上 下
31 / 65

31話

しおりを挟む
「あ、あの、ここは?」

馬車が目的に着き、馬車から降りたアリアが質問して来たので、私はここを作るのに掛かった金の事を思い出しながら答えた。

「ここは『何でも屋商会』の魔眼所持者専用の商会員寮みたいなものね。

一応、この屋敷を建てるときには、既に居た魔眼所持者の商会員の意見を、大体は採用したから無駄に大きいし、迷いやすいけど、斬新な屋敷だとは思うよ」

「商会員寮!?ってことは、『何でも屋商会』に入れば、この貴族様が住んでる様なお屋敷に住めるんですか!?」

「まあ、条件を満たしていればね」

「じょ、条件、ですか?」

「ええ、『何でも屋商会』の魔眼所持者の商会員には、原則としてとして月に1度以上の依頼への参加を求めているの。

原則として求めている月に1度以上の依頼への参加を、月に2度以上行う事、また商会員寮の賃金をきちんと払う事、商会員寮の雰囲気を壊さない事。

この3つを守れば、この商会員寮に住むことが出来るわ。因みに、非魔眼所持者でも、初日から常に無断欠勤しなければ3ヶ月すれば住めるわ。住んだ後でも無断欠勤したら、追い出すけど」

私はそう言ってから、屋敷の中へと歩きだした。

わざわざ庭まで作ってあるので、せめて眺めるくらいはしようと門から歩いているものの、今考えるとこの寮は広すぎると思う。
そもそも、ここは王都の中でも交通の便が少し悪い場所にあるので、土地代は王都の中では安かった。

なので、少し調子に乗って、終わり討伐の後に『エンドシート学園』のあの女(学園長)に貰った金の5分の2程を使って、フロービス伯爵邸と同等程度の土地面積を買った。

それから建築する建物も、力仕事の面は私達魔眼所持者でやれば、建設費用並びに人件費が浮いて、内容を豪華に出来ると商会員達に吹き込み、それぞれの意見をある程度は飲むという事を条件に協力させ、それはもう豪勢に建ててしまった。

それにより、実際の工事期間は2週間もなく終わり、本来ならば数年単位で建てるような建物があっという間に出来上がった。

そのお陰で建築費用は想定していたよりも安く済んだが、それでもあの女から貰った金の5分の1は消えた。
つまり、私が命を賭けてすら戦った対価として得た金の、5分の3がこの屋敷へと消えたのだ。

まあ、寮といっても、私個人の持ち物という扱いになっているので、前の私の仕返しが済んだら、余生をここで過ごすのも悪くはないかなと思っている。 

そんな寮は下手をしなくとも王都にある侯爵家並の物件になっており、魔眼所持者達や非魔眼所持者の商会員の中からメイドや執事をやりたかったという者を集めて、住み込みで清掃や寮に住んでいる人間の世話をしてもらっている。

因みに、世話をしている人間は基本住み込みで働いてもらっており、きちんと休暇も与え、寮に住むにあっての条件も緩和や減額等の優遇措置を取っている。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺の初恋幼馴染は、漢前な公爵令嬢

恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:276

ゴーレム転生 瓦礫の中から始めるスローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:99

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:117,548pt お気に入り:5,249

ぺとろさん

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

無能スキルの孤児

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:30

処理中です...