98 / 119
秘密の洞窟✨✨✨✨
闇御前の正体✨✨✨✨
しおりを挟む
「さすがだ……。信乃介殿」
呻くように云った。おそらく致命傷だろう。
「ど、どうしてワシの小太刀を避けられたんだ」
まるで事前に知っていたように。
「それは……、小太刀を投げるのが事前にわかっていたので」
「ほォ、なぜわかった。ワシが小太刀を投げることを」
清貴は信乃介に尋ねた。
「ハイ、わずかに左手の握りが甘かったので、小太刀を放り投げて来ると事前にわかっていました。ですから咄嗟に避けることができたのです」
「ううゥ……」そうなのか。あの一瞬で、そんなことが。
「フフゥン、ううゥ……、なるほど……、清雅。済まぬ。こちらへ参られェ……」
「ハイ、清貴様……、兄上、なぜですか。どうして貴方様が闇御前の格好を」
俺は双子の兄、清貴のすぐ耳元へ寄った。
「おごる平家はひさしからず……」
「ええェ……?」
「誓ってくれ……。清雅」
「ううゥ、誓ってとは何をでしょうか……?」
「平家を……、父上の野望を、お主の代で滅ぼしてほしい」
「ええェ……? 俺が平家の野望を滅ぼす」
「ぐうッ、そうだ……。紅い花の秘密は知っておろう」
「ハイ、ケシの花ですね」
「そうだ。あのケシの花の実を精製するとアヘンと云う怖ろしい麻薬になるのだ。人を惑わし、破滅させる恐ろしい花だ」
「ううゥ……」
「平家は、あの紅い花で天下を奪う気だ。そんな事をすれば、たとえ天下を取れたとしても人民が苦しみ破滅する……。
絶対にあってはならない事だ。清雅……。
お前が断ち切るのだ」
「あ、兄上……」
「ワシの出来なかったことを……、頼んだぞ」
「兄上! ダメです。俺ひとりでは」
「お前には仲間がいるではないか。信乃介先生……、それに源内先生、そしてお蝶も……」
「清貴様、お気を確かに!!」お蝶も声を掛けた。
「フフ……、信乃介先生。ワシは侍として死ねる。ありがとう……」
「清貴様!」
「お蘭さん済まなかったな……」
「いえ、清貴様が闇御前だったなんてェ……」
お蘭も辛そうに顔を顰めた。
「ぐうッ、頼んだぞ。清雅……」
そう云うと兄上は力尽きた。
「清貴様ァーッ!!」
洞窟内に悲痛な叫び声が響いた。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
呻くように云った。おそらく致命傷だろう。
「ど、どうしてワシの小太刀を避けられたんだ」
まるで事前に知っていたように。
「それは……、小太刀を投げるのが事前にわかっていたので」
「ほォ、なぜわかった。ワシが小太刀を投げることを」
清貴は信乃介に尋ねた。
「ハイ、わずかに左手の握りが甘かったので、小太刀を放り投げて来ると事前にわかっていました。ですから咄嗟に避けることができたのです」
「ううゥ……」そうなのか。あの一瞬で、そんなことが。
「フフゥン、ううゥ……、なるほど……、清雅。済まぬ。こちらへ参られェ……」
「ハイ、清貴様……、兄上、なぜですか。どうして貴方様が闇御前の格好を」
俺は双子の兄、清貴のすぐ耳元へ寄った。
「おごる平家はひさしからず……」
「ええェ……?」
「誓ってくれ……。清雅」
「ううゥ、誓ってとは何をでしょうか……?」
「平家を……、父上の野望を、お主の代で滅ぼしてほしい」
「ええェ……? 俺が平家の野望を滅ぼす」
「ぐうッ、そうだ……。紅い花の秘密は知っておろう」
「ハイ、ケシの花ですね」
「そうだ。あのケシの花の実を精製するとアヘンと云う怖ろしい麻薬になるのだ。人を惑わし、破滅させる恐ろしい花だ」
「ううゥ……」
「平家は、あの紅い花で天下を奪う気だ。そんな事をすれば、たとえ天下を取れたとしても人民が苦しみ破滅する……。
絶対にあってはならない事だ。清雅……。
お前が断ち切るのだ」
「あ、兄上……」
「ワシの出来なかったことを……、頼んだぞ」
「兄上! ダメです。俺ひとりでは」
「お前には仲間がいるではないか。信乃介先生……、それに源内先生、そしてお蝶も……」
「清貴様、お気を確かに!!」お蝶も声を掛けた。
「フフ……、信乃介先生。ワシは侍として死ねる。ありがとう……」
「清貴様!」
「お蘭さん済まなかったな……」
「いえ、清貴様が闇御前だったなんてェ……」
お蘭も辛そうに顔を顰めた。
「ぐうッ、頼んだぞ。清雅……」
そう云うと兄上は力尽きた。
「清貴様ァーッ!!」
洞窟内に悲痛な叫び声が響いた。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第13章を夏ごろからスタート予定です】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章は16世紀後半のフランスが舞台になっています。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

猿の内政官の息子 ~小田原征伐~
橋本洋一
歴史・時代
※猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~という作品の外伝です。猿の内政官の息子の続編です。全十話です。
猿の内政官の息子、雨竜秀晴はある日、豊臣家から出兵命令を受けた。出陣先は関東。惣無事令を破った北条家討伐のための戦である。秀晴はこの戦で父である雲之介を超えられると信じていた。その戦の中でいろいろな『親子』の関係を知る。これは『親子の絆』の物語であり、『固執からの解放』の物語である。
佐々木小次郎と名乗った男は四度死んだふりをした
迷熊井 泥(Make my day)
歴史・時代
巌流島で武蔵と戦ったあの佐々木小次郎は剣聖伊藤一刀斎に剣を学び、徳川家のため幕府を脅かす海賊を粛清し、たった一人で島津と戦い、豊臣秀頼の捜索に人生を捧げた公儀隠密だった。孤独に生きた宮本武蔵を理解し最も慕ったのもじつはこの佐々木小次郎を名乗った男だった。任務のために巌流島での決闘を演じ通算四度も死んだふりをした実在した超人剣士の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる