魔眼持ちの伯爵家当主（旧題:魔眼持ちの伯爵令嬢）

39話

私が笑みを浮かべていると、フィーナが呆然とした様子で呟いた。

「やはり、天才は違いますね」

「なにが違うの？」

「っ！！いえ、なんでもございません」

そう言って私に頭を下げたが、フィーナが何を言いたいのかは理解出来た。
なので、私は苦笑いしながら、フィーナに説明した。

「フィーナ。貴方の時と比べて、私やアリアが早期に魔法を使えるのは、単純に自分自身に直接的な効果が無いからよ。

貴方は自分自身に魔法を掛けるのだから、慎重に訓練して、慣れていかなければならなかった。でも、私やアリアは自分自身に掛ける魔法では無い為に、多少の無茶も出来るわ。

時間の違いは、その違いよ。だから、卑下する必要は無いわ。分かった？」

「はい、すみません」

『情けない』と言った表情をしたフィーナはすぐに頭を下げた。
しかし、その姿は謝罪ではなく、まるで『これから挽回する私を見ててください』と言っているようだった。

そんなフィーナは笑みをこぼしつつ、私はアリアに言った。

「とりあえず、魔法を使う事に関しては問題なさそうね。ひとまず、次の『お披露目会』が終わるまでは、私の屋敷で暮らして、毎日魔法の修行と戦闘訓練を受けてもらうわ。

もしかしたら、訓練自体は『お披露目会』よりも短い期間になるかもしれないけど、その時までに所属する組織が決まっていたなら、屋敷を出るでも、所属する組織に住む場所を提供してもらうでも、好きにしていいわ」

「え、ま、魔法が使えれば、帰って来ていいのでは？」

「ん？ああ、私が勘違いさせるような言い方をしてしまったかな？正確に言えば、朝から夕方前までなら帰ってもいいという事よ。

睡眠時は、どんな魔眼所持者でも無防備になるわ。
それを防ぐために、同じ程度の実力の魔眼所持者達は就寝時も同じ部屋で寝ることにより、無防備な時間を無くしているの。

因みに、私はフィーナと同じ部屋で寝ているけど、これにアリアも加わる形になるわね」

「ひえっ！？私がですか！？」

「ええ、まあ信頼出来る実力者が居るなら話は別だけどね」

「そ、それなら俺がアリアを守ります！！」

私の言葉が終わると同時に叫んだ男をフィーナが切り捨てる前に私が凍り付けにした。
それから怯えた表情のアリアに笑顔で言った。

「私が言った実力者というのは、戦闘面の実力と権力面の実力の両方を兼ね備えている必要があるの。

まさか、私の弱い部類の魔法1つも避けられず、伯爵家当主である私に対して無礼を働く事しか出来ない人間を頼る、なんて無いよね？」

私の笑みに体をビクリと反応させたアリアを見ていると、フィーナが少しだけ咎める様に言った。

「ちょっとだけ怖いですよ、ローニャ様。アリアはまだ何も知らないのですから、笑顔で優しく接しなければ、魔法を使う事を嫌がってしまいますよ」

「ん、それは困るね。だけど、私がしている提案が、アリアに取っては一番安全だと思うけど」

「それでも、最初は不安な物ですから」

「まあ、そうか。それなら私も悪かったかな。ごめんね、アリア」

私は頭を下げることはしなかったが、アリアに謝罪した。