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1章
21話 戦闘訓練
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私が急にエクス様の第一夫人候補者になった話し合いが終わってから、そのまま私とエクス様、【付与師】さんに付いてくるように、ミュディー様に言われた。
その為、そのまま付いていくと、ミュディー様は領主様の屋敷の一階にあった下に向かう階段を降りていった。
それに戸惑っている間に、エクス様と【付与師】も降りてしまったので、私は慌てて追いかけた。
追いかけた、その先には私が今まで通っていた訓練場と同じくらいの大きさの訓練場があった。
私がその訓練場に驚いている間に、ミュディー様は訓練場の入口に付いていた扉を閉め、更に鍵をしていた。
それからミュディー様は私達に3人に言った。
「さて、これから魔法の訓練をするけど、エクスとドリスは2人で戦闘訓練を、アリアさんは怪我をした2人を治す【回復】属性の訓練してもらうわ」
「なるほど、ここならば父上か母上の許可がなければ入って来れません。
父上もここで訓練しているのが分かっている以上は、人をここに向かわせる事もないでしょう。
つまり、人に見せられない訓練をする場合の最適な訓練場所ですね」
「ええ、エクスの第一夫人候補者になった以上は魔法使いとしての価値を示す必要があるわ。
その為には、【回復】属性の魔法が多少使えるだけでは不十分。
せめて、骨折は治せるくらいの回復量は必要になるの。
だからこそ、エクスとドリスには戦闘訓練で『タートル』戦前に少しでも戦闘を磨き、その怪我でアリアさんには魔法を磨いて貰うのよ」
「なるほど、奥様の狙いは理解しました。
それならば、早速エクス様としても?」
「構わないわ。
アリアさんには私が説明しておくから」
「了解です。
では、早速」
【付与師】さんはそう言うと、エクス様に殴りかかった。
それを見越していたのか、エクス様は【付与師】さんの拳に合わせて拳を出して、パアンという大きな音を出した。
それに驚いていると、エクス様は舌打ちをしてから、後ろに飛んで【付与師】さんから離れようとした。
しかし、【付与師】さんはエクス様が離れる速さと同じ速さでエクス様に近づいていった。
それと同時に左手に火を出した。
その後に左手と右手で手を合わせると、次の瞬間には急に大きな火になった。
なんで急に大きくなったのかと疑問に思った瞬間、火が渦を巻いていたのが見えた。
その渦の正体は分からなかったものの、【付与師】さんはその大きな火でエクス様を殴りつけた。
しかし、エクス様は左腕に水を、右腕に石を纏わせて、両腕をクロスさせて、【付与師】さんの火を受け止めた。
エクス様と【付与師】さんの魔法がぶつかった瞬間に、小さな爆発が起こった。
その爆発でエクス様と【付与師】さんがお互いに後ろに飛ばされて、距離が出来た。
それを見ていた私は無意識に言葉を出していた。
「す、凄い」
「あの2人、思っていたよりも凄いでしょう?」
「はい」
私の言葉を拾ったミュディー様の質問に頷きながら答えた。
それを見たミュディー様は笑顔を浮かべながら言った。
「普通の魔法使いは魔法を同時には使えないの。
でも、あの2人は魔法を2つ同時に使える珍しい魔法使いなの。
だからこそ、お互いじゃないと軽い戦闘訓練でも相手にならないの」
「え、そうなのですか?」
「ええ、そうよ。
例えば、今ドリスが使っているのは魔法使いがよく使う【火】と【風】属性の魔法の掛け合わせなの。
この掛け合わせは、ただの【火】の魔法よりも強力で相性の良い【水】の魔法のみでは対抗できないの。
もちろん一回に使う魔力を増やせば防げるけど、それではすぐに魔力が切れる。
だから、【火】に相性の良い【水】と【風】に相性の良い【土】の魔法を使って相殺しているの」
「なるほど」
「とはいえ、完全に相殺しきれるほど、エクスは魔法を極めているわけではないの。
ほら、良く見てみて」
ミュディー様はそう言ってエクス様を指さした。
その指に釣られてエクスに視線を向けると、私達が話をしている間にも戦闘をしていたらしく、エクス様は所々に傷があった。
