36 / 65
2章 拠点編
34話 元奴隷は総隊長にチョコを分ける
しおりを挟む
「いや~、コボルトは酷い味だね。あれだけは、死にかけて他に食料が無いという時にしか口にしたくないね。
でも、他は美味しかったから、研究部隊の人間も交代で食事に来させるよ」
そう言って、さっきまでコボルトの味で声の無い叫び声を上げていたワタナベは俺達を置いて、研究に戻って行った。
因みに、ムタイはコボルトが本当にだめなのか、オークの豚汁を先に完食し、スマッシュボアとコボルトの焼肉を残して難しい顔をしている。
俺はコボルトなんて食べたくないので、口の中をスライムに変身させてスマッシュボアの焼肉を完食してから、今はオークの豚汁を食べている。
「お~い、ムタイ。焼けばコボルトとスマッシュボアの見分けは付けられないから、諦めて食え」
「くっ、分かった。南無三っ。
っ!?っ~~~~~!?っ、っ!!ふう、ご馳走様でした」
ムタイは残していたスマッシュボアとコボルトの肉を一気に食べてから、素早く食器を返却し、足早にフードコートを後にした。
俺もほとんど食べ終わりかけだったので、残りを腹の中に流し込んで、食器を返却しムタイを追った。
ムタイに追いついたのは、ムタイが家に入ったタイミングだった。
ムタイは家に入ると、即座に膝を付き口を押さえて転げ回った。
「あ~、大丈夫か?」
俺はそんなムタイを見て声を掛けたが、ムタイは転げ回りながら、器用に首を横に振った。
俺はそんなムタイを見て、フードコートを足早に後にしたのは、転げ回る為かと理解して、ポーチから外からは確認出来ない位置で板チョコを取り出し、ムタイに聞いた。
「とりあえず俺の部屋に来るか?」
俺が板チョコを出したのを見て、ムタイは器用に頷いた。
「すぅ~、はぁ~。ありがとう、ロキ。もう大丈夫だ」
「別に構わないが、そんなに苦手なら残すか俺に食わせれば良かっただろ?」
「それでも、コボルトの調理を認めてしまったのは私だからな。苦手だからといって、逃げるのは嫌だっただけだ。
まあ、それで口直しに板チョコを分けて貰っていては、世話はないが」
「良いんじゃないか?だって、防衛部隊と遊撃部隊には自身が回収した物資を1つだけ貰えるんだろ?」
「まあ、そうだが」
俺の言葉を理解している様だったが、納得はしていない様だった。
それを見て、話を変えるために質問した。
「それより、明日は好きにしていいか?」
「明日か?まあ、構わないが。なぜだ?」
「ここら一帯の探索と食料の確保、後は魔物に変な動きがないかの確認、更に俺が駅に捨てて来た匂いに寄って来た魔物がどう動いているかを確認するつもりだ」
「む、それなら私も行くが」
「ああ、俺も本当なら来てほしいが、今日のコボルトを食っていた様子からして、馬鹿共は明日も懲りずに持って来そうだからな。
俺かムタイは、ここに居た方が良いだろ?」
「ああ、それなら管理部隊に解体を教えておいたから、まあなんとかなるだろ」
「おいおい、ムタイが解体をすぐに覚えられたのは、触れることで魔石の質を理解出来たからだろう?
