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3章 ダンジョン突入編

53話 元奴隷はダンジョンに潜る

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10層に到着して、セリカは地面に転がった。

「やっ、やっと着いた。キッツイ」

「お疲れ、まあまあ動けてたし、筋も良かったぞ」

「ああ、レベルを上げて、ステータスを伸ばせば、もっと動きも良くなる筈だ」

「あぅ~、既に強い2人から言われても、嫌味にしか聞こえないんだけど」

セリカがぐったりとしながら言った。
それに驚いた俺とハクはお互いに顔を見合わせてから、再びセリカを見た。
セリカはその間にも、ブツブツと不満を口にしていた。

「それりゃあね?元々の経験が違うから、実力が全然違うのは理解してるよ?

でもね?もう少し私に考慮して、加減してくれても良くない?」

「いや、死にそうにな事はあっても、死ななかったろ?」

「死にはしなかったけど、随分と死にかけたよ!?3人で行動するんだから、ある程度の戦闘力が要るのは理解してるよ!?

してるけど、もう少し死にかけない場所で鍛錬したかったんだけど!?」

「いや、だがそんな悠長な事をしていたら、何時まで先に進めないからと、スパルタを受け入れたのは瀬里香だろう?」

「そうだけども!!そうだけども!!う、ううっ」

セリカはそう叫んだから、少しだけ涙を流し始めた。
それを見て、俺とハクが『フォレストウルフ10匹全部任せたのは、やり過ぎだったか?』と小声で話し合った。

「おい、セリカが泣いてるぞ。やっぱり、フォレストウルフ10じゃなく、7くらいが適度だったんじゃないか?」

「いや、ロキだって最終的には大丈夫だろうと言ったじゃないか。

それに皮の鎧と短剣を2つも持ってるなら、上手く行けば2匹づつは殺せるのだから、多めが良いと言ったのはロキじゃないか」

「いや、それはそうだが」

そう言いつつセリカの方を見ると、セリカと目があった。
それからすぐに再び泣き始めたセリカだったが、その前は泣いていなかった事を確認したので、俺はハクに言った。

「まだまだ余裕そうだから、今度は20匹までいってみようか」

「わ~!!待って、待って!!悪かったから、私が悪かったから~」

「ああ、泣き真似をしていたのか、そうだな。20匹まで行こうか」

「あ~!!駄目、駄目だよ!!流石に死んじゃうよ!!謝るから許して~」

俺とハクが真顔で話し合っていると、セリカが俺とハクの足に縋り付いてきた。
そんなセリカに俺とハクは正論を説いた。

「セリカ、キツいならキツいと漏らすのは仕方無い。だが、嘘や過小報告だけは駄目だ。それによって、仲間が死ぬ事もある」

「そうだな。どれだけ正確な情報を持っているかで、その時々の行動も変わる。軽い冗談なら構わないが、泣き真似は駄目だ」

「うっ、思ってたよりも真面目な説教だった」

「「返事は?」」

「ごめんなさい」

「「よろしい」」

セリカが素直に謝ったので、この話しは終わりにして、セリカを立たせた。
その事に首を傾げたセリカに、ハクが今後の予定を伝えた。

「これから11層を目指す」

「今日は10層到達までじゃなかったの?」

「その通りだが、まだ外を探索する必要がない内に、様子見だけでもしておくべきだと思ってな」

「ん、確かに。でも、今日泊まる所も見つけないといけないんだか、今からはあんまり長時間は無理だよ?」

「安心しろ、様子見だけだし。ここかは私とロキで魔物の相手をする」

「なるほど、それならすぐに行けそうだね」

セリカの言葉に頷いてから、セリカの皮の鎧と短剣を回収してポーチに収納した。
その事にセリカは首を傾げたので、俺は笑顔で言った。

「ここからは脚力を鍛えよう。大丈夫、セリカはただ全力で走って追い掛けてくれば良いだけだ」

「え?いや、え?何言ってるの?」

「さぁ、行くぞ~」

「えっ!?ちょ、まっ!!」

俺とハクはセリカを無視して、セリカが全力で走って、ギリギリ追いつけるくらいのスピードで走り出した。
それを見て、本気だと察したセリカは叫びながら、全力で走り出した。

「こ、この鬼畜共~!!」




「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「意外と追い付いてきたのが早かったな」

「ああ、私とロキが途中からスピードを上げる事になったのは驚いた」

10層のボス部屋の扉の前に来た俺とハクが、セリカの脚力に驚きつつ関したように言った。
すると、セリカは肩で息をしなが、『キッ』と睨んで来た。

それを理解しつつ、セリカが強くなるための多少の無茶は仕方無いと無視して、軽く説明をした。

「この扉を開けると、先には25匹のフォレストウルフが居る筈だ。扉の中に足を踏み入れないと襲って来ないが、逆に足を踏み入れた瞬間に襲いかかってくる。

2人とも気を付けろよ」

「ああ、分かった」

「はぁ、はぁ、はぁ、ちょ、ちょっと待って」

セリカの言葉で、扉を開けようとしていた俺は手を止めた。
それからセリカの息が整うのを待っていた。

数十秒して息が整ったセリカは、顔を引き攣らせながら俺とハクに聞いてきた。

「ねえ、2人共?まさか、私を鍛える名目でいじめてる?」

「そんな訳ないだろう。俺は常識的に考えて、面、んん、強くなれるようにしているつもりだ」

「ああ、私も同じだ。常識的に考えて、仕返、んん、強くなれるようにしている」

「ロキは面白く、ハクは仕返しって聞こえて来た気がするんだけど、それについては?」

「「気のせいだな」」

すっとぼけた俺とハクを見て、セリカは深くため息をついた。
それから俺に手を出して来た。

それに首を傾げると、セリカは半目で俺を見て来た。

「いや、私の武具を貸してくれない?少しなら戦えるから」

「いや、俺一人で片付けられるぞ?」

「気分の問題だよ。それにハクも手を出すつもりでしょ?」

「もちろんだ。余程邪魔になれば別だが、何も手を出さなければ、お互いに助け合うパーティーとは言えないからな」

俺は2人の言葉を受けて、俺に依存するつもりは無いのだと、今更に理解した。
それを理解して、笑みを浮かべてから、ポーチからセリカに貸していた防具を取り出した。

「ふふ、なんなら、2人だけで25匹相手にしてみるか?」

「ん、それ良いね」

「ああ、任せてくれるなら、やろう」

俺の2人は笑って答えた。
それに驚き、慌てて2人を言った。

「ちょっと待て、2人とも前衛ではないだろう?そんな2人に25匹は脅威だぞ?」

「いや、その程度ならば脅威にはなり得ない、なってはならない。だから、任せてくれ」

ハクは真剣な顔をして言った。
それを見て、ため息をついた。

「はぁ、分かった。危なくなったら、介入する」

「ふふ、ありがとう、ロキ」
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