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1章 第1部 追放と一人目
18.5話前編 エリーシアの回想(エリーシア視点)
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私はあの時、王の言葉であろうとそれを無視してでもストレンス殿を追いかけるべきだったと後悔していた。
始まりは2週間前、愚かにも第一王女とユウキとかいう莫迦が共謀して、ストレンス殿と婚約破棄を行なった事が始まりだ。
その際に私やストレンス殿に命を救われたことがあるものは、すぐにでもストレンス殿を救出に行くべきだと訴えた。
それがこの国が唯一生き残れる方法であり、個人的にもストレンス殿は失いたくなかったからでもある。
それに民の間では何故か婚約破棄はストレンス殿のせいであり、可哀想なのは酷い婚約者に当たった第二王女であるアイリスだと言われている上にブラーディト家の者も捉え調査をするだけで裁判等も未だに行われていない。
これでは、よしんばストレンス殿がアイリス王女の事、更にはブラーディト家の事を許したとしても、この国に戻ってくる事は無いだろう。
私はこんな噂はすぐに否定し、アイリス王女の否を認めるべきだと進言したが、それは陛下や国の重鎮達に却下された。
曰く、「各国の対応に忙しい今の状況では、国内の民まで抑えられない。その上、一応とは言え派閥の長であるブラーディト家はストレンスが死んでいる可能性がある現時点では殺せない。きっとストレンスならば分かってくれる」らしい。
そんな事を言う正直陛下達の考えが分からなかった。
確かにストレンス殿は陛下達に請われ、様々な事を譲歩してくれていたが、国民に嫌われるような事を譲歩してくれる筈が無い。
それに今の騎士の中でも上位に数えられる多くの騎士はストレンス殿に何らかの恩があり、ただでさえストレンス殿を蔑ろにしているたこれまでも眉を顰めていたのだ。
そんな中でのこの対応では、彼らの忠誠心が既に消えてきているのも頷ける。
かくいう私は今や王国でもトップクラスの騎士と言われていたが、新人の頃は酷いものだった。
私が女だというだけで他の男の騎士達よりも厳しい訓練が課され、評価も正当にされず無能だと言われていた。
その為、無能は死んでも良い場所であり、常に人が足りない魔の森に派遣された。
そこは酷い物で、当時一番魔の森の最先端だったラスター村はいくら単独級の魔物ばかりとはいえ魔物が出るのに防御陣地等は無く、周辺に張り巡らせた罠と地下に作られた避難場所を使い、なんとか生き残っている状態だった。
そんな場所に騎士とは言え、無能の烙印を押された者や私の様な差別されていた者が派遣されても、全く意味は無かった。
真に無能な物は全く役に立たず、それ以外の者も私自身を含めて騎士になるための試験を突破したばかりの新人達ばかりだ。
後者はきちんと訓練は受けていたが、それでも派遣されたのが騎士になってから一ヶ月経っていないと言えば理不尽さが理解できるだろう。
しかも、真に無能な連中は私の体を嫌らしく見てくるだけでは飽き足らず、ラスター村に派遣されてから一週間で夜中に夜這いに来る始末。
その時は気絶させてから手足を切り落としてやろうとしたが、私に夜這いを仕掛けてきた連中を気絶させようとしたところで魔物が出現したという合図が、村に鳴り響いた。
それが初めての魔物との対峙だった当時の私は『魔物なんて私ならば簡単に倒せる』と驕っていた。
まあ、その頃には新人相手は愚か中堅の騎士が相手ならば負ける事が無かった為に、仕方ないとは思う。
そんな風に驕っていた私は、すぐに魔物の元へと走り、勢いはそのままで『キングスネーク』の首に剣を振るい、首を落とすことで10m級を撃破した。
