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3話
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私は辺境伯家が救援を求めていないと言う可能性を前にして、自然と鳥肌が立ってしまった。
それを抑えつつ、辺境伯家が救援を求めていない事を前提に手紙を読み直した。
確かに、今読み返すと色々とおかしいところが目立つ。
辺境は王国の魔物対策の最前線と言って良い。
だからこそ『教会』が崩壊し、『結界』が無くなった後でも、隣接している領地に救援を出す事は間違いじゃない。
でも、その状況で一番困難が大きく、多いのは辺境である事は動かしようがない。
特に『天使』様が相手取っても、『教会』を崩壊させてしまうような強大な魔物相手では、辺境伯家は民も含めて全滅してしまう可能性と高い。
それなのに隣接している領地に救援を求めるのではなく、救援を送れるなんて普段から、どれだけ準備をしているのだろうか?
とも考える事が出来る。
でも、こうも考える事が出来る。
人間では推し測れない『天使』様を相手に『教会』壊せる魔物相手に、いくら辺境でも余力が残るのはおかしい。
そして、私なら後者の考えに同意出来る。
何故なら、私とギルは王国貴族が結婚する際に暗黙の了解とされていた学園も、後半年もすれば卒業している時期になる。
更にその半年後、つまり今から1年もすれば、結婚式も待っているし、既に辺境伯家の戦力は大体教えて頂いている。
その戦力からして、どう考えても余力なんて残せないし、隣接している2つの領地に援軍なんて出せない。
少なくとも『結界』が破られるほどの大物か、膨大な数の魔物が出たら、援軍なんて出せない。
つまり、本当に救援と援軍は求めてないし、さっきの手紙は現状報告に近い?
でも、そうなると『教会』の崩壊はおかしい。
『教会』の重要性は辺境伯家の人達が一番良く分かっている。
でも、『天使』様は『教会』が崩壊した時には『顕現』し、戦闘をして居られたらしい。
つまり、事実として『天使』様は『顕現』して居たからこそ、こちらに残られている。
そうでないと、こちらに残られている都合が理解出来ない。
でも、『天使』様でも止められない様な強大な魔物を相手にしたのに、辺境伯家にそこまでの余力があるとは思えない。
そこまで考えた所で、私は一度考えるのを辞めた。
「駄目だ、何度考えても分からない。
同じ疑問と同じ答えに行き着いて、ぐるぐると回って来てしまう。
こういう時は整理しましょう。
つまり、『天使』様と戦いながら、『教会』を壊したものの、辺境伯家の戦力はあまり減らさなかった魔物が居れば解決?」
私は自分でそう言ってから、おかしくなって笑ってしまった。
仮に私が言葉にした通りの魔物が居るなら、全ての辻褄は合う事になる。
でも、それは『人間は自前の翼で大空を自由に飛べて、更になんの対策も無しに海の底でも呼吸が出来る』と豪語する様なもの。
つまり、あり得ない。
それこそ、『天使』様を相手取っている途中で『教会』が目に付いて、苛ついたから攻撃して崩壊させた方が可能性がある。
そもそも、私は手紙の中にある『偽り』を探していたのに、思考が違う方に流れてしまった。
でも、今回の『偽り』は本当に探すのが難しい。
もう少しきちんと整理しよう。
手紙に書かれていた『現状』は、辺境の『教会』が強大な魔物相手に崩壊させられた事。
それが『天使』様の『顕現』時に起こった事。
『天使』様と言葉を交わせる事。
『天使』様が力を失っている事。
混乱があったものの、既に収まっている事。
以上の5つが『現状』、この中でも偽ってもいい条件を満たしているのは最後くらい。
でも、最後の事を偽っても意味が無い。
つまり、他に婚約者への手紙を他者に見られるという極小の可能性を考えなければならない『現状』、いや『事実』がある?
