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3章後半 『終わり』編

118話

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「見つけた!!」

フィーナはそう叫んだが、私は進行方向を見ても、敵の影はあの黒い何かしか無かった。
というか、黒い何かが床一面を覆っており、足の踏み場なんてない。

「ローニャ様!!黒い何かを凍らせると同時に減速と降下を!!敵は肉眼で見ることが出来る範囲内に居ます!!」

私はフィーナの言葉に驚きつつ、魔法を発動させた。

「中々無茶を言うね!!『氷結庭園』!!」

私は床に向かって効果範囲に全力の魔力を注ぎ込み、視界一面を効果範囲に指定した『氷結庭園』で黒い何かを始末した。
その後、即座に自分に『逆行』を使用し魔力を回復させ、前から考えていた移動方法を試した。

「『蛇水じゃすい』!!」

私が発動させたのは『蛇水流』に似た魔法。
しかし、この魔法は『蛇水流』の様に魔法をいなす魔法ではなく、その魔法をいなすために作っている水の流れを移動に変換する魔法。

『蛇水』は蛇のような見た目をしており、私の行きたい方向に進むみ、私達は蛇の頭部分にいるのである程度の防御性能もある。
問題は、この蛇の移動方法が水を噴射したときの勢いを利用したものなので、移動速度が精々がフィーナの身体強化(3倍)と同じくらいしかないこと、それと意外と魔力を使うこと。

それでも見ることが出来る範囲に敵がいるなら問題はない。
そんな風に考えて、『蛇水』を維持していると、フィーナが私に聞いてきた。

「この魔法の中から攻撃しても大丈夫ですか?」

「もちろん。私が死んだりしなければ問題ないよ」

「それなら氷柱を作ってもらってもいいですか?」

私はフィーナの願い通りに投げ槍くらいの大きさの氷柱を作り出し、フィーナに渡した。
フィーナは私から氷柱を受け取ると、右手で握り、魔法を発動させた。

「『身体強化・右腕』」

そして、魔法を発動させた次の瞬間には間近でよく見ていた私でも見失ってしまうほどの速さで氷柱を投げた。

「あぁぁぁぁ~!!」

魔法発動させ氷柱を投げた次の瞬間、男の叫び声が聞こえてきた。
それを聞き、フィーナが敵に攻撃を当てたのだと理解すると、私は即座に『蛇水』を叫び声がした方に動かした。

少しすると、黒い何かが凍っている以外は何もない場所の筈なのに、そこだけ血溜まりが出来ている場所に着いた。

私はそこに着くと、『蛇水』を解除した。
『蛇水』は水を噴射した勢いで移動している関係上、同じ場所に留まることが出来ないからだ。

私はフィーナと一緒に血溜まりになっている場所を見ながら眉を潜めた。

「逃げられた?でも、それなりの速さで来たから、敵の姿を見ていないのはおかしい。それにここは黒い何以外は居ないから隠れる場所もない筈。

フィーナ、どういう訳か分かる?」
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