33 / 188
1章 王国編
32話
しおりを挟む
私と矢の間に割り込んだフィーナは左手で剣を握っていて、右手はだらんと垂らしていた。
そんなフィーナは、フィーナらしくない構えをしていた。
フィーナの構えは基本的に王道である両手で剣を握り、自身の中心と剣の中心がぴったりと合うような構え。
しかし、今のフィーナの構えは構えと言っていいのか悩んでしまうような、剣を握っている左手で自身の体の前半分を包み込むような構えをしていた。
そして、それを疑問に思った次の瞬間には、フィーナは剣を振るっており、振るった剣の風圧だけで私に迫って来ていた矢は形を失い、床に毒を撒き散らした。
それの光景を呆然と見ていると、フィーナから変な呼吸音が聞こえていた。
「ひゅー、ひゅー、ひゅー」
私がそれに気が付き、フィーナを見ると、フィーナは未だに剣を振り抜いた時の体勢で固まっていたものの、体は小刻みに震えていた。
私はそれを見て、昔聞いたことがある水の回復魔法をフィーナにかけようと思ったものの、それにより氷がフィーナの中に生成されてしまった場合に、何も出来ないのを思い出し、手を出せなくなってしまった。
そんな私を背中に庇いながら、フィーナは左手で強く剣を握り、魔力を一気に高めた。
そして、フィーナとフィーナの剣に魔力を集中させたかと思うと、次の瞬間にはフィーナは私の視界から消え、更にその次の瞬間には執事長の体の腰の辺りが斜めに切られており、その体が地面に落ちた音であるドサリという音が聞こえてきた。
「すごい」
それを見て、単純にすごいと私と呟いた所で、フィーナの体を覆っていた魔力が消え、フィーナが仰向けで床へと倒れ込んだ。
それを理解した途端、私は走り出した。
そして、私はフィーナの元へと辿り着き、水の回復魔法をフィーナへと掛けようとしたところで、フィーナが息をしていないのを体が上下に動いていない事で理解してしまった。
それを理解した私は、ただただ呆然とした。
私が呆然としていると、コローナが誰かを連れながら焦った様子で走って来た。
その連れて来た誰かは、急いでフィーナの側に駆け寄り、フィーナの手を取り、フィーナの手首に手を当てた。
そして、数秒そのまま動きを止めた後、ゆっくりと首を横に振った。
それを受けて、コローナが膝を付いて、大きく口を開けながら涙を流す。
恐らくコローナが大きく口を開けているのは、泣いているからだと分かる。
しかし、肝心のコローナが泣いている声が聞こえて来なかった。
そんなフィーナは、フィーナらしくない構えをしていた。
フィーナの構えは基本的に王道である両手で剣を握り、自身の中心と剣の中心がぴったりと合うような構え。
しかし、今のフィーナの構えは構えと言っていいのか悩んでしまうような、剣を握っている左手で自身の体の前半分を包み込むような構えをしていた。
そして、それを疑問に思った次の瞬間には、フィーナは剣を振るっており、振るった剣の風圧だけで私に迫って来ていた矢は形を失い、床に毒を撒き散らした。
それの光景を呆然と見ていると、フィーナから変な呼吸音が聞こえていた。
「ひゅー、ひゅー、ひゅー」
私がそれに気が付き、フィーナを見ると、フィーナは未だに剣を振り抜いた時の体勢で固まっていたものの、体は小刻みに震えていた。
私はそれを見て、昔聞いたことがある水の回復魔法をフィーナにかけようと思ったものの、それにより氷がフィーナの中に生成されてしまった場合に、何も出来ないのを思い出し、手を出せなくなってしまった。
そんな私を背中に庇いながら、フィーナは左手で強く剣を握り、魔力を一気に高めた。
そして、フィーナとフィーナの剣に魔力を集中させたかと思うと、次の瞬間にはフィーナは私の視界から消え、更にその次の瞬間には執事長の体の腰の辺りが斜めに切られており、その体が地面に落ちた音であるドサリという音が聞こえてきた。
「すごい」
それを見て、単純にすごいと私と呟いた所で、フィーナの体を覆っていた魔力が消え、フィーナが仰向けで床へと倒れ込んだ。
それを理解した途端、私は走り出した。
そして、私はフィーナの元へと辿り着き、水の回復魔法をフィーナへと掛けようとしたところで、フィーナが息をしていないのを体が上下に動いていない事で理解してしまった。
それを理解した私は、ただただ呆然とした。
私が呆然としていると、コローナが誰かを連れながら焦った様子で走って来た。
その連れて来た誰かは、急いでフィーナの側に駆け寄り、フィーナの手を取り、フィーナの手首に手を当てた。
そして、数秒そのまま動きを止めた後、ゆっくりと首を横に振った。
それを受けて、コローナが膝を付いて、大きく口を開けながら涙を流す。
恐らくコローナが大きく口を開けているのは、泣いているからだと分かる。
しかし、肝心のコローナが泣いている声が聞こえて来なかった。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
新婚初夜に浮気ですか、王太子殿下。これは報復しかありませんね。新妻の聖女は、王国を頂戴することにしました。
星ふくろう
ファンタジー
紅の美しい髪とエメラルドの瞳を持つ、太陽神アギトの聖女シェイラ。
彼女は、太陽神を信仰するクルード王国の王太子殿下と結婚式を迎えて幸せの絶頂だった。
新婚旅行に出る前夜に初夜を迎えるのが王国のしきたり。
大勢の前で、新婦は処女であることを証明しなければならない。
まあ、そんな恥ずかしいことも愛する夫の為なら我慢できた。
しかし!!!!
その最愛の男性、リクト王太子殿下はかつてからの二股相手、アルム公爵令嬢エリカと‥‥‥
あろうことか、新婚初夜の数時間前に夫婦の寝室で、ことに及んでいた。
それを親戚の叔父でもある、大司教猊下から聞かされたシェイラは嫉妬の炎を燃やすが、静かに決意する。
この王国を貰おう。
これはそんな波乱を描いた、たくましい聖女様のお話。
小説家になろうでも掲載しております。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる