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1章
18話 説明①
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朝、いつも通りに訓練場に行こうと準備をしていると、『蝶の館』にドーラス辺境伯家の屋敷に顔を出すようにと連絡があった。
連絡は騎士の人が伝えに来ていたので、1人で辺境伯家の屋敷を尋ねられない私は急いで準備をして、屋敷に戻るという騎士の人について行った。
すると、エステールさんも呼び出しを受けていたらしく、2人で同じ部屋に通された。
それから暫くして、領主様とエクス様、それから何処かエクスと似ている女の人が部屋に入って来た。
それを見て、エステールさんが立ち上がって礼をしたので、私も慌てて礼をした。
「2人共、朝から呼び出して悪かったな」
「いえ、辺境伯家に所属している身としては当然でございます」
「そうか。
早速で悪いが、今回呼び出したのは、危険度15の『タートル』討伐についてだ」
「『タートル』!?
まさか、『戦争殺し』ですか」
「うむ、その通りだ。
正直に言えば、用意できる戦力では勝機が無いと言っても過言ではない。
そこで、アリア君。
申し訳ないが、君を利用させてもらいたい」
「ひゃい!?」
当然話を振られた為、驚いて悲鳴を上げてしまった。
そんな私を見て、女の人が言った。
「旦那様、彼女を利用するとの事ですが、具体的にはどうするのですか?
見た所、魔力は異常な程に多いようですが、まだ魔法の訓練は始めたばかりなのでしょう?」
「ああ、だが理由を話すにはアリア君の許可が必要だ。
アリア君、申し訳ないが、私の妻に君の秘密を教えても良いだろうか?」
「は、はい。
もちろんです」
「ありがとう、アリア君。
ミュディー、アリア君は貴重な魔法使いなのだ」
「貴重な魔法使い、ですか?
それはエクスのような先天性所持者魔力ですか?
それともドリスやエステールのような【付与師】ですか?
どちらにしろ、危険度15の『タートル系』を前にすれば、代わりは無いと思いますが?」
「うむ、どちらかでは『タートル』の前に立つには不安が残る上、既に前例が仲間として共に戦場に立っている以上は騎士や兵士達の士気を上げることも難しいだろう。
だが、片方の性質を持った上で、もう片方よりも更に貴重な存在だとすれば、どうだ?」
「片方の性質を持った上で、もう片方よりも更に貴重な存在?
まさか「そこまでだミュディー」、っ!!
すみません、少し取り乱しました」
「仕方ない事だ。
私も、お前と同じように相応には驚いていたかな」
領主様がそう言った所で、部屋の扉がノックされた。
そして、その後に【付与師】さんの声が聞こえてきた。
「領主様、魔道具研究室主任ドリスです。
例の魔道具をお持ちしました」
「入れ」
「失礼します」
ドリスさんは部屋に入って扉を閉めると、手に持っていた小さい球体を扉の側に置き、その後に部屋にある窓にも同じ球体を置いた。
それから【付与師】さんは懐から、あの時に学校でジャック様が取り出した物と同じくらいの大きさのものを取り出した。
それを部屋の真ん中にあるテーブルに置いてから、【付与師】さんは話しだした。
「今テーブルに置いた物が、学校で使われかけた魔道具です。
既に魔道具に込められていた魔力は抜きましたが、一応お気をつけを」
「うむ、ご苦労。
さミュディー、これから学校での件から、昨日までの経緯を伝えるが、あまり取り乱すなよ。
いくら魔道具にて、部屋の会話が魔法で盗み聞き出来ないようにしているとしても、大声は聞かれてしまう可能性もあるからな」
領主様はミュディーと呼ばれている女の人が頷いたのを見てから、これまでの経緯を話しだした。
ここまでの経緯を話をしている最中、私達はやる事が無かったものの、少しづつ空気がピリピリしていくのが分かった。
それが何故か分からなかったものの、話が終わってからミュディーと呼ばれている女の人が怖い笑顔で言った。
「あらあら、ふふふ。
良くも、まあ好き勝手に動いてくれたものね。
いくら私が留守にしていたとはいえ、第二夫人なのにドーラス家の夫人が何たるかも理解していないなんてね。
私に喧嘩を売っているのかしら」
「ミュディー、ここには君と初対面のアリア君も居るのだ。
少しは控えてくれ」
「あら、そうね。
流石に初対面の子には刺激が強いわね。
全てが終わってから、彼女を問い詰めましょう。
それよりも、初めましてアリアさん。
私はミュディー・ドーラス、バーンズ・ドーラスの第一夫人です」
「ひゃ、ひゃい。
初めまして、アリアです」
「ええ、初めまして。
旦那様と息子、それに魔道具研究室の人間が貴方に無理を言ってしまって、ごめんなさいね」
「い、いえ、大丈夫です!!」
「酷いですね、奥様。
私は無理なんて言ってませんよ?
少しだけ髪の毛を貰えないか聞いただけですよ?」
【付与師】さんの言葉を聞いたミュディー様は頭痛を堪える様に頭を抑えた。
それから、ミュディー様は【付与師】さんに向かって言った。
「はぁ~、それが無理なのだと、何故分からないの?」
「さて?
なんの事です?」
「まあ、良いわ。
昨日言っていた、切り札の1つ。
確かに切り札になり得るわね。
当の本人が許可してくれれば、だけどね」
「それはそれからだ。
だが、それ以外に道は少ない。
アリア君、どうか君の存在を明かさせて欲しい」
「え?
えっと、構いませんよ?」
私は領主様が真面目な顔をしている理由が分からないので首を傾げながら、返答した。
その返答を聞いて、エクス様は私を止めた。
「待った。
『光』は大変貴重な存在だ。
その存在が明かされれば、生活は一変する。
家族とも一緒に居られなくなるかもしれない。
更に先天性所持者だと分れば、ドリスのような人間に一切の配慮も無く、常に狙われかもしれない。
それを理解した上で、これからの話を聞いて、それから返答して欲しい」
エクス様の言葉を聞いて、その言葉を想像してみると、【付与師】さんみたいな人に常に狙われかもしれないのを考えるとゾッとした。
連絡は騎士の人が伝えに来ていたので、1人で辺境伯家の屋敷を尋ねられない私は急いで準備をして、屋敷に戻るという騎士の人について行った。
すると、エステールさんも呼び出しを受けていたらしく、2人で同じ部屋に通された。
それから暫くして、領主様とエクス様、それから何処かエクスと似ている女の人が部屋に入って来た。
それを見て、エステールさんが立ち上がって礼をしたので、私も慌てて礼をした。
「2人共、朝から呼び出して悪かったな」
「いえ、辺境伯家に所属している身としては当然でございます」
「そうか。
早速で悪いが、今回呼び出したのは、危険度15の『タートル』討伐についてだ」
「『タートル』!?
まさか、『戦争殺し』ですか」
「うむ、その通りだ。
正直に言えば、用意できる戦力では勝機が無いと言っても過言ではない。
そこで、アリア君。
申し訳ないが、君を利用させてもらいたい」
「ひゃい!?」
当然話を振られた為、驚いて悲鳴を上げてしまった。
そんな私を見て、女の人が言った。
「旦那様、彼女を利用するとの事ですが、具体的にはどうするのですか?
見た所、魔力は異常な程に多いようですが、まだ魔法の訓練は始めたばかりなのでしょう?」
「ああ、だが理由を話すにはアリア君の許可が必要だ。
アリア君、申し訳ないが、私の妻に君の秘密を教えても良いだろうか?」
「は、はい。
もちろんです」
「ありがとう、アリア君。
ミュディー、アリア君は貴重な魔法使いなのだ」
「貴重な魔法使い、ですか?
それはエクスのような先天性所持者魔力ですか?
それともドリスやエステールのような【付与師】ですか?
どちらにしろ、危険度15の『タートル系』を前にすれば、代わりは無いと思いますが?」
「うむ、どちらかでは『タートル』の前に立つには不安が残る上、既に前例が仲間として共に戦場に立っている以上は騎士や兵士達の士気を上げることも難しいだろう。
だが、片方の性質を持った上で、もう片方よりも更に貴重な存在だとすれば、どうだ?」
「片方の性質を持った上で、もう片方よりも更に貴重な存在?
まさか「そこまでだミュディー」、っ!!
すみません、少し取り乱しました」
「仕方ない事だ。
私も、お前と同じように相応には驚いていたかな」
領主様がそう言った所で、部屋の扉がノックされた。
そして、その後に【付与師】さんの声が聞こえてきた。
「領主様、魔道具研究室主任ドリスです。
例の魔道具をお持ちしました」
「入れ」
「失礼します」
ドリスさんは部屋に入って扉を閉めると、手に持っていた小さい球体を扉の側に置き、その後に部屋にある窓にも同じ球体を置いた。
それから【付与師】さんは懐から、あの時に学校でジャック様が取り出した物と同じくらいの大きさのものを取り出した。
それを部屋の真ん中にあるテーブルに置いてから、【付与師】さんは話しだした。
「今テーブルに置いた物が、学校で使われかけた魔道具です。
既に魔道具に込められていた魔力は抜きましたが、一応お気をつけを」
「うむ、ご苦労。
さミュディー、これから学校での件から、昨日までの経緯を伝えるが、あまり取り乱すなよ。
いくら魔道具にて、部屋の会話が魔法で盗み聞き出来ないようにしているとしても、大声は聞かれてしまう可能性もあるからな」
領主様はミュディーと呼ばれている女の人が頷いたのを見てから、これまでの経緯を話しだした。
ここまでの経緯を話をしている最中、私達はやる事が無かったものの、少しづつ空気がピリピリしていくのが分かった。
それが何故か分からなかったものの、話が終わってからミュディーと呼ばれている女の人が怖い笑顔で言った。
「あらあら、ふふふ。
良くも、まあ好き勝手に動いてくれたものね。
いくら私が留守にしていたとはいえ、第二夫人なのにドーラス家の夫人が何たるかも理解していないなんてね。
私に喧嘩を売っているのかしら」
「ミュディー、ここには君と初対面のアリア君も居るのだ。
少しは控えてくれ」
「あら、そうね。
流石に初対面の子には刺激が強いわね。
全てが終わってから、彼女を問い詰めましょう。
それよりも、初めましてアリアさん。
私はミュディー・ドーラス、バーンズ・ドーラスの第一夫人です」
「ひゃ、ひゃい。
初めまして、アリアです」
「ええ、初めまして。
旦那様と息子、それに魔道具研究室の人間が貴方に無理を言ってしまって、ごめんなさいね」
「い、いえ、大丈夫です!!」
「酷いですね、奥様。
私は無理なんて言ってませんよ?
少しだけ髪の毛を貰えないか聞いただけですよ?」
【付与師】さんの言葉を聞いたミュディー様は頭痛を堪える様に頭を抑えた。
それから、ミュディー様は【付与師】さんに向かって言った。
「はぁ~、それが無理なのだと、何故分からないの?」
「さて?
なんの事です?」
「まあ、良いわ。
昨日言っていた、切り札の1つ。
確かに切り札になり得るわね。
当の本人が許可してくれれば、だけどね」
「それはそれからだ。
だが、それ以外に道は少ない。
アリア君、どうか君の存在を明かさせて欲しい」
「え?
えっと、構いませんよ?」
私は領主様が真面目な顔をしている理由が分からないので首を傾げながら、返答した。
その返答を聞いて、エクス様は私を止めた。
「待った。
『光』は大変貴重な存在だ。
その存在が明かされれば、生活は一変する。
家族とも一緒に居られなくなるかもしれない。
更に先天性所持者だと分れば、ドリスのような人間に一切の配慮も無く、常に狙われかもしれない。
それを理解した上で、これからの話を聞いて、それから返答して欲しい」
エクス様の言葉を聞いて、その言葉を想像してみると、【付与師】さんみたいな人に常に狙われかもしれないのを考えるとゾッとした。
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