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私はお父様を見送ってから、すぐに私の部屋に籠もった。
侍女達には『少し落ち着きたいの』と少しだけ表情を暗くしてお願いすると、『御用の際はお呼びください』と言って下がってくれた。
それから私はすぐに紙とペンを取り出し、ギルからの手紙を覚えているだけ、出来るだけ正確に書き起こした。
それから私はお父様の『意見を聞きたい』という言葉を思い出し、この件はただの事故ではないかもしれないと考えた。
そもそもギルと私が手紙を交わす時には、誰に見られても良いように、手紙に残したくは無いが伝えたい事を手紙のあちこちに隠して書き上げる事がある。
いわゆる暗号と呼ばれる物に該当するかもしれない、それのルールは多い。
ただ今回は、その暗号も極端に少なかった。
今回、暗号になっていたのは『暗号がある事』、『手紙の内容が真実である事』、そして『手紙の内容が偽りである事』、最後に『真実、もしくは偽りが1つ目にある事』の4つ。
でも、それでは暗号として意味が分からない。
だからこそ、一瞬だけ暗号が無い事を考えたけれど、手紙には確実に暗号が含まれている事が書かれている。
私とギルは手紙をやり取りする時には、名前を基本的に愛称で書き合う。
私ならマリー、ギルベルトならギルと書く。
それなのに今回は私をマーガレット、ギルをギルベルトと書いていた。
この変化が2人だけに通じる、暗号がある時の合図。
次に、始めの『愛しの婚約者、マーガレットへ』と終わりの『君の愛しの婚約者 ギルベルト・スラトバールより』の部分。
これは名前の前に読点が入っている事が真実だという合図で、入っていないのが偽りだという合図になっている。
本来なら両方統一する事でより正確に伝える暗号。
だけど、今回のように統一していない時は『真実の中に偽の情報が含まれている』、または『偽の情報の中に真実がある』という合図になる。
また、『真実』の合図が先に来ているので、『真実の中に偽りの情報が紛れている』という事になる。
そして、それが書かれている場所は、どこかの1つ目。
これは名前の後、最初の3文によって示されていて、最初の文から少し間を開けて、次の文を書き始めている事が合図になっている。
より正確に読み解くなら、今回の手紙の内容が『現状』、『対策』、『お願い』で分かれていて、この3つを最初の3文に見立てている。
つまり、『現状』に着眼点を当てて欲しいという事を、ギルは私に伝えている。
ここまで考えてから、私は一度落ち着く為にペンを置いた。
本当なら、少しでも早くギル自身の現状が知りたい。
けれど心配しすぎて、ギルからのメッセージを見落としてしまったら、それこそギルの婚約者として相応しくない。
だから、落ち着い手紙を読み直した。
手紙を読んでから、すぐに書き起こした手紙は暗号の部分を含めて、完璧に書き起こされていた。
これまで教育でも暗記と速読は苦手分野だったけれど、苦手だったからこそ、意識して練習していた事の成果が出た。
その事に安堵しつつ、暗号について考え始めた。
まず『現状』と『対策』について、どちらかの内容が全て偽りになってしまうと、手紙の内容が根本から変わってしまって『真実』ではなくなる。
つまり、『現状』と『対策』のどちらか全てが偽りでは無く、ほとんどの『真実』の中に『偽り』が紛れている。
でも『現状』の中に『偽り』があったら、それに連動して『対策』もズレてしまう。
そう考えると、『対策』がズレない『現状』という範囲に絞ることが出来る。
『対策』がズレない範囲での『偽り』は『天使様と言葉が交わせる』という部分。
つまり、この部分が『偽り』?
そこまで考えてから、私は座っていた椅子の背もたれに体重を預けた。
そして、今出した結論が手紙の内容と合っているかを、出て来た疑問に沿って考えていた。
「そもそも『天使』様の新たな器を見つけられたとして、どうやって器にするの?
それに『天使』様の器だった『教会』は、不変性と象徴性という物があるからこそ、『天使』様の力を受け止める事が出来ていた。
それなのに代用出来る物があるものなの?
いや、問題は、それを今確かめる事が出来る?