対して、【付与師】さんは傷はあるものの、エクス様よりもずっと少なかった。
それを見て、これまでの戦闘訓練でエクス様が押されているのが分かった。
その事を理解したと同時にミュディー様が解説した。
「ドリスは魔法への狂信的な理想によって魔法の訓練を欠かさなかったお陰で旦那様と同等か、それ以上の魔法の習熟度があるの。
対して、エクスは先天性所持者によって魔力量は、既にドリス以上。
更に先天性による思考力の強化で、戦闘では10歳にしてドリスに追いすがれる程の実力があるの。
だから、ドリスの方が有利ではあるけど、エクスにも勝てる余地が十分にあるから、お互いが良い訓練相手なの。
とはいえ基本的な地力はドリスが上だから、6対4くらいの戦績ね。
ほら、エクスが負けたわよ」
「へ?」
ミュディー様の言葉に釣られて視線を向けると、エクス様の首元に【付与師】さんの手が添えてあった。
「くっ」
「ふふ、まだまだエクス様に勝ち越しはさせませんよ」
「ちっ、次は勝ち越してやる」
「そこまでよ、2人共。
最大の目的を忘れないように」
ミュディー様が、そのまま訓練を続けそうだった2人に声をかけた。
その声を聞いて我に返ったのか、2人共こちらを見て、自分達の怪我を確認するように体のあちこちを触りながら、こっちに歩いてきた。
私が歩いてきた2人を見ると、エクス様は切り傷が多く、打撲は無いように見えた。
逆に【付与師】さんは切り傷は少ないものの、打撲が数カ所あった。
そんな2人は歩きながら訓練の感想を言い合っていた。
「お前はなんで打撲する打撃を受けても、関係なく突っ込んで来るんだ?
普通に引いて、立て直せよ」
「それは相手の思うツボでしょう?
それなら、【風】の魔法を使って加速し、敢えて懐に飛び込む速攻をかけた方が良いでしょう。
というかエクス様は普段が安全策過ぎです。
魔物相手には良く飛び込むのに、人間を警戒し過ぎですよ」
「人間相手に警戒し過ぎは無い」
「魔物相手も同じでしょうに」
「2人共、無駄話もそこまでよ」
ミュディー様がそう言うと、エクス様と【付与師】さんは黙り込んでしまった。
私はこれまでのやり取りを見て、エクス様と【付与師】さんを一言で抑え込むミュディー様は凄いと思った。
その為、そのまま付いていくと、ミュディー様は領主様の屋敷の一階にあった下に向かう階段を降りていった。
それに戸惑っている間に、エクス様と【付与師】も降りてしまったので、私は慌てて追いかけた。
追いかけた、その先には私が今まで通っていた訓練場と同じくらいの大きさの訓練場があった。
私がその訓練場に驚いている間に、ミュディー様は訓練場の入口に付いていた扉を閉め、更に鍵をしていた。
それからミュディー様は私達に3人に言った。
「さて、これから魔法の訓練をするけど、エクスとドリスは2人で戦闘訓練を、アリアさんは怪我をした2人を治す【回復】属性の訓練してもらうわ」
「なるほど、ここならば父上か母上の許可がなければ入って来れません。
父上もここで訓練しているのが分かっている以上は、人をここに向かわせる事もないでしょう。
つまり、人に見せられない訓練をする場合の最適な訓練場所ですね」
「ええ、エクスの第一夫人候補者になった以上は魔法使いとしての価値を示す必要があるわ。
その為には、【回復】属性の魔法が多少使えるだけでは不十分。
せめて、骨折は治せるくらいの回復量は必要になるの。
だからこそ、エクスとドリスには戦闘訓練で『タートル』戦前に少しでも戦闘を磨き、その怪我でアリアさんには魔法を磨いて貰うのよ」
「なるほど、奥様の狙いは理解しました。
それならば、早速エクス様としても?」
「構わないわ。
アリアさんには私が説明しておくから」
「了解です。
では、早速」
【付与師】さんはそう言うと、エクス様に殴りかかった。
それを見越していたのか、エクス様は【付与師】さんの拳に合わせて拳を出して、パアンという大きな音を出した。
それに驚いていると、エクス様は舌打ちをしてから、後ろに飛んで【付与師】さんから離れようとした。
しかし、【付与師】さんはエクス様が離れる速さと同じ速さでエクス様に近づいていった。
それと同時に左手に火を出した。
その後に左手と右手で手を合わせると、次の瞬間には急に大きな火になった。
なんで急に大きくなったのかと疑問に思った瞬間、火が渦を巻いていたのが見えた。
その渦の正体は分からなかったものの、【付与師】さんはその大きな火でエクス様を殴りつけた。
しかし、エクス様は左腕に水を、右腕に石を纏わせて、両腕をクロスさせて、【付与師】さんの火を受け止めた。
エクス様と【付与師】さんの魔法がぶつかった瞬間に、小さな爆発が起こった。
その爆発でエクス様と【付与師】さんがお互いに後ろに飛ばされて、距離が出来た。
それを見ていた私は無意識に言葉を出していた。
「す、凄い」
「あの2人、思っていたよりも凄いでしょう?」
「はい」
私の言葉を拾ったミュディー様の質問に頷きながら答えた。
それを見たミュディー様は笑顔を浮かべながら言った。
「普通の魔法使いは魔法を同時には使えないの。
でも、あの2人は魔法を2つ同時に使える珍しい魔法使いなの。
だからこそ、お互いじゃないと軽い戦闘訓練でも相手にならないの」
「え、そうなのですか?」
「ええ、そうよ。
例えば、今ドリスが使っているのは魔法使いがよく使う【火】と【風】属性の魔法の掛け合わせなの。
この掛け合わせは、ただの【火】の魔法よりも強力で相性の良い【水】の魔法のみでは対抗できないの。
もちろん一回に使う魔力を増やせば防げるけど、それではすぐに魔力が切れる。
だから、【火】に相性の良い【水】と【風】に相性の良い【土】の魔法を使って相殺しているの」
「なるほど」
「とはいえ、完全に相殺しきれるほど、エクスは魔法を極めているわけではないの。
ほら、良く見てみて」
ミュディー様はそう言ってエクス様を指さした。
その指に釣られてエクスに視線を向けると、私達が話をしている間にも戦闘をしていたらしく、エクス様は所々に傷があった。
対して、【付与師】さんは傷はあるものの、エクス様よりもずっと少なかった。
それを見て、これまでの戦闘訓練でエクス様が押されているのが分かった。
その事を理解したと同時にミュディー様が解説した。
「ドリスは魔法への狂信的な理想によって魔法の訓練を欠かさなかったお陰で旦那様と同等か、それ以上の魔法の習熟度があるの。
対して、エクスは先天性所持者によって魔力量は、既にドリス以上。
更に先天性による思考力の強化で、戦闘では10歳にしてドリスに追いすがれる程の実力があるの。
だから、ドリスの方が有利ではあるけど、エクスにも勝てる余地が十分にあるから、お互いが良い訓練相手なの。
とはいえ基本的な地力はドリスが上だから、6対4くらいの戦績ね。
ほら、エクスが負けたわよ」
「へ?」
ミュディー様の言葉に釣られて視線を向けると、エクス様の首元に【付与師】さんの手が添えてあった。
「くっ」
「ふふ、まだまだエクス様に勝ち越しはさせませんよ」
「ちっ、次は勝ち越してやる」
「そこまでよ、2人共。
最大の目的を忘れないように」
ミュディー様が、そのまま訓練を続けそうだった2人に声をかけた。
その声を聞いて我に返ったのか、2人共こちらを見て、自分達の怪我を確認するように体のあちこちを触りながら、こっちに歩いてきた。
私が歩いてきた2人を見ると、エクス様は切り傷が多く、打撲は無いように見えた。
逆に【付与師】さんは切り傷は少ないものの、打撲が数カ所あった。
そんな2人は歩きながら訓練の感想を言い合っていた。
「お前はなんで打撲する打撃を受けても、関係なく突っ込んで来るんだ?
普通に引いて、立て直せよ」
「それは相手の思うツボでしょう?
それなら、【風】の魔法を使って加速し、敢えて懐に飛び込む速攻をかけた方が良いでしょう。
というかエクス様は普段が安全策過ぎです。
魔物相手には良く飛び込むのに、人間を警戒し過ぎですよ」
「人間相手に警戒し過ぎは無い」
「魔物相手も同じでしょうに」
「2人共、無駄話もそこまでよ」
ミュディー様がそう言うと、エクス様と【付与師】さんは黙り込んでしまった。
私はこれまでのやり取りを見て、エクス様と【付与師】さんを一言で抑え込むミュディー様は凄いと思った。
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