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未来の揚羽の里✨✨✨

✨✨✨

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 美女は睨みつけるように信乃介を見つめた。
 かすかに蝉の声に混ざって滝の流れる音が響いた。

「何をおっしゃるんですか。信乃介先生?」
 不満げに睨んだ。

「そうですか。やはりシラを切りますか」

「シラを切るって……。ふざけないで。私は真姫マキです」

「まァ、俺にとってはどちらでも良い事だ。当初より土蜘蛛衆の頭目将宗は、清基様に……、そして美鬼は姉の真姫様に取って代わるつもりだったんでしょう」

「くうゥ……」
「幸か不幸か、清雅様が『揚羽の里この地』を訪れると近く『婚礼の儀』が執り行なわれる事を知り、この期に乗じてこの迷宮のような邸宅で真姫マキ様をさらって拉致しようと企てた。清丸様の祟りを利用してね。
 ところが貴方たちとは別に平家滅亡を目論む者が他にもいた」

「えェ……?」
「清雅様の兄上……、清貴様だ!!」
「ぬうぅ、清貴様……!!」

「清貴様も自らの手下を使って清斎を拐い拉致し、その後、自らも拉致されたように企てた。貴方たちに取っては全く予期せぬ事態だ。
 だがサイは投げられた。もはや覆水盆にかえらずだろう。当主、清国を殺害し、打刀のツバに揚羽の刻印の入った刀剣を胸に突き刺し、磔にして置き去りにした」

「……」
「こうすれば、間違いなくお律は清雅様が当主を刺し殺したと思うだろう。お律等が清雅様を追いかけ殺してくれれば儲けもの……。そう云ったところでしょう」
「……」

「そして入浴中の真姫マキ様を力鬼に拐わせ拉致して地下牢で見つけさせる。その時には、すでに美鬼が入れ替わっている。
 これが貴方等の筋書きだ。
 どうですか。何か申し開きがありますか」


「……」彼女は黙って信乃介を睨んだ。






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