がエリーシアの方を向き、魔力の濃度をコントロール出来る様に範囲指定の意味を込めて、『防壁』という1番消費魔力が少ない、物理防御の壁を作ろうとした所で、凄まじい悪寒と共に「穿て」と聞こえた。

その声が聞こえてきた方を見ると、俺に水の槍が向かってきていた。
その槍は俺が対応出来るかどうかのギリギリの範囲まで迫ってきたので、急いで対応しようとした所で、俺と槍の間に手に風を纏わせていたアイミナが割り込んだ。

本来ならば最善手に近いそれは、事悪魔との戦闘においては最悪手に最も近かった。

「アイミナ!!それに魔法越しでも触れるな!!上位悪魔はー」

俺が攻撃に触れてはならないと言ったが、間に合わずにアイミナは風越しに攻撃に触れてしまった。
すると、アイミナが発動させていた風が綺麗に消え失せて、水の槍がアイミナ直撃しようした所で、俺はアイミナに『転送』の魔法を発動させ、エリーシアの隣に飛ばした。

アイミナはエリーシアの隣に飛ばしたので、攻撃は受けなかったが、槍は依然として俺に迫ってきており、アイミナを『転送』させたことで、魔法の発動が間に合わなくなってしまった。
なので、右手に持っていた剣で槍を受け流すように受けて、なんとか一撃目は防いだ。

しかし、槍は消えずに再び俺に向かってきたので、今度こそは魔法で攻撃した。

「飲み込まれろ!!」

発動させたのは『闇玉やみだま』という、それに触れたものは生物だろうが魔法だろうが全てを飲み込む魔法だ。
これは発動させるのに魔力が多く必要だが発動さえさせれば、維持は簡単なので対中位悪魔以上では重宝している。

そんな魔法を発動させた所で、湖の真ん中に水の中からせり出すように、男の悪魔が出てきた。
その悪魔の雰囲気を見て、俺は小さく舌打ちをした。

「ちっ、俺の知らない上位悪魔か?前の人生では上位悪魔相手に傭兵団俺達だけで立ち回った事もあるが、見たことないな」

「お前達か、私の眠りを妨げる愚かな蝿は」

「はは、外の悪魔は簡単に消してやったんだけど、俺達は蝿か。ま、悪魔に比べたら俺達は蝿みたいなものか」

「ほう?物分かりが良いではないか、蝿。それで?今準備している『転送』で逃げる気か?」

俺は自分が準備していた魔法を感知されて、大きく舌打ちをした。
そして、隠す必要が無くなった魔法を一気に完成させて、エリーシアとアイミナの足元に魔法陣を出現させた。

「アイミナ!!エリーシアは急激な魔力の流入で魔力の回路が壊れかけてる!!外に出たら、兎に角体を直せ!!こいつをなんとかしたら、俺が魔力の回路を治療する!!」

「ま、待って下さい、ボス!!私も戦いー」

アイミナは全てを言い切る前に俺が発動させた『転送』で結界の外に出た。
それを確認すると同時に、悪魔が俺に話しかけてきた。

「なんだ、お前は逃げなかったのだな。蝿ならば蝿らしく、逃げ回れば良いものを」

「あはは、お言葉に甘えて仲間達は逃してもらえたんだ、それで満足するさ。

それにあんたは他の上位悪魔よりも魔力が出力が上だろう?じゃなきゃ、悪魔から自然と溢れている魔力だけで、結界内の濃度がこんなに高くなるはずはないしな」

「ほう?良く分かっているではないか。それならば、何故お前はこの場に残ったのだ?」

そう聞かれた俺は出来だけ煽れるように相手がイラツキそうな顔をして、嘲笑ってやった。

「だって、魔法使いでなければ耐えられない程の魔力の濃度の、この場が作れるだけの出力があるだけで弱そうなんだもん」
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