黒色の令嬢と金色の側近

ロシキ

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1章 令嬢の決闘

16話 王妃への口撃

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王妃様は王家の観覧席で座って決闘を見ていたが、私達が勝った瞬間から震えだし、勝敗が宣言される前に、その宣言を止めた。

「あの2人はあらゆる毒物を作り出す『異能』と特定の物を不可視化させる『異能』の持ち主なのですよ!!なのに、なぜ負けるですか!!一体何をしたのです!!」

王妃様の言葉で私は決闘が開始されたのに、私がそれに気が付かなかった事に納得した。
私は他者の『異能』が効かないとはいえ、『異能』により現実に作り出した物ならば、物理的に効く。

なので、恐らく『異能』で思考が鈍化するような毒を作り、その毒を不可視化の『異能』で消してから、私に使ったのでだろう。
もしかしたら、決闘もニードレッドが居てくれなかったら、戦闘不能になっていたかもしれない。

ただ王妃様は2人も『異能者』を用意しただけなら問題は無かったけど、王妃様が用意した『異能者』は、私達は知らないし聞いた事もない。
なので、恐らくあの2人はどこの国にも属しておらず、また確認もされていなかった『異能者』だ。

よって王妃様はもう終わりと言える。

「なるほど、なるほど、あらゆる毒物を作り出す『異能』と特定の物を不可視化させる『異能』ですか。では、その2人は何処の国が所在地なのですか?」

『異能者』は人間ではかなわない『異害獣』に対抗できる唯一の手段のため、例え国に仕えなくとも現在滞在している国を明らかにする必要がある。
そして、この国に王妃様が、いやアレが言ったような『異能』の持ち主は入国してきていない。
さらにあらゆる毒物を作り出すという王侯貴族に取っては危険極まりない『異能』の持ち主ならば、表に出ている場合は私の情報網に引っかからないはずがない。

ようするにアレは墓穴を掘ったのだ。
それを私の言葉で理解したアレは口をパクパクとさせていたが、国王陛下の判断は早かった。

「王妃を自室へと連れて行き、軟禁しておけ!!此度の『異能者』の事は聞かねばならん!!」

そう言ってからアレは自室に連れて行かれた。
それを確認してから、私は国王陛下にこう持ちかけた。

「国王陛下。先程の2人は生き返らせてから、私の『異害獣』討伐に同行させたいのですが、よろしいですか?」

「な!!そ、それは、」

国王陛下は私の提案に言葉を詰ませた。
私の提案は存外に「王妃様があらゆる毒物を作り出す『異能』と不可視化の『異能』の持ち主を私に管理させろ」といったのだ。
更にタイミング的には、私に管理させなければアレが2人をどのようにして連れてきたのか、徹底的に暴くと言っているのと同じだ。

「お待ち頂きたい、ノーザス公爵」

そう言って私と国王陛下の会話に待ったをかけたのは、モーテクス公爵だった。
現モーテクス公爵はアレの兄にあたり、アレが王妃になり前国王夫妻が亡くなると、急に強気になって相応以上の権力を持った公爵だ。

もちろん、公爵家としてなら相応の権力なのだろうけど、現モーテクス公爵家には公爵家に相応しい人間が居ない。
現モーテクス公爵の兄弟姉妹達にも人格者と言える人間は居らず、現モーテクス公爵が公爵になる前に公爵になると予想されていたが、そうなる前に亡くなった次男の方が余程相応しい。

そんな事を考えながらも、それを表面には出さずに返答をした。

「なんでしょうか、モーテクス公爵」

「あの2人については私が責任を持って対処しますので、私に任せては頂けないでしょうか?」

何時もはもう少し荒い口調なのに、今だけは丁寧な言葉で言ってきたので何かと思えば、調べられたら困るので、こっちに身柄を寄越せと言っているだけか。
論外だな。

「はて、モーテクス公爵が対処する必要は無いと思いますよ?特にあの2人は『異能者』ですから、『異能者』である私やニードレッドが対処するのが、最善でしょう」

「確かにその通りではありますが、現在のノーザス公爵家が抱える『異能者』だけでも国を、いえ世界を覆せる程でしょう?それ程までのがあるとなると、少し心配になってしまうのですよ」

それに便乗してから、席にいる貴族達からも戦力差を心配するような声が聞こえるようになってきた。
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