その事で勢いづいた私は、まだ魔物が居るならば更に倒せると魔物を探した。
しかし、それが間違いだった。
なんと『キングスネーク』の後ろから『キライマ』が来ていたのだ。
『キライマ』は戦力の幅が広い魔物で、部隊級の『キライマ』も居れば都市級の『キライマ』もいる。
しかし、目の前の『キライマ』は本来ならば黄色い虎の部分がお赤かった。
それだけでこの『キライマ』は不味いと気づき、逃げるなり誰かに伝えるなりしなければならなかったのだが、私は『キライマ』と対峙した恐怖から動けなかった。
そして、そんな動けない私を殺そうと『キライマ』が右前足を持ち上げた所で声が聞こえてきた。
「『操血』!!」
その声が聞こえてきた瞬間に、私の前に真っ赤で大きな盾が出現し、私を『キライマ』から守ってくれた。
その事に呆然としている間に、私は腰を誰かに掴まれた。
「『飛翔』」
私の腰が掴まれたと同時にその声が聞こえ、声がしたと思ったら体が浮き上がり、一気に周囲の木よりも高い位置に陣取った。
その時になってやっと私は誰が私の腰を掴んだのかを知ることが出来た。
私の腰を掴んだのは当時8歳であり、私と同じく対魔物戦では初陣であるストレンス殿であった。
そんなストレンス殿は私を一瞥し、魔法を発動させた。
「『マジックアイ』。ッ!?う、うん体は大丈夫そうだな。い、今、あれを倒すから少し動かないで待っていてくれ」
ストレンス殿は顔を一瞬で真っ赤にしてからそう言って、私から顔を反らした。
私はその事に首を傾げていたが、そんな私の様子を気にせずに、ストレンス殿は魔法を使い『キライマ』を一人で倒した。
因みに、ストレンス殿は私を地面に降ろした後に凄い勢いで『マジックアイ』を使って体を見てしまったことに対して謝ってきた。
当時の私は騎士と言えば剣だけで成り上がる物と考えて居たために魔術の勉強はしておらず、何のことか分からなかった為に「命を救われたのだから問題ありません」と答えたのだが、後から更に強くなるために魔術の勉強をしているときに『マジックアイ』の効果である透視を知り悶絶したのは言うまでも無いだろう。
始まりは2週間前、愚かにも第一王女とユウキとかいう莫迦が共謀して、ストレンス殿と婚約破棄を行なった事が始まりだ。
その際に私やストレンス殿に命を救われたことがあるものは、すぐにでもストレンス殿を救出に行くべきだと訴えた。
それがこの国が唯一生き残れる方法であり、個人的にもストレンス殿は失いたくなかったからでもある。
それに民の間では何故か婚約破棄はストレンス殿のせいであり、可哀想なのは酷い婚約者に当たった第二王女であるアイリスだと言われている上にブラーディト家の者も捉え調査をするだけで裁判等も未だに行われていない。
これでは、よしんばストレンス殿がアイリス王女の事、更にはブラーディト家の事を許したとしても、この国に戻ってくる事は無いだろう。
私はこんな噂はすぐに否定し、アイリス王女の否を認めるべきだと進言したが、それは陛下や国の重鎮達に却下された。
曰く、「各国の対応に忙しい今の状況では、国内の民まで抑えられない。その上、一応とは言え派閥の長であるブラーディト家はストレンスが死んでいる可能性がある現時点では殺せない。きっとストレンスならば分かってくれる」らしい。
そんな事を言う正直陛下達の考えが分からなかった。
確かにストレンス殿は陛下達に請われ、様々な事を譲歩してくれていたが、国民に嫌われるような事を譲歩してくれる筈が無い。
それに今の騎士の中でも上位に数えられる多くの騎士はストレンス殿に何らかの恩があり、ただでさえストレンス殿を蔑ろにしているたこれまでも眉を顰めていたのだ。
そんな中でのこの対応では、彼らの忠誠心が既に消えてきているのも頷ける。
かくいう私は今や王国でもトップクラスの騎士と言われていたが、新人の頃は酷いものだった。
私が女だというだけで他の男の騎士達よりも厳しい訓練が課され、評価も正当にされず無能だと言われていた。
その為、無能は死んでも良い場所であり、常に人が足りない魔の森に派遣された。
そこは酷い物で、当時一番魔の森の最先端だったラスター村はいくら単独級の魔物ばかりとはいえ魔物が出るのに防御陣地等は無く、周辺に張り巡らせた罠と地下に作られた避難場所を使い、なんとか生き残っている状態だった。
そんな場所に騎士とは言え、無能の烙印を押された者や私の様な差別されていた者が派遣されても、全く意味は無かった。
真に無能な物は全く役に立たず、それ以外の者も私自身を含めて騎士になるための試験を突破したばかりの新人達ばかりだ。
後者はきちんと訓練は受けていたが、それでも派遣されたのが騎士になってから一ヶ月経っていないと言えば理不尽さが理解できるだろう。
しかも、真に無能な連中は私の体を嫌らしく見てくるだけでは飽き足らず、ラスター村に派遣されてから一週間で夜中に夜這いに来る始末。
その時は気絶させてから手足を切り落としてやろうとしたが、私に夜這いを仕掛けてきた連中を気絶させようとしたところで魔物が出現したという合図が、村に鳴り響いた。
それが初めての魔物との対峙だった当時の私は『魔物なんて私ならば簡単に倒せる』と驕っていた。
まあ、その頃には新人相手は愚か中堅の騎士が相手ならば負ける事が無かった為に、仕方ないとは思う。
そんな風に驕っていた私は、すぐに魔物の元へと走り、勢いはそのままで『キングスネーク』の首に剣を振るい、首を落とすことで10m級を撃破した。
その事で勢いづいた私は、まだ魔物が居るならば更に倒せると魔物を探した。
しかし、それが間違いだった。
なんと『キングスネーク』の後ろから『キライマ』が来ていたのだ。
『キライマ』は戦力の幅が広い魔物で、部隊級の『キライマ』も居れば都市級の『キライマ』もいる。
しかし、目の前の『キライマ』は本来ならば黄色い虎の部分がお赤かった。
それだけでこの『キライマ』は不味いと気づき、逃げるなり誰かに伝えるなりしなければならなかったのだが、私は『キライマ』と対峙した恐怖から動けなかった。
そして、そんな動けない私を殺そうと『キライマ』が右前足を持ち上げた所で声が聞こえてきた。
「『操血』!!」
その声が聞こえてきた瞬間に、私の前に真っ赤で大きな盾が出現し、私を『キライマ』から守ってくれた。
その事に呆然としている間に、私は腰を誰かに掴まれた。
「『飛翔』」
私の腰が掴まれたと同時にその声が聞こえ、声がしたと思ったら体が浮き上がり、一気に周囲の木よりも高い位置に陣取った。
その時になってやっと私は誰が私の腰を掴んだのかを知ることが出来た。
私の腰を掴んだのは当時8歳であり、私と同じく対魔物戦では初陣であるストレンス殿であった。
そんなストレンス殿は私を一瞥し、魔法を発動させた。
「『マジックアイ』。ッ!?う、うん体は大丈夫そうだな。い、今、あれを倒すから少し動かないで待っていてくれ」
ストレンス殿は顔を一瞬で真っ赤にしてからそう言って、私から顔を反らした。
私はその事に首を傾げていたが、そんな私の様子を気にせずに、ストレンス殿は魔法を使い『キライマ』を一人で倒した。
因みに、ストレンス殿は私を地面に降ろした後に凄い勢いで『マジックアイ』を使って体を見てしまったことに対して謝ってきた。
当時の私は騎士と言えば剣だけで成り上がる物と考えて居たために魔術の勉強はしておらず、何のことか分からなかった為に「命を救われたのだから問題ありません」と答えたのだが、後から更に強くなるために魔術の勉強をしているときに『マジックアイ』の効果である透視を知り悶絶したのは言うまでも無いだろう。
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