他者に見られて困る『事実』となると、人間が『教会』を破壊したくらいしか思い付かない。
でも、それだって後々『天使』様達は、『教会』を破壊した人間や、それを指示した人間等、破壊に関わった人間全員を攻撃するから、割に合わない。
これはかなり有名な話で、国政として『教会』を破壊していった国が破滅したお伽噺もあるくらいだから、そんな事をする大馬鹿は居ないはず。
そこまで考えた所で、とてつもなく嫌な予測が立ってしまった。
その予測を否定する為に、その予測を言葉に出して整理した。
「仮に馬鹿な真似をしようとする大馬鹿が居たとしても、そもそも受ける人間が居ないはず。
仮に居たとしても、かなりの値段を報酬としないと受けない。
つまり、落ち目の公爵家では払える額ではない、可能性が高い筈」
私はそこまで口に出しても、あの公爵ならやりかねないと考えてしまう自分が居る事に気が付いていた。
それからは必死に、そのあってはならない事を否定する要素を探したものの、見つからなかった。
そして、そのままお父様が帰ってくると言うタイムリミットを迎えた。
私はお父様が帰宅してから、すぐに書斎に呼ばれた。
その為に、ギルからの手紙の写しを持って書斎に向かった。
そのまま書斎に入ると、お父様以外は誰もおらず、お父様はとても悪い顔色をしていた。
しかし、その事を質問する前に、お父様が私に質問してきた。
「マーガレット、率直に聞く。
ギルベルトからの手紙はどうだった?」
「どう、ですか。
感想を言うなら、『見なかった事にしたい手紙だった』、でしょうか?」
「そうか。
内容は私も見させてもらったが、そこまで酷い内容では無いように思えた。
一体、どこを見なかった事にしたいんだい?」
「そうですね。
何箇所かありますが、救援を求めていないだろう所と『教会』の破壊の部分ですね」
「救援の部分は分かったが、『破壊』、そうか『破壊』か」
そう呟いたお父様の表情は、とても悪かった。
その表情を見て、私は質問した。
「お父様、どうなさったのですか?
確かに手紙の件は衝撃でしたが、ギルが手紙に書いたなら3ヶ月もすれば落ち着く筈です。
もちろん、それ以降も油断は出来ませんが、あくまでも油断が出来ないだけ。
お父様が、そこまで悩むような事はないと思いますが」
お父様は私の言葉に反応しつつも、返答はしてくれなかった。
その後は、何かを言おうとして口を開いて、すぐに閉じてを繰り返していた。
それがしばらく続いた後に、お父様は意を決したように、私に言った。
「マーガレット、落ち着いて聞いておくれ。
王城で辺境伯家の状況を報告した後に、マーガレットとギルベルトの婚約破棄、そしてマーガレットとレストレス公爵の結婚を持ちかけられた」
それを抑えつつ、辺境伯家が救援を求めていない事を前提に手紙を読み直した。
確かに、今読み返すと色々とおかしいところが目立つ。
辺境は王国の魔物対策の最前線と言って良い。
だからこそ『教会』が崩壊し、『結界』が無くなった後でも、隣接している領地に救援を出す事は間違いじゃない。
でも、その状況で一番困難が大きく、多いのは辺境である事は動かしようがない。
特に『天使』様が相手取っても、『教会』を崩壊させてしまうような強大な魔物相手では、辺境伯家は民も含めて全滅してしまう可能性と高い。
それなのに隣接している領地に救援を求めるのではなく、救援を送れるなんて普段から、どれだけ準備をしているのだろうか?
とも考える事が出来る。
でも、こうも考える事が出来る。
人間では推し測れない『天使』様を相手に『教会』壊せる魔物相手に、いくら辺境でも余力が残るのはおかしい。
そして、私なら後者の考えに同意出来る。
何故なら、私とギルは王国貴族が結婚する際に暗黙の了解とされていた学園も、後半年もすれば卒業している時期になる。
更にその半年後、つまり今から1年もすれば、結婚式も待っているし、既に辺境伯家の戦力は大体教えて頂いている。
その戦力からして、どう考えても余力なんて残せないし、隣接している2つの領地に援軍なんて出せない。
少なくとも『結界』が破られるほどの大物か、膨大な数の魔物が出たら、援軍なんて出せない。
つまり、本当に救援と援軍は求めてないし、さっきの手紙は現状報告に近い?