流石に1日だとムタイ並みの魔法使いが居ないと、かなり不安だぞ?それでも来るのか?」
俺がそう聞くと、ムタイは疲れたような顔をした。
「確かにそうなのだが、一度は痛い目を見たほうが良いと思うんだ」
「痛い目って、確かに下手に解体をしても1日トイレから離れられないくらいだが、それでも魔力を抜いていない魔物を食うのはオススメ出来ないんだが」
「それも分かってるが、今日の魔物の肉で味を占めたのか、『明日も取って来よう』と話している班が居た。
もちろん、その班には注意をしたが、他の班も似たようなものだろう。それなら朝の会議で周辺を調べると言って、明日は拠点から離れてロキと行動しようと思ってな」
ムタイの言葉を聞いて、始めはなんで下手をしたら拠点に居た全員から恨まれるような事をしようとしているのかと考えた。
そして、数秒してから、ムタイの狙いに気付いた。
「あ~、分かった。まあバカは痛い目を見ないと直らないというし、むしろ死んでも直らない時もある。それなら、周りで無理矢理押さえ付けるということか?」
「流石に分かるか。魔物の肉を食うのは、何もバカだけではなく、この拠点の人間全員だ。子供や老人も居るから、あまりやりたくない手ではある。
だが、下手に私や部隊の隊長達が押さえ付けて不満を爆発させるよりも、余裕があるときに爆発させ、自主的に周りの人間に押さえて貰おうと思ってな。それに、下手な手を打ってロキに負担を増やしたくないからな」
「俺の負担というと、俺を睨んできてたやつらか?」
「気付いてたのか?」
「まあ、あれだけ近くで睨まれたりしたら、どれだけ鈍くとも気付くだろ。
だが、バカは追い詰められると視野が狭くなるからな。襲われるのは嫌だぞ?」
「そこは私や瀬里香、他の隊長と一緒に居れば大丈夫な筈だ」
「まあ、そう、だな?(いや、その隊長の中の1人にも睨まれてたんだけど)」
ムタイの話を聞いて、そう言いたかったが、ぐっと我慢して言わなかった。
確かに俺を睨んできた奴は、ある程度の数が居た。
だが、その中でも最も強烈な感情が目に宿って居たのは、あの眼鏡だった。
そして、ここに着いてから聞いた話の中で、その眼鏡が制作部隊の隊長だという事も聞いた。
なので、ムタイが言っている他の隊長と居れば問題はないというのは、間違っていそうなのだが、人間関係まで完全にムタイに押し付ける訳にはいかないしな。
うん、出来るだけあの眼鏡には近付かないようにしよう。
俺は微妙な返答をした俺を首を傾げながら見ているムタイから目を逸しつつ、そんな事を考えていた。
でも、他は美味しかったから、研究部隊の人間も交代で食事に来させるよ」
そう言って、さっきまでコボルトの味で声の無い叫び声を上げていたワタナベは俺達を置いて、研究に戻って行った。
因みに、ムタイはコボルトが本当にだめなのか、オークの豚汁を先に完食し、スマッシュボアとコボルトの焼肉を残して難しい顔をしている。
俺はコボルトなんて食べたくないので、口の中をスライムに変身させてスマッシュボアの焼肉を完食してから、今はオークの豚汁を食べている。
「お~い、ムタイ。焼けばコボルトとスマッシュボアの見分けは付けられないから、諦めて食え」
「くっ、分かった。南無三っ。
っ!?っ~~~~~!?っ、っ!!ふう、ご馳走様でした」
ムタイは残していたスマッシュボアとコボルトの肉を一気に食べてから、素早く食器を返却し、足早にフードコートを後にした。
俺もほとんど食べ終わりかけだったので、残りを腹の中に流し込んで、食器を返却しムタイを追った。
ムタイに追いついたのは、ムタイが家に入ったタイミングだった。
ムタイは家に入ると、即座に膝を付き口を押さえて転げ回った。
「あ~、大丈夫か?」
俺はそんなムタイを見て声を掛けたが、ムタイは転げ回りながら、器用に首を横に振った。
俺はそんなムタイを見て、フードコートを足早に後にしたのは、転げ回る為かと理解して、ポーチから外からは確認出来ない位置で板チョコを取り出し、ムタイに聞いた。
「とりあえず俺の部屋に来るか?」
俺が板チョコを出したのを見て、ムタイは器用に頷いた。
「すぅ~、はぁ~。ありがとう、ロキ。もう大丈夫だ」
「別に構わないが、そんなに苦手なら残すか俺に食わせれば良かっただろ?」
「それでも、コボルトの調理を認めてしまったのは私だからな。苦手だからといって、逃げるのは嫌だっただけだ。
まあ、それで口直しに板チョコを分けて貰っていては、世話はないが」
「良いんじゃないか?だって、防衛部隊と遊撃部隊には自身が回収した物資を1つだけ貰えるんだろ?」
「まあ、そうだが」
俺の言葉を理解している様だったが、納得はしていない様だった。
それを見て、話を変えるために質問した。
「それより、明日は好きにしていいか?」
「明日か?まあ、構わないが。なぜだ?」
「ここら一帯の探索と食料の確保、後は魔物に変な動きがないかの確認、更に俺が駅に捨てて来た匂いに寄って来た魔物がどう動いているかを確認するつもりだ」
「む、それなら私も行くが」
「ああ、俺も本当なら来てほしいが、今日のコボルトを食っていた様子からして、馬鹿共は明日も懲りずに持って来そうだからな。
俺かムタイは、ここに居た方が良いだろ?」
「ああ、それなら管理部隊に解体を教えておいたから、まあなんとかなるだろ」
「おいおい、ムタイが解体をすぐに覚えられたのは、触れることで魔石の質を理解出来たからだろう?
流石に1日だとムタイ並みの魔法使いが居ないと、かなり不安だぞ?それでも来るのか?」
俺がそう聞くと、ムタイは疲れたような顔をした。
「確かにそうなのだが、一度は痛い目を見たほうが良いと思うんだ」
「痛い目って、確かに下手に解体をしても1日トイレから離れられないくらいだが、それでも魔力を抜いていない魔物を食うのはオススメ出来ないんだが」
「それも分かってるが、今日の魔物の肉で味を占めたのか、『明日も取って来よう』と話している班が居た。
もちろん、その班には注意をしたが、他の班も似たようなものだろう。それなら朝の会議で周辺を調べると言って、明日は拠点から離れてロキと行動しようと思ってな」
ムタイの言葉を聞いて、始めはなんで下手をしたら拠点に居た全員から恨まれるような事をしようとしているのかと考えた。
そして、数秒してから、ムタイの狙いに気付いた。
「あ~、分かった。まあバカは痛い目を見ないと直らないというし、むしろ死んでも直らない時もある。それなら、周りで無理矢理押さえ付けるということか?」
「流石に分かるか。魔物の肉を食うのは、何もバカだけではなく、この拠点の人間全員だ。子供や老人も居るから、あまりやりたくない手ではある。
だが、下手に私や部隊の隊長達が押さえ付けて不満を爆発させるよりも、余裕があるときに爆発させ、自主的に周りの人間に押さえて貰おうと思ってな。それに、下手な手を打ってロキに負担を増やしたくないからな」
「俺の負担というと、俺を睨んできてたやつらか?」
「気付いてたのか?」
「まあ、あれだけ近くで睨まれたりしたら、どれだけ鈍くとも気付くだろ。
だが、バカは追い詰められると視野が狭くなるからな。襲われるのは嫌だぞ?」
「そこは私や瀬里香、他の隊長と一緒に居れば大丈夫な筈だ」
「まあ、そう、だな?(いや、その隊長の中の1人にも睨まれてたんだけど)」
ムタイの話を聞いて、そう言いたかったが、ぐっと我慢して言わなかった。
確かに俺を睨んできた奴は、ある程度の数が居た。
だが、その中でも最も強烈な感情が目に宿って居たのは、あの眼鏡だった。
そして、ここに着いてから聞いた話の中で、その眼鏡が制作部隊の隊長だという事も聞いた。
なので、ムタイが言っている他の隊長と居れば問題はないというのは、間違っていそうなのだが、人間関係まで完全にムタイに押し付ける訳にはいかないしな。
うん、出来るだけあの眼鏡には近付かないようにしよう。
俺は微妙な返答をした俺を首を傾げながら見ているムタイから目を逸しつつ、そんな事を考えていた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる