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3章 ダンジョン突入編

47話 元奴隷は仲間を増やす

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あのダンジョンでは、現状2種類しか魔物を確認していないが、流石に2種類だけのダンジョンでは無いと思うので、今後食用の魔物が出て来てくれるのを祈るばかりだ。
まあ、出て来なくとも、ポーチの中にはキラーアント種がかなりあるし、オークやここに来る前に回収した食料も多くあるので、当分は大丈夫なのだが。

そんな事を考えていると、家の下に人の気配がした。
気配は2つだったので、多分ムタイとワタナベだろう。

そう思って、とりあえず出していた物を片付けてから下に降りた。
すると、予想通りにムタイとワタナベだったが、今までに見ない程に真剣な表情で、降りてきた俺を見つめてきた。

それに首を傾げると、ムタイが無言でスマホを出してきた。
スマホを見てみると、『渡辺 瀬里香をパーティーに招待しますか?』と書かれていた。

それを見て目を見開いたが、すぐに眉を顰めた。

「どういうことだ?ワタナベは戦闘向きじゃないだろう?それなら、俺達のパーティーに入れるのは危ないだろ」

「ああ、独立遊撃部隊の仕事がある、ここで瀬里香をパーティーに入れても、殺してしまうだけだろう」

「それなら、そのスマホの画面はどういうことなんだ?」

俺がそう聞くと、ムタイは真剣な表情で言った。

「ロキ、私達と拠点を出ないか?」

俺はムタイの言葉で思考に空白が生まれた。
それから少し考えて、ムタイに質問した。

「拠点を出るって、食料や物資の回収の話だよな?」

「いや、ここではない何処かに、新たな拠点を私達だけで作らないかという話だ」

「本気か?」

「本気だ」

暫くムタイと見つめ合っていたが、ムタイは一切目を逸らさなかったので、本気だと分かった。
それから、この場にいる瀬里香に目を向けた。

「ムタイの話は理解した。やるかどうから置いておいて、ワタナベは何でここに居るんだ?」

「私も2人に付いて行きたくて」

「俺とムタイは強いが、『名付き』を圧倒できるか程じゃない。そのせいで、ワタナベを殺す事になるかもしれない。それでも、付いてくるのか?」

「うん。もうここでは、やっていけないと思ったから」

瀬里香とも暫く見つめ合っていたが、こちらも本気だと分かったので、俺はため息をついてから、頭を搔いた。

「なんで急に、そんな話になったんだ?とりあえず、理由を話してみろ」

「で、でも」

「安心しろ、時間が掛かっても最後まで聞いてやるし、聞き終わるまでは何も口を挟まない」

俺がそう言うと、ムタイとワタナベが顔を見わせてから、諦めたように話しだした。




ムタイとワタナベの話を聞き終えてから、俺は頭を抱えてため息をついた。

「はぁ~、馬鹿が多いと思っていたが、馬鹿しか居なくなったのか?」

「そう言われても、反論出来ない状態だな。それでだが、私達と拠点を出てくれるか?」

全ての話を聞いてからも、俺は即答は出来なかった。
なので、一番の懸念点をムタイに質問した。

「ムタイ、ワタナベ、俺はお前達と拠点を出る事自体は構わない。だが、この拠点はお前達が心血を注いで作り上げた拠点なんだろ?

それなのに、そこから離れて、悪い言い方をすれば捨ててしまってもいいのか?止めるなら、今だぞ?」

俺がそう言うと、ワタナベは即座に首を横に振った。

「確かに頑張って来たけど、誰かに全てを押し付ける様な拠点を作りたかった訳じゃないから」

俺はワタナベの言葉で、『これは決意が硬いな』と判断して、今度はムタイに顔を向けた。
ムタイはまだ若干迷いがあるのか、ワタナベの様に即答はしなかったが、ゆっくりと自分の中で纒めるように、しかししっかりとした口調で言った。

「最初はただ生き残りたかったから、ここに居た。それから魔物を狩って強くなり、いつの間にかここのリーダーに収まって、誰からも頼られるようになった。

それが嫌な訳じゃない。ただリーダーになったばかりの頃は、それでも良かった。だが、今ではそれが重しになって、期待が重かった。

そんな時に私よりも強いロキが現れて、驚くと同時に安堵してしまった。これで私だけじゃ無い、1人で背負わなくていいかもしれないと期待した。

その結果がこれだ。結局、期待は依存に変わりかけている。無責任な自覚はある。だが、それでももう私はここには居られない。

だから、ロキと瀬里香がこなくとも、私は1人で拠点を出る」

ムタイは最後の方は確固たる意志を持って言ったように感じた。
そんなムタイを見て、俺はため息をつきながら、言った。

「まあ、俺は拠点が欲しかったから、ここに来た訳だし、その拠点もパーティーメンバーが居ないんじゃ意味がない。

だから、安心しろ。最低でも俺は、お前に付いて行ってやる」

そう言い切った俺にワタナベが体を寄せてきた。

「ちょっと、私の事忘れてない?」

「ワタナベはどうせ付いてくるんだろ?」

「む、それは、そうだけど。あれだよ、女子的には私にも何か言葉が欲しいわけだよ」

俺がワタナベの言葉に首を傾げながら聞いた。

「なんだよ、女子的にはって」

「む~」

「ああ~、もう分かった。それなら付いて来い、扱き使ってやるが、俺が死ぬ迄は守ってやる」

俺がそう言うと、ワタナベはポカンとした表情をした。
それに俺が首を傾げていると、ワタナベはポカンとした表情のままで、俺に聞いてきた。

「俺が死ぬ迄は守ってやるって、告白?」

「はい?俺が出会って1日そこらの女に告白すると?」

俺が本気で驚きながら言うと、ワタナベは俺に背を向けながら頭を掻いた。

「あは~、そうだよね~。びっくりしちゃったよ~」

「そう言う割には顔も耳も真っ赤だぞ、瀬里香」

「な、何を言ってるのかな、このハクは。そんな訳ないでしょ?」

「いや、後ろから見ても耳が赤いのはわかるぞ?」

俺がそう言うと、ワタナベは耳を両手で隠してながら、俺を睨んできた。
それをサラリと無視しつつ、俺はワタナベに右手を出した。

「んんっ。これからはパーティーだからな、とりあえずパーティー結成時の挨拶である握手だ。これからよろしく、ワタナベ」

俺がそう言うと、ワタナベは諦めの表情をして、俺の握手に応じた。

「はぁ~、そうだね。パーティー結成自体はスマホで出来るけど、味気無いしね。それじゃあ、私の事は瀬里香って呼んでね」

「セリカ?ワタナベじゃなくて良いのか?」

「いいよ、それにパーティーになったんだから、名字で呼ばれるよりも名前の方がいいでしょ?」

「そんなものか?」

「そんなものだよ」

「そうか、それなら改めて、これからよろしくセリカ」

「うん、これからよろしくね、ロキ」
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