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番外編 『王国学園』編
41話
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部屋から出て、アリアの家がある建物を出ると、教会の人間が1人で立っていた。
その人間は、見た目は顔は老人に見えるものの、しっかりとした体格と皺はあっても若々しく見える背格好をしていた。
なにより左目に魔眼があり、色は紫だが、なんの魔法を使ってくるのか予想が出来なかった。
それに眉を顰めてしまいそうになるのを耐えて、教会の人間に話し掛けた。
「お名前は存じませんが、私のお披露目会に居られた教会の方々の、お一人ですね。お名前をお聞きしても?」
「これは失礼しました。私はルーズ・ベンデルです。私の事はルーズ枢機卿とお呼びください。
この度は、フロービス様にお願いがあり、ここまで参りました」
私は私は舌打ちしそうになったのを堪えて、笑顔で答えた。
「ルーズ枢機卿ですね。私はローニャ・フロービス、どうぞ伯爵とでもお呼びください。
それで、私へのお願いとは?」
私はそう言いながらフィーナを先に行かせたのは失敗だったと、自分の行動を後悔した。
その理由は、アリアの件に武闘派の枢機卿が出張ってきたからだ。
そもそも教会には、戦闘ができる武闘派神官と、戦闘が出来ない非武闘派神官の2つの派閥のような物がある。
実際には、強者になりやすい魔眼所持者であっても非武闘派神官である者も居るが、枢機卿となる人間が魔眼所持者である場合は、ほぼ確実に武闘派神官なのだ。
その理由は単純に、枢機卿以上も者は少人数で素早く動かねばならない時が多く、その時に護衛が多いと邪魔であるからである。
もちろん、枢機卿の中に非武闘派神官も居るが、そんな枢機卿は少数である。
更に言えば、枢機卿は王国と帝国の両国にある協会を束ねる13人の内の1人。
教皇を国王とすれば、枢機卿は公爵家の当主に匹敵する権力を持つ事もある。
しかし、教皇並びに枢機卿の計7名は、常に中立都市『エンドシート』に滞在し、残りの枢機卿は王国と帝国の主要な都市に1人づつ居る。
その為、余程の事が無い限り、それこそ魔獣達が大群で都市に遅い掛かって来る等の事が無い限りは、予定している行事が無ければ教会から動かない。
だから、今回も枢機卿が動く前に、アリアを伯爵邸に連れ込む気で居たのだ。
そうすれば、いくら枢機卿とて簡単には手を出せなくなる。
そんな予定が崩れた私が笑顔のままで、枢機卿の返答を待っていると、枢機卿は意外な事を口にした。
「実は、伯爵が保護した闇魔法の魔眼所持者を王国学園に入学させて欲しいのですよ」
「王国学園に、ですか。元から、彼女が望めば、そうする気では居ました。
ですが、教会は彼女を『王国学園』に強制的に入れる事を望んでいる、という事でよろしいですか?」
「ええ」
私が意味が分からない要求に若干眉を下げて質問すると、枢機卿は笑顔で肯定してきた。
その人間は、見た目は顔は老人に見えるものの、しっかりとした体格と皺はあっても若々しく見える背格好をしていた。
なにより左目に魔眼があり、色は紫だが、なんの魔法を使ってくるのか予想が出来なかった。
それに眉を顰めてしまいそうになるのを耐えて、教会の人間に話し掛けた。
「お名前は存じませんが、私のお披露目会に居られた教会の方々の、お一人ですね。お名前をお聞きしても?」
「これは失礼しました。私はルーズ・ベンデルです。私の事はルーズ枢機卿とお呼びください。
この度は、フロービス様にお願いがあり、ここまで参りました」
私は私は舌打ちしそうになったのを堪えて、笑顔で答えた。
「ルーズ枢機卿ですね。私はローニャ・フロービス、どうぞ伯爵とでもお呼びください。
それで、私へのお願いとは?」
私はそう言いながらフィーナを先に行かせたのは失敗だったと、自分の行動を後悔した。
その理由は、アリアの件に武闘派の枢機卿が出張ってきたからだ。
そもそも教会には、戦闘ができる武闘派神官と、戦闘が出来ない非武闘派神官の2つの派閥のような物がある。
実際には、強者になりやすい魔眼所持者であっても非武闘派神官である者も居るが、枢機卿となる人間が魔眼所持者である場合は、ほぼ確実に武闘派神官なのだ。
その理由は単純に、枢機卿以上も者は少人数で素早く動かねばならない時が多く、その時に護衛が多いと邪魔であるからである。
もちろん、枢機卿の中に非武闘派神官も居るが、そんな枢機卿は少数である。
更に言えば、枢機卿は王国と帝国の両国にある協会を束ねる13人の内の1人。
教皇を国王とすれば、枢機卿は公爵家の当主に匹敵する権力を持つ事もある。
しかし、教皇並びに枢機卿の計7名は、常に中立都市『エンドシート』に滞在し、残りの枢機卿は王国と帝国の主要な都市に1人づつ居る。
その為、余程の事が無い限り、それこそ魔獣達が大群で都市に遅い掛かって来る等の事が無い限りは、予定している行事が無ければ教会から動かない。
だから、今回も枢機卿が動く前に、アリアを伯爵邸に連れ込む気で居たのだ。
そうすれば、いくら枢機卿とて簡単には手を出せなくなる。
そんな予定が崩れた私が笑顔のままで、枢機卿の返答を待っていると、枢機卿は意外な事を口にした。
「実は、伯爵が保護した闇魔法の魔眼所持者を王国学園に入学させて欲しいのですよ」
「王国学園に、ですか。元から、彼女が望めば、そうする気では居ました。
ですが、教会は彼女を『王国学園』に強制的に入れる事を望んでいる、という事でよろしいですか?」
「ええ」
私が意味が分からない要求に若干眉を下げて質問すると、枢機卿は笑顔で肯定してきた。
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