十秒探偵『ナポレオン＆トモロー』 すべての謎はナポレオンに解かれたがっている！

フリージア

マリア

　けれどもマリアは監禁されていたアジトから脱走した。


　だがそのことで、彼女はさらなる災禍に見舞われることになった。


　必死に逃げ出した先で暴走車に轢かれたのだ。
　


　運転手は、酔っ払い運転していたらしい。
　悲惨な事故だ。

　被害者の彼女は病院へ搬送されたものの亡くなった。



　オレは霊安室で変わり果てたマリアの姿を見てがく然とした。
　


『うわァーッマリアァーーーーッ』
　オレはマリアの手を握りしめ泣き崩れた。


　どうしてだ。
　なんでマリアがこんな目に遭わなければならないんだ。



　あの雨の夜、オレと関わったばかりに。
　こんな変わり果てた姿になってしまった。
　オレのことなど放っておけば、今ごろ彼女は幸せに暮らしていかもしれない。



　間違いなくオレのせいだ。


　オレに関わらなければ、こんな無残な末路を辿ることはなかっただろう。


　オレとアイツ、阿久堂凱《あくどうガイ》の仕業だ。

　
　オレはアイツを許さない。
　アイツだけは決して許す事はできない。


　オレがアイツに報復しなくてはならない。



　


　その日からオレの復讐劇が幕を切った。




　すべてはナポレオンの言った通りだ。



　重要なのは、ただ阿久堂を殺すのではなく証拠不十分で不起訴になることだ。


　阿久堂ガイがのうのうと逃げ通したように。



　そのため『ガラスのクサビ』を使って密室に仕立て上げた。




　これでオレの復讐劇は完了した。



　あとは……。




　

　蝉しぐれが耳を煩わせた。

　真夏の日差しが肌を焦がしていく。