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666は悪魔のナンバー

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『おいおい、トモロー。妖怪のおましかァ?』
 ナポレオンは嘲るように笑った。

 彼はリモートなので、気楽なモノだ。


 どうやらボクを脅かそうとしているみたいだ。



「よせよ。いつの時代だよ。妖怪先生ぬ~べ~じゃないんだぜェ!」
 とにかくボクは悲鳴の聞こえた校舎へ向かって駆け出した。


 もちろんボクだって怖いが、女子が窮地なら助けないワケにはいかないだろう。
 


「キャァァァァーーーー」
 また悲鳴だ。
 校舎のかなり上の階から響いてきた。


 まったくホラー映画じゃあるまいし、ご苦労な事だ。


 ボクは校舎のドアを開けた。
 不用心だ。カギは掛かっていない。


 それともなにかのワナなのだろうか。


 すぐにボクは土足のまま階段を駆け上がった。
 この夏休みで廃校なので遠慮はいらないだろう。


 ボクの記憶では四階は、最上級生の六年生の教室があるはずだ。


 正直に言って、悲鳴の出どころはわからない。

 だが二階ではないはずだ。
 もっと上だろう。


『四階だ。一番手前の教室だ!』
 さすがナポレオンだ。ボクをナビゲートしてくれた。


「よし、四階だなァ」
 ボクは一気に駆け昇ろうとした。
 だが思ったよりも足が動かない。


「はァはァ……」
 どうやら日頃の不摂生が祟ったのか、途中で息が上がった。




『おいおい、日頃よっぽど運動不足なんだなァ』
 ナポレオンが茶化した。


「はァはァ、わかってるよ」
 息が苦しい。足が棒のように動きが悪い。


 だがなんとか階段を昇り切り、一番手前の教室のドアを開けた。



「ううゥ……!」
 覗き込んだ瞬間、ボクはうめき声を上げた。教室内はほとんど空だ。
 


 机は、そっくり校庭へ運んだのだろうか。イスだけが片側に寄せられていた。


 照明はついていた。エアコンも効いている。


 教室の中央部分で美少女が倒れ込んでいた。

 この学校の小学生だろうか。
 可愛らしい女の子だ。



「だ、大丈夫ですか?」
 ボクは彼女に駆け寄って声を掛けた。
「ン?」
 誰だろうか。
 見覚えのある顔をしていた。


「あ、あそこ!」
 美少女は震える指先で窓の外を指差した。



「うわァァァァーーーーッ、なんだ。これは!」
 


 




 








 
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