出来たとしても、『天使』様と言葉を交わせなければ、相当な時間の浪費に繋がってしまう筈。
ギルも、お義父様も、お義母様も、『教会』が壊れている状況で、時間を浪費するような人では無い。
つまり、『天使』様と言葉を交わせたのは間違いではない?」
私はそこまで自己完結すると、目を左手で覆って、暗号について、もう一度考えた。
それでも『天使』様の以外の部分で『偽り』でも良い部分が見つからなかった。
それに少しだけ苛ついてしまって、暗号が少なすぎるギルに対して、文句を言ってしまった。
「ギル自身どころか、お義父様や、お義母様の現状も書かないなんて、少し薄情じゃないからしら。
それに『教会』が壊れてしまっているのだから、少しくらい私に弱音を吐いてくれたって良いし、救援物資を送って欲しい、とか?」
私は誰にも聞かれない文句を言っている途中で、言葉を止めた。
そして、すぐに私が書き起こした手紙を読み直した後、もう一度ギルからの手紙を思い出し、差異が無いことを確認した。
それを確認してから、仮に細かい部分は違っても、大筋と暗記の部分だけは注視していたから、そこに関しては間違っていない事に確信を持った。
そして、私の文句から辿り着いた普通ならあり得ない可能性に驚き、その可能性を誰にも聞かれないように、小声で口に出した。
「まさかギルは、いえ辺境伯家全体が『教会』が崩壊し、『結界』が消えた現状でも救援や増援を求めていない?」
侍女達には『少し落ち着きたいの』と少しだけ表情を暗くしてお願いすると、『御用の際はお呼びください』と言って下がってくれた。
それから私はすぐに紙とペンを取り出し、ギルからの手紙を覚えているだけ、出来るだけ正確に書き起こした。
それから私はお父様の『意見を聞きたい』という言葉を思い出し、この件はただの事故ではないかもしれないと考えた。
そもそもギルと私が手紙を交わす時には、誰に見られても良いように、手紙に残したくは無いが伝えたい事を手紙のあちこちに隠して書き上げる事がある。
いわゆる暗号と呼ばれる物に該当するかもしれない、それのルールは多い。
ただ今回は、その暗号も極端に少なかった。
今回、暗号になっていたのは『暗号がある事』、『手紙の内容が真実である事』、そして『手紙の内容が偽りである事』、最後に『真実、もしくは偽りが1つ目にある事』の4つ。
でも、それでは暗号として意味が分からない。
だからこそ、一瞬だけ暗号が無い事を考えたけれど、手紙には確実に暗号が含まれている事が書かれている。
私とギルは手紙をやり取りする時には、名前を基本的に愛称で書き合う。
私ならマリー、ギルベルトならギルと書く。
それなのに今回は私をマーガレット、ギルをギルベルトと書いていた。
この変化が2人だけに通じる、暗号がある時の合図。
次に、始めの『愛しの婚約者、マーガレットへ』と終わりの『君の愛しの婚約者 ギルベルト・スラトバールより』の部分。
これは名前の前に読点が入っている事が真実だという合図で、入っていないのが偽りだという合図になっている。
本来なら両方統一する事でより正確に伝える暗号。
だけど、今回のように統一していない時は『真実の中に偽の情報が含まれている』、または『偽の情報の中に真実がある』という合図になる。
また、『真実』の合図が先に来ているので、『真実の中に偽りの情報が紛れている』という事になる。
そして、それが書かれている場所は、どこかの1つ目。
これは名前の後、最初の3文によって示されていて、最初の文から少し間を開けて、次の文を書き始めている事が合図になっている。
より正確に読み解くなら、今回の手紙の内容が『現状』、『対策』、『お願い』で分かれていて、この3つを最初の3文に見立てている。
つまり、『現状』に着眼点を当てて欲しいという事を、ギルは私に伝えている。
ここまで考えてから、私は一度落ち着く為にペンを置いた。
本当なら、少しでも早くギル自身の現状が知りたい。
けれど心配しすぎて、ギルからのメッセージを見落としてしまったら、それこそギルの婚約者として相応しくない。
だから、落ち着い手紙を読み直した。
手紙を読んでから、すぐに書き起こした手紙は暗号の部分を含めて、完璧に書き起こされていた。
これまで教育でも暗記と速読は苦手分野だったけれど、苦手だったからこそ、意識して練習していた事の成果が出た。
その事に安堵しつつ、暗号について考え始めた。
まず『現状』と『対策』について、どちらかの内容が全て偽りになってしまうと、手紙の内容が根本から変わってしまって『真実』ではなくなる。
つまり、『現状』と『対策』のどちらか全てが偽りでは無く、ほとんどの『真実』の中に『偽り』が紛れている。
でも『現状』の中に『偽り』があったら、それに連動して『対策』もズレてしまう。
そう考えると、『対策』がズレない『現状』という範囲に絞ることが出来る。
『対策』がズレない範囲での『偽り』は『天使様と言葉が交わせる』という部分。
つまり、この部分が『偽り』?
そこまで考えてから、私は座っていた椅子の背もたれに体重を預けた。
そして、今出した結論が手紙の内容と合っているかを、出て来た疑問に沿って考えていた。
「そもそも『天使』様の新たな器を見つけられたとして、どうやって器にするの?
それに『天使』様の器だった『教会』は、不変性と象徴性という物があるからこそ、『天使』様の力を受け止める事が出来ていた。
それなのに代用出来る物があるものなの?
いや、問題は、それを今確かめる事が出来る?
出来たとしても、『天使』様と言葉を交わせなければ、相当な時間の浪費に繋がってしまう筈。
ギルも、お義父様も、お義母様も、『教会』が壊れている状況で、時間を浪費するような人では無い。
つまり、『天使』様と言葉を交わせたのは間違いではない?」
私はそこまで自己完結すると、目を左手で覆って、暗号について、もう一度考えた。
それでも『天使』様の以外の部分で『偽り』でも良い部分が見つからなかった。
それに少しだけ苛ついてしまって、暗号が少なすぎるギルに対して、文句を言ってしまった。
「ギル自身どころか、お義父様や、お義母様の現状も書かないなんて、少し薄情じゃないからしら。
それに『教会』が壊れてしまっているのだから、少しくらい私に弱音を吐いてくれたって良いし、救援物資を送って欲しい、とか?」
私は誰にも聞かれない文句を言っている途中で、言葉を止めた。
そして、すぐに私が書き起こした手紙を読み直した後、もう一度ギルからの手紙を思い出し、差異が無いことを確認した。
それを確認してから、仮に細かい部分は違っても、大筋と暗記の部分だけは注視していたから、そこに関しては間違っていない事に確信を持った。
そして、私の文句から辿り着いた普通ならあり得ない可能性に驚き、その可能性を誰にも聞かれないように、小声で口に出した。
「まさかギルは、いえ辺境伯家全体が『教会』が崩壊し、『結界』が消えた現状でも救援や増援を求めていない?」
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