上 下
28 / 65

28話

しおりを挟む
フィーナが魔法を全て叩き落したのを見た教会の人間と周りの野次馬は驚いた様な表情をした。
それを見て、タイミングはここだと判断した私は周りの野次馬全員にも聞こえるように大声で言った。

「この趣味の悪い見世物はなに?」

「何だと貴様!!浄化を邪魔しておいて、無礼だぞ!!」

「無礼?こんな昼前から、か弱そうな女の子を大の大人が寄って集って処刑しようとしている奴らに無礼もなにも無いでしょ?」

私の言葉に反論して来た男は、顔を真っ赤にして叫んだ。

「なんだと、貴様!!教会を敵に回すつもりか!!」

「そういう教会こそ、現フロービス伯爵家当主にして黒色の魔眼所持者である私と、その私の護衛にして黒色の魔眼所持者であるフィーナを同時に相手取るつもり?」

「なっ!?」

私の言葉で、私達の正体に気が付いたのか、教会の関係者や周りの野次馬達はざわついた。
そして、教会の関係者や野次馬達は素早く自分の立場と私の立場の差を理解して、地面に膝を付き出した。

因みに、貴族が多い王都では、貴族の当主が正式に自分の名と貴族家の名前を名乗った場合、即座に膝を付くのが暗黙の礼儀となっている。

そんな理由から野次馬は膝は付き、教会の関係者も先程は私に叫んだ男以外は膝を付いた。
教会の中でも、貴族に礼をしなくとも良いのは教皇や枢機卿くらいだが、そのどちらにもあの男は見えなかった。

しかし、男が教皇ではないのは分かるが、枢機卿かどうかは分からかなかったので、枢機卿ならば自分から名乗るかと思い、私が男を見ていると、男はすぐにハッとしてから、即座に膝を付いた。
それを見て、『ああ、馬鹿なだけか』と理解してから、再び質問した。

「それで?この悪趣味とも言える見世物はなに?」

私の質問に、今膝を付いた男が体を小刻みに震わせながら答えた。

「は、はい。闇魔法の魔眼を発現させた者がおりましたので、じょ、浄化をと」

「闇魔法の魔眼、ね。それで何故処刑を?」

「そ、それはや、闇魔法の魔眼はきょ、教義に反しますので」

「教義?

確か『全ての力には貧賤は無く平等であるが故に、博愛を忘れずに振るわなければならない』とかじゃなかった?ねえ、フィーナ」

「はっ、その他にも多数ありますが、この度の件に関連しているもののみを上げるとすれば、その通りだったかと思われます」

私がフィーナに質問すると、フィーナは膝を地面に付いて答えた。
私は急にフィーナに話を降ったが、流石はフィーナと言うべきか、ここに人目が多くあるという事で、ちゃんと立場を意識した立ち振る舞いをしてくれている。

そんなフィーナに少しだけ笑みを浮かべながら、私に受け答えしていた馬鹿男に質問した。

「それで?どの教義に反するの?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

血の魔法使いは仲間を求める

ロシキ
ファンタジー
そこは魔術師と魔術師よりも圧倒的に珍しく魔術師よりも強い魔法使いが居る世界。 そんな世界で前世を覚えている公爵家の青年は、婚約を破棄され人が一人も居ないような魔境に飛ばされる。 その青年は仲間に会いたかった。 それが叶わないならば、大切な仲間を新たに作りたかった。 これは、そんな青年が徐々に仲間を増やしながら、婚約を破棄し辺境に自分わ飛ばした者達に仕返ししたり、昔の大事な仲間と再会したりする物語。 主人公の一人が長いので、序盤の会話は少ないです。 視点は通常の話が主人公で、○.5話等になっている物は主人公以外の視点です。 一部が作り上がるごとに投稿しますので、一部が終了するまでは一日一話更新です。

美少女に転生しました!

メミパ
ファンタジー
神様のミスで異世界に転生することに! お詫びチートや前世の記憶、周囲の力で異世界でも何とか生きていけてます! 旧題 幼女に転生しました

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...