魔眼持ちの伯爵家当主（旧題:魔眼持ちの伯爵令嬢）

30話

私達が馬車に乗り込むと、馬車はすぐに動き出した。
それを理解してから、『氷魔支配』で男に掛けていた『氷結』を解除した。

それから、馬車の中でビクビクとしている女の子に話し掛けた。

「とりあえず、貴方の名前は？」

「あ、は、はい。アリアです」

「そう、良い名前ね。よろしく、アリア」

「は、はい！！よろしくお願いします」

私が挨拶をすると、アリアはガチガチに緊張しながら頭を下げた。

アリアは茶髪茶目であったものの、素の素材が良く中々美人に見えた。
そんなアリアは髪は短いが、私とは違い平民の『大人の日』（貴族で言うなら、お披露目会）が終わったばかりなのに、中々スタイルが良い。

私はどちらかといえば、同年代間でも体が小さい方なので、アリアの大きさ（色々）を分けて欲しい。

そんな事を思いながら、アリアを見つめていると、アリアはぷるぷると震えて、泣きそうになっていた。
それを見て、少し気不味くなり咳払いをしてから話し出した。

「こほん、アリア。貴方にはいくつかの選択肢があるわ」

「せ、選択肢ですか？」

「ええ、１つ目は国軍に入る為に学園に入学する事、２つ目は教会に駆け込み神の慈悲を請う事、３つ目は『何でも屋商会』の商会員として働く事、４つ目は私のメイド兼護衛となる事」

「ローニャ様？」

私の最後の『護衛』という言葉に反応して、フィーナが驚いた様な表情をした。
それを見ながらも無視して、アリアに説明するように話した。

「一応、他にもあるかもしれないけど、私が考えつくのはこれくらい。

それに私が上げた物には、どれにもデメリットがあるわ。１つ目と２つ目のデメリットはいつ殺されてるか分からない事、というか2つ目は即座に殺されてもおかしくはないわね。

３つ目と４つ目のデメリットは直接的か間接的かの違いはあるものの、私の配下に入る為に、私に向けられている多くの悪感情をアリアにも向けられる事ね。

ひとまず、アリアがどれを選んでも、選ぶまでは守ってあげるから、ゆっくり選びなさい」

「は、はい！！ありがとうございます！！」

アリアは私の言葉に頭を下げた。
それを見てから、私はフィーナに顔を向けた。

フィーナは『護衛』という言葉に反応して、眉を潜めていた。
それを見て、苦笑いしながらフィーナの疑問に答えた。

「フィーナは、私がフィーナ以外の護衛を必要としている事が不満なんでしょう？」

私の言葉にフィーナは自分の表情に気付いたのか、「ハッ」としてから、すぐに私の言葉を否定した。

「い、いえ、そんな事はありません」

「別に責めている訳じゃないよ。私はフィーナにもゆっくり休む時間を作りたいだけ。

まあ、フィーナ以外なら信頼出来縛り付けられそうな人間しか、私の護衛にしないけどね。その護衛の条件に当てはまるアリアは丁度良かっただけだよ」

私の言葉を聞いて、フィーナは私が何を言いたいのかを理解したらしく、「なるほど」と零した。