でも、そうなると『教会』の崩壊はおかしい。
『教会』の重要性は辺境伯家の人達が一番良く分かっている。
でも、『天使』様は『教会』が崩壊した時には『顕現』し、戦闘をして居られたらしい。
つまり、事実として『天使』様は『顕現』して居たからこそ、こちらに残られている。
そうでないと、こちらに残られている都合が理解出来ない。
でも、『天使』様でも止められない様な強大な魔物を相手にしたのに、辺境伯家にそこまでの余力があるとは思えない。
そこまで考えた所で、私は一度考えるのを辞めた。
「駄目だ、何度考えても分からない。
同じ疑問と同じ答えに行き着いて、ぐるぐると回って来てしまう。
こういう時は整理しましょう。
つまり、『天使』様と戦いながら、『教会』を壊したものの、辺境伯家の戦力はあまり減らさなかった魔物が居れば解決?」
私は自分でそう言ってから、おかしくなって笑ってしまった。
仮に私が言葉にした通りの魔物が居るなら、全ての辻褄は合う事になる。
でも、それは『人間は自前の翼で大空を自由に飛べて、更になんの対策も無しに海の底でも呼吸が出来る』と豪語する様なもの。
つまり、あり得ない。
それこそ、『天使』様を相手取っている途中で『教会』が目に付いて、苛ついたから攻撃して崩壊させた方が可能性がある。
そもそも、私は手紙の中にある『偽り』を探していたのに、思考が違う方に流れてしまった。
でも、今回の『偽り』は本当に探すのが難しい。
もう少しきちんと整理しよう。
手紙に書かれていた『現状』は、辺境の『教会』が強大な魔物相手に崩壊させられた事。
それが『天使』様の『顕現』時に起こった事。
『天使』様と言葉を交わせる事。
『天使』様が力を失っている事。
混乱があったものの、既に収まっている事。
以上の5つが『現状』、この中でも偽ってもいい条件を満たしているのは最後くらい。
でも、最後の事を偽っても意味が無い。
つまり、他に婚約者への手紙を他者に見られるという極小の可能性を考えなければならない『現状』、いや『事実』がある?
他者に見られて困る『事実』となると、人間が『教会』を破壊したくらいしか思い付かない。
でも、それだって後々『天使』様達は、『教会』を破壊した人間や、それを指示した人間等、破壊に関わった人間全員を攻撃するから、割に合わない。
これはかなり有名な話で、国政として『教会』を破壊していった国が破滅したお伽噺もあるくらいだから、そんな事をする大馬鹿は居ないはず。
そこまで考えた所で、とてつもなく嫌な予測が立ってしまった。
その予測を否定する為に、その予測を言葉に出して整理した。
「仮に馬鹿な真似をしようとする大馬鹿が居たとしても、そもそも受ける人間が居ないはず。
仮に居たとしても、かなりの値段を報酬としないと受けない。
つまり、落ち目の公爵家では払える額ではない、可能性が高い筈」
私はそこまで口に出しても、あの公爵ならやりかねないと考えてしまう自分が居る事に気が付いていた。
それからは必死に、そのあってはならない事を否定する要素を探したものの、見つからなかった。
そして、そのままお父様が帰ってくると言うタイムリミットを迎えた。
私はお父様が帰宅してから、すぐに書斎に呼ばれた。
その為に、ギルからの手紙の写しを持って書斎に向かった。
そのまま書斎に入ると、お父様以外は誰もおらず、お父様はとても悪い顔色をしていた。
しかし、その事を質問する前に、お父様が私に質問してきた。
「マーガレット、率直に聞く。
ギルベルトからの手紙はどうだった?」
「どう、ですか。
感想を言うなら、『見なかった事にしたい手紙だった』、でしょうか?」
「そうか。
内容は私も見させてもらったが、そこまで酷い内容では無いように思えた。
一体、どこを見なかった事にしたいんだい?」
「そうですね。
何箇所かありますが、救援を求めていないだろう所と『教会』の破壊の部分ですね」
「救援の部分は分かったが、『破壊』、そうか『破壊』か」
そう呟いたお父様の表情は、とても悪かった。
その表情を見て、私は質問した。
「お父様、どうなさったのですか?
確かに手紙の件は衝撃でしたが、ギルが手紙に書いたなら3ヶ月もすれば落ち着く筈です。
もちろん、それ以降も油断は出来ませんが、あくまでも油断が出来ないだけ。
お父様が、そこまで悩むような事はないと思いますが」
お父様は私の言葉に反応しつつも、返答はしてくれなかった。
その後は、何かを言おうとして口を開いて、すぐに閉じてを繰り返していた。
それがしばらく続いた後に、お父様は意を決したように、私に言った。
「マーガレット、落ち着いて聞いておくれ。
王城で辺境伯家の状況を報告した後に、マーガレットとギルベルトの婚約破棄、そしてマーガレットとレストレス公爵の結婚を持ちかけられた」
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