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カラクリ屋敷✨✨✨

ヒデ✨✨✨

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 どれほど迷宮を彷徨ったのだろう。
 山師のヒデも同じような所をグルグルと回っているような気がした。いつの間にか、ひとりになっていた。

「おおォーい!  お蘭!  お腹が減っただろう。出てきてオイラと信さんで握り飯でも食おうぜ」
 しかし何度ヒデが叫んでも返事がない。

 だが不意に琵琶の音が聴こえた。
「これは……」

『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり……』
「ううゥ……、平家物語か。どこからだ。どこから聞こえるんだ」
 辺りを見回すが薄暗くて何も見えない。廊下の向こう側には闇が広がっていた。

「うッ、ううゥ……、お蘭!!」
 ぼんやりと廊下の奥に灯りが視界に映った。どうやら少女がしゃがんでいる姿が見える。
 顔は振り袖で隠しているので解らない。
 だが、背格好から少女に違いない。

「お蘭ー!  お前はお蘭なんだろう」
 とっさにヒデは駆け寄っていく。

「くうゥ……、お蘭!!」ヒデは手を差し伸べ少女の肩を掴んだ。
 その瞬間、かすかに少女の顔が見えた。
 怖ろしい夜叉羅刹の面をかぶっている。

「だッ誰だ。貴女おまえは?」ヒデは恐そる怖そる手を伸ばし、少女の面を剥ぎった。

「わァ……、まさか」彼女の顔を見た途端、驚いたヒデは後退《あとずさ》ると足元がストンと抜け落ちた。

「うッ、わァァァァーー」
 そのままヒデの身体は、奈落の底へ落ちていった。
 徐々に悲鳴が遠のいて小さくなっていく。
 ヒデは漆黒の闇の中へ飲み込まれ消えていった。

 ゆっくりと廊下は元通りになった。

「フッフフ……、おごる平家はひさしからず」
 また夜叉羅刹の面をかぶった謎の少女は笑みを浮かべた。笑みを浮かべている口元だけが覗いて見えた。

『……盛者必衰のことわりをなす。おごれる者はひさしからず……』
 相変わらず、邸内では平家物語が謳われていた。








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